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第61回MMS(2013/07/26対談)「お金の専門家が語る、クラウドファンディングにおける税務とは。」 公認会計士山内真理事務所 山内真理

本記事は2013年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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三木:まず、自己紹介をお願いします。

山内さん:私は、会計士・税理士をやっています。もともとは大手の監査法人で主に株式を公開している会社に対する監査サービスを行う部署にいたんですけれども、数年前に独立をして、文京区小石川で会計事務所をやらせていただいています。アートやクリエイティブ、IT、カルチャーといった領域のお客様が多いというのが、ひとつの特徴です。

三木:独立されたのは、何かきっかけがあったのですか?

山内さん:今、文化活動を促進する、文化を下支えするという意識で会計事務所をやっていますが、学生の頃から今の仕事に繋がる思いがありました。クリエイティブと、お金の感覚を持ってコミュニケーションをとっていくということです。難しい領域ではあるのですが。

三木:右脳と左脳のようですね。

山内さん:アイデアを持っていても、それを形にし、ドライブするにはお金の感覚、マネジメントが重要になってきます。学生時代にも周辺でそれが出来ずらい状況を幾つか垣間見ました。そして、「世の中、こういう事例に溢れているのではないか」という仮説を持ちました。また、当時経済学を学びながらも、知識経営や無形の財産の価値といったテーマにも興味を持っていました。価値の測定がしずらいけれども、直観的に価値を無視できないものに対する興味、というのは現在にも続いていると思います。

世の中の価値観が多様化し文化的に豊かになり、アーティストやクリエイターに限らず、創造的なことをする環境や、それを受ける社会も本当に豊かになったと感じています。それを支える仕事ができたら面白いのではないかという思いがありましたが、2010年頃の、Arts and Law(アーツ・アンド・ロー)という非営利団体との出会いも転機となって、現在の活動に発展してきたところがあります。

三木:先日のゲスト、弁護士の水野さんもメンバーですね。

山内さん:そうですね。メンバーの中心は弁護士で、専門性を発揮する領域こそ違いますが、根本で共通する問題意識を持つメンバーも多いのではないかと思います。

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三木:Arts and Lawは、どういうサービスを展開されているのですか?

山内さん:基本的なサービスは、アーティストやクリエイター、創作や表現をする方々への無料の法律相談といったサービスです。例えば著作権のことや契約のことなどを相談したいと思っても、専門家とアクセスする手段を持っていないケースも多く、そうした課題と向き合い、創造的な活動を支え、世の中を面白くする、という醍醐味をメンバーが共有していると思います。

三木:Arts and Lawに届く会計・税務系の質問メールには、山内さんが回答されているんですか?

山内さん:会計・税務の領域は一度のご相談で、最適な意思決定を行い、効果的なマネジメントを行うということが、必ずしも簡単ではない領域なので、スポットで相談窓口でご相談を受けるということは、現在はやっていないです。ただ、そのかわり、セミナーや勉強会など、文化芸術団体やクリエイターがお金や税務に対する感覚を持てるような場を意識的に作って、情報発信をするなどしています。

三木:前からアーティストの展示会やイベントに行かれていたのですか?

山内さん:美術館に行ったり展示を見るのは大好きでした。

三木:我々も税務のことなどを山内さんに相談させていただいているんですけれど、アーティストのネットワークが多いですよね。

山内さん:自分で表現・創作している人達が周りにいた影響もあると思います。

三木:クラウドファンディングについてもご存知でしたね。ですから、山内さんに最初にお会いした時、クラウドファンディングの説明から始める必要がありませんでした。そういう税理士さんを探していたのです。相談も気軽に、ほぼフェイスブックでやり取りさせていただいています。

宇都宮:そういう税理士さんって、少ないですよね。

山内さん:日本でクラウドファンディングが盛り上がってきたのが東日本大震災直後で、私が独立したのもちょうど同じ時期でした。興味があり、周辺からも多くご相談が寄せられた時期でもあります。その辺の動きを直接肌で感じる立場にありました。

三木:山内さんは、どういった方の依頼だったら受けてくださるのですか?

山内さん:やはり、パートナーシップのような関係性でないと、互いに良い関係でお仕事ができないと思います。文化と経済的なもの、これらのバランスはカルチャーを創っている経営者の方にとって、常につきまとっている課題です。実践しているからこそ妥協できず、お金のことと向き合わなくてはいけない。けれど、経済性の追求だけでは失われてしまう何か、と向き合い、本質的に育む姿勢とセンスが常に問われている。そのジレンマを共有しながら、専門性に立脚して、よりよいマネジメントのあり方を探っていくようなパートナーシップ関係が私の理想ではあります。

三木:クラウドファンディングは最近ようやく、中小企業も使うなど一般化してきました。とは言え、クラウドファンディングに関する税務的なことなど、わからないこともあるかと思いますのでお話を伺いたいです。

山内さん:国内のクラウドファンディングのプラットフォームは、主に寄付型と購入型に分かれるかと思いますが、プロジェクトを起案し、それをクラウドファンディングで告知してお金をもらうプロジェクトオーナー側には、特に税務上気を付けておくべき留意点があります。

例えば、寄付型に関しては、「個人から個人」、「法人から個人」、「個人から法人」、「法人から法人」といったそれぞれのパターンごとに税金の取扱いを正確に押さえる必要があります。例えば、受け手が法人の場合、寄付収入は益金として法人税などの課税対象になります。また、「法人から個人」への寄付の場合、所得税のことを気にする必要があり、「個人から個人」に寄付をする場合には、贈与税の問題が付きまとう、といった具合です。

一方、購入型について。見返りを求めないのが寄付型だとしたら、購入型は何らかの見返りを求めます。「購入」なので何かしらリターンをいただくのですが、「金額は大きいけれども、リターンがお礼状一枚」というような曖昧なケースもあります。単に購入型クラウドファンディングサイトに掲載中のプロジェクトだからといって、経済的な実質が必ずしも購入と言えるかは疑問です。都度都度、リターンなどの性質を考えながら、実態を整理する姿勢が重要かもしれません。先ほどの例だと、寄付的な性質が強いのではないかと思います。

三木:モノが戻る場合は、「売買」と。

山内さん:購入型に関しては、受け手としては予約販売をしていることになりますので、サクセス(資金調達に成功)したとしても、サービスや商品を提供するまでは成果をお引渡しする義務は完了していません。いつ売上が立つかというと、前受金をいただいた時ではなく、引き渡して販売が完了した時というのが会計のルールです。引き渡しまでに時間がかかり、期をまたいでしまう問題もありますから、そこは気をつけなければいけません。

三木:個人の場合で、数千万のお金が集まってしまったら、どうすればよいのでしょう。

山内さん:確定申告していただきます。事業としての収入なのであれば事業の所得、それ以外であれば、性質に従った所得に分類して申告します。

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宇都宮:セミナーを企画して、詳しくお伺いしたいです。

山内さん:クラウドファンディングと一口に言っても、プラットフォームの特徴や、プロジェクトの設計は実にさまざまです。また、今度もさらに多様化するのではないかと予想しています。税法上もこれについて今のところ具体的な規定を置いていませんので、個々に実態の整理をして、既存の法律を解釈しながら判断するしかないところかと思います。

三木:山内さんは、日本のモノづくり、クリエイティブの世界が、今後どうなっていってほしいと思われますか?

山内さん:「モノをつくる人」と「使う人」の対話の中で、文化を創っていくということが本質なのではないかと思っています。一方で、もともと日本のモノづくりが持っていた「こだわり」みたいなものも、失われてほしくないという気持ちがあります。そういうものを残しつつ、国内だけでなく海外に向けても良いモノを発信していけたらいいなと思います。

モノづくりの場合、一緒に良いモノを作るという観点からするとzenmonoのような、作ることに対するコミットメントというのが、やはり重要です。zenmonoは、製品をつくる人のストーリーや、その製品を使って生活にどう取り込むのかというイメージが、一つのコンテンツとして表現されていますよね。「製品を作っているんだけれど、文化を生み出している(育んでいこうと思っている)人でもある」と思いながら見ています。その製品があることによって、生活がリデザインされていく。そこの使い方というか生活への取り込み方というのは、文化だと思います。

会計の専門家としては、たとえば、税務的なマネジメント、資金繰り、管理会計等、お金にまつわる諸問題は段階が上がるほど複雑化していくので、そういうところもサポートしつつ、バランス感覚、デザイン力が必要になる部分もお話を伺いながら、一緒に考えていけたらいいなと思います。

三木:ぜひ、よろしくお願いします。ありがとうございました。

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対談動画

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