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第123回MMS(2016/03/05対談)「手でボールを投げられない車いすユーザーがボウリングを楽しむための機器〈INUCOLO〉の開発・製品化」 INU Project 井手麻衣子さん、松田薫さん

本記事は2016年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

●車椅子屋さんと理学療法士さんから生まれたプロジェクト

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enmono(三木) 2016年3月5日、第123回マイクロモノづくりストリーミング、本日も始まりました。本日はINU Projectのお二人、井手さんと松田さんをお招きして、車椅子でボウリングを楽しめる製品開発のお話を伺いたいと思います。本日はわざわざお越しいただきましてありがとうございます。

松田・井手 よろしくお願いします。

enmono まずは松田さんと井手さんでそれぞれどういったお仕事をしているのか、簡単な自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

松田 INU Projectの代表をしております、松田です。普段は車椅子を作ったり、障害者用の座位保持装置というものを作る仕事をしています。毎日障害児の方に接して椅子を作ることを仕事にしています。株式会社アシストというところに勤めておりまして、その傍らINU Projectを進めております。

enmono はい、では井手さん。

井手 私の方は普段理学療法士という仕事をしておりまして、一般的にリハビリと言うとわかりやすいかと。特に小児期を専門とした理学療法士として働いております。はる訪問看護ステーションという訪問の仕事と横浜療育医療センターという施設で理学療法士をしております。

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enmono 我々とINU Projectの出会いは、最初ネットでコンタクトをいただいたと思うんですけど、これはどういう経緯で?

井手 私たちがクラウドファンディングでこのイヌコロ〈INUCOLO〉を商品化したいと考えていた時に松田が見つけてきたんです。

enmono クラウドファンディングはたくさんあると思うんですけど、なぜzenmonoだったのか、お聞かせいただけますか?

松田 モノづくりに特化しているというところで選んだんです。割と最初からコンセプトはできていて、これをどうやって最終的にモノにしていこうかなという時に、zenmonoさんがすごくそういうネットワークを持っておられるので、それで声をかけさせていただきました。

enmono ありがとうございます。ご本業が製造業ですが、それでも外でやるというのは、なにか理由があったのでしょうか?

松田 ウチの会社で溶接をしたり金属を加工したりという技術自体は持ってはいなくて、いつもどこか社外の大きなメーカーに発注しているんです。(車椅子にオプションとしてつけるという意味では)割と近いのでそのまんま「じゃあ車椅子屋さんに」と頼んでもよかったんですけど、車椅子屋さんだと車椅子を作る技術は高いんですけども、もっと違う技術が僕らの作ろうとしているモノには求められるんじゃないかなと思って。

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enmono このINU Projectができたきっかけは、どういうところから?

松田 もともとウチの会社で座位保持とか椅子を作る研修制度がありまして、(外部から)人を受け入れて、一定期間、人を育てるようなことをやっていて、そこに井手が来たんです。

松田 私が講師という形だったんですけど、椅子づくりを学ぶ中で、それとはまったく別でもっと障害児の方と接してなにか違う取り組みができないかなという風に勉強会みたいなことを始めたのがきっかけだったんです。

enmono 普通に考えれば「日常で使うようなもの」のアイデアが議論の中で出てくるのかなと思うんですが、なぜボウリングという遊びの部分に目をつけて、これでなにかやろうということになったんでしょうか?

松田 もともと原案を考えた篠原先生という方が与謝の海特別支援学校におられて、こういう(イヌコロのような)置いて転がすというのとはまたちょっと違うんですけど、ボウリングをするための機材を作っておられました。その取り組み自体は実は前から知っていて、すごく面白いし、これできたらいいよねと僕らもボウリングに目をつけたというのは一つありました。
松田 もう一つ、ボウリングってボウリング場がちゃんとあって誰でも遊びに行ける環境が割と整っているので、どこか体育館を借りなければならない車椅子サッカーといったものに比べると、ちゃんと普及すれば誰でも楽しめるものになるなと思いました。あんまり特別なものとかイベントの中でやるようなものを広めても仕方ないと思っていて、その点ボウリングはダイナミックに遊べる割にはしっかりと設備環境が整っている。

enmono ボウリング場ってもう日本中にあるから遊びやすいってところがありますね。

松田 元からあるものをうまく利用して遊びに繋げられるかなと。今は障害を持っておられる方って全然ボウリング場で遊んでいないと思います。でも能力がないわけではないので、環境が整えば皆さん普通に遊べる方ばかりなので先に環境を整えてしまいたいなという、そんな想いからでした。

●ご縁のモノづくり――様々な出会いを経て今の形に

enmono 今日はせっかく現物を持ってきていただいているので、ちょっとデモンストレーションをしていただいてもよろしいですか?

松田 はい。ぜひご覧いただきたいと思います。

enmono 車椅子にジョイントで接続するという形ですね(車椅子の前部パイプ部分にフリースケールのジョイントで接続)。

松田 簡単に脱着できるようになっています。足台とかキャスターも全部ついておりますので。

井手 結構最近のボウリング場って小さい子どもが使う用に据え置き型の投球補助台が置かれていますが、こういう風に(車椅子と)一体化するという形は例にないかなと思います。

(井手さんがイヌコロを装着した車椅子に座り、前進動作をすることで球が発射される→命中)

井手 という感じで。

enmono おお~(拍手)。結構爽快感がありますね。

松田 そうですね。やっぱり(通常のボウリングとまったく同じ)音がするので。転がして倒して遊ぶっていう、ボウリング自体すごくわかりやすい遊びだと思います。

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enmono ありがとうございます。これを作られる中で、この辺が苦労したというのはなにかありますか?

松田 これはまだ試作機なので、ここからどうするかというのはまだ決めあぐねているところではあるんですけど。

enmono 最初は樹脂で考えられてましたよね。

松田 そうです。車椅子と一言で言っても、幅も違えば、パイプの形状も全然違うので、ある程度どんなものが来てもポンと着けられないと普及は難しいだろうなと考えています。これはもう最初からあるものを流用しているんですけど――。

enmono 既存の製品なんですか?

松田 ええ、子ども用のバギーボードといって、ベビーカーの後ろに接続して、お兄ちゃん等が乗って、お母さんが押すといった風に使うものです。下にコロ(車輪)がついています。この機構がすごくよくできていて、幅が変えられるし、角度も変えられるし、本当は長さも変えられるんですけど、こんな風によくできているので、これは利用できるなと試作機につけてもらいました。
松田 やっていく中で出てきた課題としては、高さを変えないと車椅子や身体と離れすぎてしまうということ。僕らが接している方はすごく重度の方が多いので、重度の方だと車椅子をこうやって漕ぐというのもなかなか難しい。そうするとちょっとした力で、少し触ったくらいで(ボウリングの球が)転がるみたいな形にしたくなりますので、ものすごく身体に近づけなければいけなくなるんです。それで高さを調整できるようにしたりとか、その辺が始めてからわかって試行錯誤しているところです。

enmono 樹脂からパイプに変えたきっかけはなにかあるんでしょうか?

松田 樹脂でたくさん作るよりも、もしかしたら金額が抑えられるかもというのと、コンセプトモデルとして試作するには金属の方がやりやすかったというのもあります。あとは私が本業でこういうパイプに慣れているので、こういう構造は考えるのが得意なんですけど

enmono このプロトタイプはどちらで作っていただいたんですか?

松田 江戸川区にある西川精機製作所さんで作ってもらいました。

enmono そちらの会社さんは元からお知り合いだったんですか?

enmono(宇都宮) メタルDIYの杉田さんに紹介されて。

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井手 ちょうど三木さんたちに杉田さんという方がいるよと教えていただいて、「こういうものを考えてるんですけど」とコンタクトを取ったんです。そしたら杉田さんが展示会で「こういうボウリングの補助器を独自に作っている会社がもうあるよ」という風に、西川さんのことを教えていただいてコンタクトを取りました。

松田 どんなものを作っておられるのか一度拝見しに行ったら、ものすごいものを作っておられたんですけど、重たすぎてボウリング場に置くのがちょっと怖いというものだったんです。でもカーブが投げられるようになっていたりとか。僕らは反動でコロンと転がすという発想なんですけど、(西川さんのものは)そうではなくて拳銃みたいなものでトリガーを引くとバーンと球が出ていくんです。さすが町工場ならではの、すごくメカニカルなものでした。自分個人としてはあっちの方がほしいくらいで(笑)。

松田 僕らの「(ピンを)狙って、自分の力でちょっと反動をつけて投げる」っていう、その一連のアイデアの面白さを買っていただいて、一緒にやろうかということになりました。

enmono 素晴らしい。杉田さんから繋がったんですね。

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●クラウドファンディングを選んだのは……

enmono こういうのを作る場合、補助金等を活用してという手段があると思うんですけど、なぜそこでクラウドファンディングという発想になったんですか?

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松田 補助金は個人で申請するのは難しいというのが一個あるかもしれないです。クラウドファンディングの方が一個人でも、やっている内容次第で資金を提供してくださる方がいるというのはあるんですけど、これ始めてからよく言われます。「助成金とか補助金とか、なんで使わなかったんですか?」と言われて、はたと気づいて仰るとおりですと気づくようなずぶの素人なんですけども、言われたら確かにそうだなと思います。

enmono 逆に僕らの意見としては、そういう補助金等に頼らない方がいいんじゃないかなという。中小企業がいっぱいあって大変なのは知っているんですけど、申請には書類をいっぱい書かないといけないし。

松田 私も本業の方では確かに助成金を取ったりするんですけど、僕らの根底の中にクラウドファンディングというものが、障害を持った人がなにか欲しいといった時に利用できるすごくいいもののはずだというのがあるんです。

enmono そうだと思います。

松田 マイノリティの方々でも同じようなものを欲しいという方はたくさんいるはずだから、「みんなどうですか? 欲しくないですか?」と賛同者を集めるのにクラウドファンディングというのはとても適していると勝手ながら思っていまして、なので僕らはこうやってイヌコロをやっているんですけど、その活動を見てもらって「あ、これ私たちが欲しいものを作る時にも、もしかしたら活かせるよね」という風に障害を持った方々にちょっと知ってほしいなと思っています。それもあってこの分野でのクラウドファンディングの先駆けというんじゃないですけども、私たちがやって見てもらうという立場に立ってみようかなと思ってはいました。

enmono 海外にもニーズがあると思います。クラウドファンディングのサイトの中でボランティア募集できるので、そうしてみたらいかがですか?

松田 ああ、はい、そうですね! ぜひ。

enmono ということで期間中もし英語の翻訳を手伝ってくれる人がいれば是非。海外からの支援が集まる可能性もあります。

松田 アメリカにもヨーロッパにもボウリング場はあると思いますし、その国にも障害を持った方はおられて、どこかで望んでおられる方はきっといるはずなので。英語で伝えることができれば、そんな道も開けるかもしれません。

●本業のお話

enmono 私たちは医療現場をまったく知らないので、例えば松田さんが車椅子を作る時にどういう風に子どもたちと接して、どういう作業をしているのかといったことを伺えればと思います。

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松田 座位保持装置というのを作っているんですけども、多分耳慣れないものだと思うんです。
自分の力・筋力をうまくコントロールして座れないお子さんというのは実はたくさんいて、そういう方のために1台ずつ椅子を作る仕事をしております。

enmono 椅子のクッションの部分……。

松田 クッションの部分と、あと移動のために必要なのでフレーム部分も一緒に作っております。僕らのアシストという会社はどちらかというと、従来ある「がんばって筋力を使って座る」という姿勢から、もうちょっと楽に座って、目的を達成するための姿勢を作りましょうっていうようなコンセプトで作っているのが、ちょっと業界の中では珍しい方なんですけども、割と今は一般的になりつつある考え方でもあります。そういった気持ちで毎日椅子を作っていて

enmono 実際に子どもたちが車椅子で来て身体を計測するんですか?

松田 はい、そうです。その子にとって、例えば「ごはんを食べたい」という姿勢をどうやったらうまくできるかなというのを一緒に考えて、実際に採型機という型を取る機会があるので、その上に乗ってもらって実際に形を作りながら、その上で動いてもらったり、遊んでもらったりして姿勢を決めていくようなことをやっています。

enmono シーンによって必要な形状が変わるじゃないですか。それはどういう風に考えて統合していくんですかね。

松田 色んな姿勢を取られるので本当は色んな形のものを作れると一番いいんですけど

enmono その瞬間にヒュッと形が変わるみたいな。

松田 どなたか今のイメージを聞いて「あ、できるよ」っていう方もいるかもしれないんですが、今のところできていなくて、一つの姿勢に決めなきゃいけないんです。僕らが考えているのは、痛みもなくてストレスもなくて、ある程度変形など拘縮(こうしゅく)などを引き起こさないような姿勢っていうのをベースにして考えます。
松田 ただ、さっきも言っていたように「なにかをやりたい」というものを実現できなければ意味がないので、そっちができる姿勢と身体にとっていい姿勢を両立させるところがまずは基本ですね。生活の中でどうかなっていうのを最終的に評価してもらって必要があれば修正していくというような、時間のかかる本当のフルオーダーの一品物を作っています。

enmono ありがとうございます。では井手さんの方のお仕事を。

井手 はい。理学療法士という仕事なんですけど、理学療法という分野の中でも私の携わっている小児の分野っていうのはマイノリティで、多分理学療法士の中で0.何パーセントくらいの世界で特殊なんですけども、出産時とか小児期に発症した疾患を持っている方が対象なので、年齢的には0歳から成人の方までが対象です。

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井手 理学療法というのは基本的に、その方が障害を持ちながらも日常生活を送っていけるようにサポートするのが役割です。その中で歩行練習であったり、立ったり座ったり、日常に必要な動作であったり。

enmono いわゆるリハビリみたいな、一緒に横についてやるみたいな……。

井手 そうです。その時に必要な、例えば歩くにしても足の装具をはめた方が歩きやすいとか、その人にあった歩行器があった方が歩きやすい、この場面ではこれが使いやすいと環境を整えることも一緒に看ながら仕事をしています。なので、環境の一つである椅子というところで、松田さんのような会社の方と一緒に仕事をすることがよくあるんです。

enmono 実際に車椅子を作る時に同行されることもあるんですか?

井手 だいたい施設とかで作るので、そこに松田さんたちが営業に来るという形です。

enmono なるほど、それで二人のお仕事の関係がよくわかりました。

●子どもは遊ぶことで成長する

enmono 日々そういった現場の中で感じていた「子どもたちがもっと楽しいことをしたい」という点について、二人の共通認識があったわけですよね。

井手 ボウリングという手段、遊びという手段を今回選んだんですけど、元々二人で勉強会とかで話し合っている中に世間一般で障害というものが「がんばらなきゃいけないもの」「克服すべきもの」というイメージが根強いんです。私も理学療法士としてお母さん方やご家族と関わる時にやっぱりそれがすごく大きくて、本当に子どもにとって大切なことと、親の想いだったり世間のことだったりにズレがあるなと感じています。

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井手 さっきの車椅子の姿勢もそうなんですけど、がんばって姿勢を保つというのが従来の考え方だったんですけど、そうじゃなくてその子がその子らしく能力を発揮できることを松田さんの会社の方針なんですけど、そういうことをやっぱりサポートしていきたいと思います

enmono ご両親の想いと子どもたちの想いは当然違ってくると思うんですが、どのように乖離してくるんですか。

松田 やっぱり治さなきゃいけないものっていうのはお母さん方の中にはあると思うんです。一言で言ってしまうとその障害を受け入れて生きていけばいいじゃないかというと綺麗事になってしまうんですけど、どうしても「治そう」「がんばって克服しよう」という風になりがちなんですね。

enmono 親の方が。

松田 そうですね。まわりの方々が。親御さんの気持ちも本当にわかりますのでなんら否定はできないんですけども、その訓練にばかり時間を割いているようにも、僕ら業者の側からはちょっと見えるんですね。普通のお子さんたちっていうのはもっと普通に遊んで、遊ぶ中で成長されていくんじゃないかなと思うので。

enmono そういうところから身体がよくなっていくということもあるんですかね。

井手 それはあると思います。障害を持ちながらも、その子らしく生きるということをサポートしたいというのは理学療法士としてもそうですし、INU Projectとしても車椅子でボウリングができる。別に立って歩いて投げなくても、車椅子でいいじゃんていう、そのままで楽しめるよっていうような提案をしたかったんです。

松田 私たちのアドバイザーになっていただいている高塩先生という方がいらっしゃるんですけども――僕らの尊敬してやまない先生なんですけども――やっぱりベースに持っているのが子どもたちの遊びに対する力の発揮の仕方ってすごいよねっていうのがあって、だからやっぱりもっと遊んでほしい。普通の子と同じように遊ぶ時間を持ってほしいというのがこれからの流れになっていくのではないかなと。そっちが自然かなとは思います。

enmono 遊びながら発達するというのが自然ですね。

松田 決して訓練を否定するわけではないんですけども、訓練だけっていうのは視野が狭くなってしまったり、その子の本当の可能性をもしかしたら見つけられないかもしれないので。

enmono 人間って好きなことをしている時、ワクワクしている時の状態が一番自然でリラックスしているし、集中もできますしね。その間は本当にストレスも感じない状況があると思うので、実はそれって子どもたちだけではなくて、大人もそうなんですよ。今多くの会社の中で働いているサラリーマンたちが嫌々仕事をしている時は非常にストレスを感じるわけですね。本当に心がやりたいことをやっている時はストレスなく楽しく仕事をしているわけで、僕らはそのワクワクすることを仕事にしていいんだよということを一般の製造業とかそれ以外の会社・大企業の中でも広めようとしているんです。

enmono 自分のやりたいことを仕事にしていいよと言われると、くたびれたおじさんが一気に変わるんです。それは多分子どもたちも同じで、ワクワク感は非常に重要だと思います。

松田 そうですね。我々は大丈夫か? ワクワクしてるか? と言われると結構渋い顔で仕事しているかもしれないので(笑)。

井手 理学療法士の仕事のジレンマというのもあったり(笑)。

松田 みんながそうやって働けると理想というか、それが本当は自然なのかもしれないので、そうなったらいいなと思います。

enmono(宇都宮) こっち(INU Project)をやる時は楽しんで。

一同 (笑)。

松田 こっちはあんまり「こうしなければならない」というのもないですし、こんな言い方をすると変なんですけどボウリングっていうのは遊びなので、「これがないと障害のある方が暮らしていけない」というものを作っているわけではないんです。やっぱり遊んでほしいなというのがベースにあって、そうすると僕らを見た時に僕らが嫌々やってたら「あんまり面白くなさそうだな」ってなっちゃうので、結局やってるあいつらが一番おもしろそうだなと思っていただきたいです。真剣に考えている時もやっぱり楽しいですし、お子さんが遊んでいるのを見てもやっぱり楽しいなと思いながらやっています。

●INU Projectによって起こった変化

enmono 井手さんにとっては、この仕事に関わることでなにか仕事や生活に変化は出てきましたか?

井手 そうですね、理学療法の仕事ではやっぱり悩むことが多いので、やっぱり子どもたちが存分に力を発揮できることを、もちろん仕事でもやりたいんですけど。

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松田 先程言った高塩先生なんて僕らから言ったら雲の上の人なんですけど、一緒に興味を持ってやってくださったりするとやっぱり嬉しいので、そういうこともメリットというか僕らの喜びの一つかなと思いますね。色んな方が興味を持って近づいてきてくださるので……。

enmono(宇都宮) 縁が広がりますね。

松田 そうですね。なにもしなくても、僕らは車椅子屋さん・理学療法士さんとして仕事はしていけるんでしょうけど、一歩こうやって踏みだしたことで今まで縁のなかった人たちが近づいてきてくれるというか、興味を持ってくださるので。

井手 もし助成金という道を選んでいたらきっと全然違う形になっていただろうと思います。どんどん人と繋がっていく感じはクラウドファンディングならではと思います。

enmono こちらを貸していただいているmass×massさん、あとはその繋がりだと思うんですけどi-link-u(アイリンクユー)の高野さん、あの方はどうやって繋がったんですか?

松田 ここにイベントのご相談で来た時に、我々が準備不足というか「こいつら大丈夫か?」ってきっと思われたと思うんです。きっと高野さんとお会いすれば、僕らが迷っている方向性をもう一回見いだせるんじゃないかと多分思って、くっつけてくださったんじゃないかと思います。

enmono たまたまこちらも高野さんとは鎌コンバレーというところで知り合いだったので、なんか面白いですね。

井手 繋がりますね。

松田 そうですね。いやでも、あそこでだいぶ変わったというのはありますね。僕らはプレゼン資料を作っていって、今抱えている課題をそのまんま聞いてもらったんですけども、その時に第三の案を出してくださるような方だったんです。「この課題とこの課題があって、すごく困ってるんです」って言ったら、「もうちょっと前のところから考えてみたら」って言ってくださって、僕らそこまで戻るってことはそれまでなかったんですけど――。
松田 具体的に言うと、この仕様どうしたらいいかなと言っていたら、もっと遊び方から考えたり、根本の部分から考え直しても、また違う可能性が見えるよと言っていただいて、「あ、そうだったんだ……」と。
松田 やっぱり二人だけでやっていると視野を広く持とうと思っていても、どんどん狭まっていってしまうのは仕方がないので、そうやって人と会うことでパッと開けることがあるなぁと感動して帰りました。

enmono(宇都宮) 僕らと出会う前はどんな感じだったんですか?

松田 そうですね。あんまり表に出たがらない二人なので今日もものすごい違和感が。

enmono(宇都宮) ネット配信なので世界中に出ちゃいますけど。

松田 あんまり表立っていくような人間ではない二人で、よく言うのはもう一人出たがりの人がいればよかったねっていう。でもこの願いっていうのは僕らの願いというよりは子どもたちが叶えてほしいと思っている願いだと思っているので。演じるじゃないですけど、私たちが声を高らかに言わなければならないことだと今は自覚しているんですけども。元々はこういうのがなかったらもう……。

井手 ひっそりと。

松田 ひっそりと。元々井手さんは一人一人に対応していたり、私も一台一台作っていて、そういうのに慣れているんでしょうね。あんまり大勢の方をとか、それこそ一般の業界の方を巻きこんでということにはすごく奥手というか苦手というか、そういう意識がありました。

●INUは「I Need You」

enmono もし仮にこのプロジェクトがクラウドファンディングにも成功して、ある程度認知が広まっていった段階で、これをビジネスなのか医療なのかといった次の展開を考えていらっしゃいますか?

松田 考えてないというと嘘になるんですけど、進んだ先でいつか考えなければいけなくなるとは思います。僕らのINU Projectに関わるすべての人に対してメリットというのを先に挙げているんですけど、やっぱり今関わっている西川さんもそうですし、高野さんもどういう関わり方をされるかは別にしてなんですけども、関わってくださる方にまずメリットが出るようにしたいというのがあって……僕らが会社を立ててやっていきたいかというとちょっと違うんです。これ(イヌコロ)は広まってほしいし……。

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enmono 別に会社じゃなくてもNPO法人というやり方もあって、利益を出さなくても、それを回すだけの最低限の売上でこれを広めますというんでしたら全然問題ないと思います。そういうNPO化というのは可能性としていかがですか?

松田 一番最初にINU Projectを起ちあげた時もやっぱりNPOにしようか今のまま任意団体でいようかというのは悩んだところではあります。このまま悩んでいくんだろうなとは思うんですけども、例えばなにか今後活動する時に例えばNPO法人を取得していた方が信用性が高いとか、(法人格を)持っていないとできない、ハードルが上がってしまうんだったら、やっぱり具体的に考えていくだろうと思います。なんかNPOを起ちあげたくてやっているわけではなくて、活動する上の手段として必要になったらやるかもしれないです。

松田 今は二人とも本業の方も忙しいので、平日の夜とか土日しかできないってなるんですけど、そうするとできることも限られてきますので、誰か一人でもスタッフがいて平日だったら「これ持っていきます」って、そういう方がいれば……。やっぱり今できることが限られていて、どこかでそこに限界が生じたら次のステップが見えてくるのかもしれないですね。

enmono(宇都宮) INU Projectスタッフ募集というのはしないんですか?

井手 出たがりな人!

一同 (笑)。

松田 出たがりで(笑)。……そうねぇ、僕らにないものがあればどなたでも。

enmono マーケティング的な。

松田 あ、そうですね。そういう方もほしいですし。NPOになるとファンドを集めるファンドレイザーみたいな人がいないといけないかもしれないんですけど、今ほしいのはどちらかというと、出たがりな。

enmono プロモーションとか。

松田 はい、もう「私が考えました」って言ってくださって充分なので。

enmono もしマーケティングとかプロモーションに参加されたい方はぜひ。INUってI Need Youの略なんですよね。

井手 そうです。I Need Youです。

enmono INU Projectで検索していただければと思います。

●日本の遊びの未来

enmono お話はまだまだ尽きないんですが、そろそろお時間が近づいてまいりまして、最後の質問です。皆さんに伺っているんですが、「日本の○○の未来について」もし想いがあればということで、この○○の中を考えてきていただいたということで。

松田 はい。これからの日本の「遊び」について。私たちが取り組んでいるこのイヌコロはボーリングのためのもので「遊び」なんですけど、遊ぶ中で障害児と普通の子どもたちが一緒に楽しんで一緒に友達になればいいなというのが願いの中にあります。今、障害者の方が一般の方に壁を持っていたり、逆に一般の側が障害者のことを取っつきにくいなと思っていたりすることの根底には、お互いに相互理解をしていないことがベースにあると思うんです。

enmono そうですね

松田 「じゃあ話し合いましょう」「じゃあ学校で一緒にいましょう」というよりは、なんか一緒に遊んだらいいじゃないかというのは手っ取り早く知り合いになるきっかけになるなと思っているんです。
松田 このボーリングに限らず、色んな今ある遊びがちゃんと障害を持っている方が遊ぶことにも配慮されていて、どこにでも身一つで行けばなにかしらの勝負ができたり、すごく熱くなってお互いに褒め合ったり讃え合ったりできるような関係になれば、一個壁がなくなるんじゃないかと思っているんです。そうなってほしいなぁと。

enmono なるほど。本日はお忙しい中ありがとうございました。INU Projectのお二人でございました。

松田・井手 ありがとうございました。

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