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マイクロモノづくり概論/28,805文字

マイクロモノづくり概論(1):
自社商品で失敗したことある人にやってほしい「宝探し」

私たちが「マイクロモノづくり」と名付けた新しい製造業の概念を提唱し始めた2010年頃、それは「下請け主体の中小規模企業(町工場など)が自社オリジナルの商品を生み出すこと」だと考えていた。しかし、「何のために、自社オリジナルの商品を作ることが必要なのか」といえば、それはビジネスのためではないのか。今や、従来と同じ考え方や手段ではビジネスを継続できないため、何とかしようと考えた結果、「自社商品開発」にたどり着くわけだ。

さらにその奥には、「なぜ、自分たちはビジネスを続けなければいけないのか」という問いが出てくる。その答えに至る過程に、マイクロモノづくりの「手段としての価値」があるのだろうと、最近は考えるようになった。要するに、それは「ビジネスを推進する人の心理にスポットを当て、見つめる」作業である。

さて、「技術を持つエンジニア」や、「デザインが出来るデザイナー」は、大抵、自分が持っている技術やスキルで何か物を作れないかと夢想することがよくあるだろう。しかし、それを自らがビジネスにしようとまでは考えないことが多い。とはいえ、「モノを作るのが好き」という気持ちだけで、取りあえず、何かしら作ってみるといったことは、多かれ少なかれ、体験しているのではないだろうか。

我々が支援している町工場の経営者たちの中には、「せっかく何かモノが作れるのだから、売れるオリジナル商品を作りたい」といったことを実際に考える方々が結構大勢いる。しかし、実際に作ってみたものの、見事に売れないということを何度か繰り返し、周囲の反対に抗する気持ちも薄れてしまい、結局は従来通りの仕事を継続する、といったことが多かった。

私たちは、そんな「挫けてやめてしまった人たち」に、自社商品開発へのチャレンジを再度提案しているのである。それは無謀なことだと思われるかもしれない。それにもかかわらず、私たちの提案に耳を傾けてくれて、「実際にやってみよう!」「また挑戦してみよう!」と言ってくれる町工場が少しずつ増えてきているのである。

チャレンジする町工場のパワーをより大きくするには、そこに、デザイナーやエンジニアたちのアイデアが加わっていくのがよいだろう。この連載をお読みになり、興味が湧いた方は、ぜひenmonoにコンタクトしていただきたい。もしかして、思いもよらないビジネスが生まれるかもしれない。

1-1何のために

さて、「ビジネスを続ける理由」には、「ビジョン」「ミッション」「理念」とも言われるような言葉がある。つまり、「何のために」という問いかけである。マイクロモノづくりを通じて、「何のために」を問いかけ続けることで、見えてくるものがあるだろう。

新規ビジネスは基本的に失敗の連続で、賛同者も少ないことである。そのためへこたれることが多々あって、通常なかなか、継続しづらいものである。しかし、自分がするべき目的(「何のために」)が明確になってくると、継続することが可能になってくる。それが、「理念」というものではないだろうか。

「何のため?」――日本国内に中小企業は300万社ほどある。その中で仕事が順調で将来安泰という会社はどれぐらいあるのだろうか。これは、大企業も同じなのではないだろうか。

「仕事って何なのだろう?」――誰かの「役に立つ」ことで、お金をいただく、ということ。

「役に立つって何だろう?」――その方の「困りごと」を解決することで、感謝されるといったこと。

「困りごとって何だろう?」――実は、それが何か、自分自身で気づいていない場合が多いのではないだろうか?

日頃、私たちが町工場の方々などと話す中でも、こちらからある程度働きかけなければ、それに気付いてもらえないことが多いように感じている。逆に、困りごとについて相談を持ちかけられた場合では、実はそれが「“真の”困りごと」そのものではない場合もあった。それを解決しても、再発すると思われることが多々あるのである。

ビジネスは、製造業の現場改善手法と似ている気がする。現場改善では、「なぜ、なぜ」と問いかけて、真因を探り、問題を見付け出して解決していくものだが、最近は、その企業内に特に問題がなく、解決の種を見いだせないという時代になってきている。つまり、改善手法だけでは問題解決が難しい時代なのである。過去の延長線上にその答えがないからだ。では、そういった場合、どうしたらいいのか。

例えば、自分自身を振り返り、「人間は本当に何を求めているのか」まで深掘りすることで、何かもやっとした未来像が描けるはずである。それを形にすることで、少しずつ周りの反響を集めて、新たな価値を創造していくことが可能だ。

それは、ビジネスとして成立するかもしれないし、失敗するかもしれない。いずれにしても、試行錯誤をしていかなければ未来はないはずだ。試行錯誤して、今までにはないものを生み出し、形にしていくこと、これが「マイクロモノづくり」なのだと、2011年時点では思っていた。

人間は昔から変わっていない。感覚を持ち、感情があるということだ。「感覚と感情に訴えかけるモノ」、すなわち、これを提供するのが“モノづくり”なのだろうと私は考えている。拡大解釈すれば、誰かの言いなりになっているだけの人でなければ、皆、何かしら“モノづくり”しているということがいえる。

世の中の「誰かの言いなりなだけの人」「自分を持っていない人」が少しでも減って、皆が創造的になっていけば、ワクワクする未来が開けるのではないかと思う。

自分以外に、たとえ10人しか賛同者はいなくてもよい。たとえその数は少なくても、TwitterやFacebookのやり取り通じて、「自分一人ではない」ということを実感することができる。賛同くれる方々への感謝の気持ちを携え、皆が創造性を発揮する。さらに、それを我々が支援する……そういうことが、ムーブメントになっていけばよいと思う。

マイクロモノづくりを手段として、少しでも多くの方々が、自分が本当にやりたいことに気付き、天職とも言える仕事に出合えることができるなら幸いである。

1-2ワクワクする宝探し

最後に、私たちが開催しているマイクロモノづくりを学ぶ講座の中で、実際に受講生の方にやっていただいている「ワクワクトレジャーハンティングチャート」を紹介する。「何を作ろうか」とモヤモヤしている方は、一度、「自分の中に眠っている宝物(アイデア)」を取り出す作業をしてみてはいかがだろうか。

縦軸には、「自分が最もワクワクすること」を3つ書き出す。横軸には「自分が持っているスキル」を3つ書き出す。そうすると、縦軸と横軸に交点が9個できるはずである。この9個の中で、自分が最も心惹かれるところの付近に何かしら、本当に作ってみたいものが眠っているはずである。

さあ早速、試してみよう!


マイクロモノづくり概論(2):
ワクワクする心が燃料となる リーン・プロダクトアウトとは?

 さて、今回紹介したいマイクロモノづくりの中の概念は、「リーンプロダクトアウト」である。「リーンプロダクト・アウト」は読んで時のごとく、リーン生産方式で有名な、リーン(省エネ型の)製品開発手法である。

 一般に、大手メーカーが製品開発を行う場合には、製品ニーズに基づいた仮説を構築し、そのようなニーズが消費者の中にあるかどうかを確かめるために精緻なマーケティング調査を行い、そのデーターを分析の上、少しずつ製品の仕様を固めていき、製品を作り上げるのが一般的である。そのような、消費者視点で、消費者のニーズにもとづいてモノづくりをする製品開発をマーケットインと言う。

 1970年台に入り、このマーケットインのモノづくりは急速に進み、大量生費・大量消費のモノづくりはほとんどマーケットイン方式で作られているといっても過言ではないほどになっている。

 それに対して、プロダクトアウトはあくまでも作り手側の思いを優先してモノづくりを行うことであり、簡素な市場調査は行うものの、作り手が一番のユーザーとなり、作り手が使いたいものを、作り手側の視点でつくり上げる方式である。

 マーケット・イン方式のモノづくりが急速に発展した結果、このプロダクト・アウト方式のモノづくりは、市場を見ずにモノづくりを行うという意味において、「目隠しをしてダーツの矢を的をめがけてなげている」ようなもので、現代のマーケティング理論の中で製品開発における典型的な失敗例として批判され続けてきた。

 しかし、今般、日本のメーカーの中でも、壮大なマーケティング費用と開発費をかけた製品開発でも、いざ市場に出してみたら全く売れず、大量の在庫の山を抱えて失敗をする事例が増えてきているが、その理由はなにか?

 わたしなりの解釈だが、もはやマーケットイン方式の製品開発手法では、めまぐるしく変わる市場のニーズにはついていけていないのではないかと考えている。社会現象として表面的に計測可能な、表面的なニーズデータで多大な費用を掛けて製品開発を行っても、そのような表面亭なニーズはすぐに変わってしまうため、製品を市場に投入したときには、すでに旬が終わっているという仮説である。

 また、マーケットイン型の開発では、ユーザーのニーズの最大公約数をとって、製品化しようとするために、一般的には不要と思われる機能などがてんこ盛りになり、製品のコンセプト自体がブレて、わかりにくいものになってしまうのである。


2-1リーンプロダクトの「リーン」の由来

 マイクロモノづくりにおける、リーンプロダクトとは開発リソースを極力社内の手持ちのリソースだけに限定した、プロダクト・アウト型の自社製品開発である。

 さて、リーンプロダクト・アウトのどこが「リーン」(省エネ)なのだろうか?

 一般的に自社製品開発というと、膨大な開発費用がかかるというイメージの方が多いのではないだろうか? たしかに、これまでの自社製品開発の手法をそのまま使って開発した自社製品は膨大な開発費用がかかっていた。

 なぜなら、自社の本来持っているノウハウや技術や、自社の本来持っている設備を超えた製品開発を行おうとするからだ。そうすることで、外部に対してリソースを求め、多額の資金を社外に流出することになってしまう。

 しかし、開発に膨大なコストをかけてしまうと、長い時間をかけた継続的な製品開発を行うことができない。

 なぜなら、一般に自社製品開発において、自社(自分)の持っている技術やリソースを超えたモノづくりを行おうとするために、自社内部で対応できないモノづくりに関して、外部に外注費として資金を流失してしまうからである。

最もわかりやすい事例は、以前の記事で紹介した、「100年後も事業継続するには笑顔! バネ屋さんのアート」の中で紹介した、五光発條の村井さんが開発した新感覚の金属バネブロック「SPLINK」である。

 開発者の村井さんは、この「SPLINK」の製品開発において、自社のリソース以外をつかうことなしに、製品開発を行ったのである。

 バネブロックの開発には、村井さんが自らの「ワクワク」と「自社の持っている技術」を掛けあわせて発想し、既存のバネの製造装置をそのまま使い、材料も量産のバネ材をそのまま使った、設計だけを変えただけで完成したのである。

 つまりは、一切新しい設備も一切導入せず、外注を使うこともなく、そのまま実現したのである。継続して行える製品開発こそ、成功する自社製品開発である。

 そのためには、極力外部への資金流失を避ける必要がある。つまり、自社の持っている設備、自社の持っている技術、自社の持っている人員の範囲の中でリーンな(省エネ型)の自社背開発を行う必要があるのだ。

 そのような場合、開発の資源が限られているので、小粒な自社製品開発にならざるをえないのであるが、小さくても最初は生み出すことのほうがはるかに重要なので、まずは小さく生み出して、その後試作の開発の回数を重ね、徐々に大規模な製品にしてゆくという考え方である。

2-2「ワクワク」する心こそがリーン・プロダクトアウトを継続させる「燃料」になる

 「リーン・プロダクトアウト」にはもうひとつの要素が必要である。それは、前回のマイクロモノづくり概論1でも紹介した、自分が心から「ワクワク」することを製品化するということである。

 リーン・プロダクトアウトが「プロダクトアウト」のである理由がここにある。市場や外部にある競合品を横目に見ながら自社製品開発を行うのではなく、開発者、自らが自分のこころの「内」にある想いを製品化させいちばんのユーザーとなる。

 自らが一番欲しいプロダクトを開発するためには、それこそ、開発者自身が製品開発を行うために「ワクワク」していることが絶対的に必要なのである。

 「ワクワク」することはどんな金銭的な報酬をも超えるモチベーションを技術者にもたらし、夜も昼も、週末も休日も関係無くその開発者を開発へと駆り立てることになる。そうして、開発を続けるうちに、最初に開発したプロトタイプモデルがとるに足らない質感のものであっても、「ワクワク」から生み出される圧倒的な情熱で半年から1年も開発を続けることにより、驚くほどの製品の質感が向上されるのである。

 この経験は我々が町工場から自社製品を開発するコンサルティングの中で経験してきた、過去の記事、
「基板設計エンジニアが作る美しい基板アートで、電機業界不況に挑む」
「100年後も事業継続するには笑顔! バネ屋さんのアート」
「“筋肉バカ”な精密加工屋さん、かわいい筋肉育成グッズを開発する 」
 など、我々がその企画からクラウドファンディングまでをサポートしたプロダクト全般にいえることである。

 最初の試作品は極めて「?」なレベルの製品であっても、開発者自身がワクワクオーラーを放出しながら2ヶ月、半年、1年と黙々と開発を続けることにより、驚くべき製品の質感を生み出すことになる。

◯ワクワクオーラをまとつたマイクロモノづくり製品はクラウドファンディングとの相性が極めて良い

 このようにリーン・プロダクトの手法を用いて開発された、マイクロモノづくり製品は、開発者の想いがこもっているだけに、クラウドファンディングに掲載してみると、かなりの反応が良い。

 その結果とも言えるのが以下の4点の製品であり、我々が記事などで紹介してきマイクロモノづくり製品はすべてクラウドファンディングで資金調達を完了している。

 しかも、目標金額をはるかに超える、200%、場合によっては340%までの資金調達立になっているところを見るとおわかりだとおもうが、クラウドファンディングで重要な要素である、いかに一般ユーザーの「共感」を集めるのかということが達成されている製品であるために、写真やテキスト、また動画などにその開発者の想いを込めたストーリーを表現しやすくこのような結果となっているものと考えられるのである。

 クラウドファンディングを用いて、資金調達をご検討されている、中小企業の方は、まずこのリーン・プロダクトの手法を用いた製品開発を強くおすすめする。


マイクロモノづくり概論(3):マイクロモノづくり製品はその製作者そのものを反映する鏡?

さて、当社enmonoでは、マイクロモノづくりを中小企業の2代目、3代目経営者に学んでいただくために、「マイクロモノづくり経営革新講座」という名前の経営者育成塾を2ヶ月に1回の期間で実施している、現在6期を終えたところで、現在7期を募集中である。

 このマイクロモノづくり経営革新講座の卒業性、25%が何らかの自社製品開発をうみだしている、通常の自社製品開発講座とは、生み出した製品をながめていて、気がついたことがある。

 マイクロモノづくりにおいては、製品は作り手そのものの性格をそのまま反映する。
「作り手」:「作品」の関係が限界まで1:1になる。

この表現はちょっとわかりにくいかもしれないので、メーカーにおけるモノづくりと従業員の関係に置き換えて説明したい。

たとえば、従業員1万人の会社で自動車を1台作るとする。乱暴な表現かもしれないが、その生み出した自動車に対しての従業員一人の貢献度は、一万分の1となる。1,000人の会社であれば貢献度は1000分の1、100人の会社であれば100分の1、10人の会社なら10分の1となる。そして、一人の会社であれば、1:1となるのである。

自動車を一人で作ることなどは現実的ではないであろうが、マイクロモノづくりで取り扱うような小規模総な製品を一から、構想から、製造、設計、プロモーション、販売まで一人で、一気通貫で行うことはある十分可能である。

そのようにして一人の開発者によって生み出された、マイクロモノづくり製品は、その製品をうみだした企画者の強烈なDNAを受け継ぐことになる。まるで、その作者の性格を反映することになるのである。

これまで、過去のマイクロモノづくりコラムで書いてきたマイクロモノづくりのほとんどは、生み出した製品にその作者の性格がモロに反映されたものになるのである。


これまで、マイクロモノづくりのコラムで紹介してきた製品は、その作者そのもの性格を反映している。これら、マイクロモノづくりの手法を用いて生み出された製品と、作者の関係を実際の事例をベースにした対比表を作ってみた。

あらかじめお断りしておきたいのだが、この対比表はあくまでも著者の主観で作製したもので、個人によって異なる印象を保つ場合もあるということを理解の上でご覧いただきたい。

対比表に書き込まれた、製作者と製品から受ける印象には著者のバイアスがかかっている可能性がある、なぜならば、それぞれ製品の生み出されたストーリーに著者自身が深く関わってきた製品ばかりだからである。しかし、今回のテーマーをより正確に読者に伝えるために、不完全だがあえてこのような表を作成した。

これは、「作者の性格が反映する」と言われても、わかりにくいだろうが、この対比表にそって説明した。例えばiPhone Trick Coverの事例では、作者の藤沢さんのモノづくりに関しては極めて真面目だが、ちょっとおちゃめな雰囲気で、そして常にスピード感をもって新しいことに挑戦する。といったような、これは藤沢さんに直接お会いしていただければスグにわかるのであるが・・そんな印象が、iPhone Trick Coverが持つ「人を笑顔にする」、「スピード感がある」、「ワクワク感」を反映しており、プロモーションビデオのトーンにもそれが直球で反映さている。

また、非常に微細な金属製バネを使った新感覚の金属バネブロックである「SpLink」(すぷりんく)の事例でも、作者の村井さんの非常に賑やかで明るいパワーを持っていながら、ひたすら「バネ」を愛すという愛すべきキャラクターが、金属バネブロック「SpLink」で遊んだ人、それを見た人をみな「笑顔にさせる」、遊んでいる時の「ワクワク感覚」、遊んでいる人同士を「人とつなげる」という機能をそのまま反映させている。

そして、プリント基板をアートにした、Healing Leafも、加藤木さんという普段は非常に静かで真面目だが、中に計知れないパワーを秘めているという性格を反映して、Healing Leafもその表面上の美しさとは異なり、その内部に、機械式時計のような精密さと底知れぬ美しさ秘めているというように、作者の性格をそのまま反映している。

 上記の印象を、非常に主観的な対比表であるが。この表を見ていただいて、感じていただきたいのは、作者のお人柄がそのまま出ているということである。これはある意味当然といえば当然で、なにしろ生み出した製作者がほぼ一人なので、その作者の性格が製品にまるごと反映されるのである。

●製作者のパーソナリティーの製品への反映がクラウドファンディング実行時に共感を呼ぶ

 作者のパーソナリティーが製品の全面に出ることが、製品化をする時にどのようなプラスの効果が出るのかというと、前回のマイクロモノづくり概論(2)で紹介したように、クラウドファンディングのビデオに製作者自身が出演して製品をPRすることで、大きな共感を呼ぶことができるのである。

 その際に、製作者の顔の表情や言葉から感じ取られる製作者の雰囲気が生み出された製品の醸しだす印象と同じトーンを持っていることで、大きな共感を生み出すのだと考えられる。

 もちろん動画なので、演出することも可能であるが、当社のコンサルティングでは、クラウドファンディングで公開するプロモーションビデオに関しては、プロジェクトオーナーの性格を拝見して、最も効果が大きいと思われるビデオ構成になるようにプロジェクトオーナーと話し合い、ディレクションして行く。つくられた演出はすぐに見る人に伝わってしまうので、極力、製作者の製作をそのままストレートに反映する構成にするのである。こうすることで、クラウドファンディングを実施した時の「共感度」が向上し、結果として多くの寄付金が集まることになる。


 クラウドファンディングに実際に寄付金を投じた人であればわかると思うが、掲載されているプロダクトやサービス自体の人気もさることながら、どんな人がどのような目的でそのプロジェクトを行っているのかということがクラウドファンディングプロジェクトの寄付が集まるか否かの大きなポイントになるのである。「モノ」に寄付するのではなく、「人」に寄付をするのである。

 従って、「人」=「モノ」になっている製品が掲載されたプロジェクトほど大きな共感を生みだすのである。


●オーナー企業でないメーカーでなぜ「ワクワク」する製品が生まれにくいのか?

 マイクロモノづくり製品は、作者そのものを反映する「鏡」であると述べたが、実際には作者自身と、そのモノが作られた環境、組織を反映するのである。

 ドラマ「半澤直樹」をご覧になった方はおわかりだと思うが、大きな組織には当然派閥があり、派閥間の抗争がある。これは、銀行だろうが、メーカーだろうが関係なく、人の集まるところには必ずと言ってよいほど、派閥は生まれる。

 一定以上の人数の組織になれば、「組織の壁を超えて協力体制を構築」などという理想論は全く通用せず、多かれ少なかれ、派閥や社内政治が無い企業はまず存在しないと言って良いだろう。それが大組織のいわば宿命であり、仕方がないものなのである。

 そんな、見えない力関係が渦巻く大きな組織では、企画当初の非常に良いコンセプトのプロダクトであっても、部門間の対立で、「この商品コンセプトでは営業部門が売れないと言っているのでなんとかこの機能を入れてくれ」とか、「前の製品ではこちらの部署が技術的に妥協したから、今回の製品は、こちらの仕様提案を採用しろ」とか、「事業部長がお気に入りの技術を(無理やり)採用しろ」だとか言っているうちに、当初とは全くコンセプトのことなる機能をパンパンに入れ込んだ全部入りの「フランケンシュタイン的」なプロダクトになってしまう。

 そう、「船頭多くして、船山に登る」というプロダクトになってしまう。さらに、設計者はタイトな納期とコストに負われながら強烈なプレッシャーを受けながら製品を開発することになる。その結果が今の日本メーカーの連戦連敗の元凶であると言っても良いのではないか。

 これと真逆なのが、Apple製品と創業者であるスティーブ・ジョブスの関係だ。もちろんApple社は中小企業ではないし、音楽プレイヤーからサーバーまでを扱う世界に冠たるIT企業である。しかしながら、これまで生み出されてMacintoshからiPhoneまでの数々のイノベーティブな製品はスティーブ・ジョブスそのものを反映したものということができるだろう。「禅」のような雰囲気も漂わせるほどに簡素な美を追い求める性格が、かれが手がけてきたす全ての製品そのものに集約され、美しい輝きをはなっていたのだ。日本の大手メーカーとスティーブ・ジョブスがいた頃のApple社の違いは一つ、創業者が自らCEOとなり、スペックからデザインまで、ものづくりに深く関わっていたことである。

● 「マイクロモノづくり」は「日本刀」と同じだった。

 これまで話をしてきた、製作者の性格がダイレクトに表現されるモノづくりとはなんだろうと考えた時に、筆者の心に浮かんだのは、そう、日本の誇る「日本刀」であった。

「日本刀」は、その刀鍛冶の地域・流派によって、刀の大きさ、姿(すがた)、地肌、波紋の形状が全く異なる。

 作られた当時は武器であったが、現代ではこの刀の種類を鑑定する、「日本等鑑定」というカテゴリーの趣味もあるぐらいのれっきとした美術品である。

 刀の性質は、たとえ同じ流派であっても、刀鍛冶個人の性格がモロに出るものとしても有名で、とくに波紋の形状に関しては、激しい性格や、静かな性格、やさしい性格、奥深く激しさをもった性格、まじめ、すなお、など刀鍛冶の性格がでるものとして有名である。

以下参考URL
http://www.eonet.ne.jp/~katana-30/meisho.html

 マイクロモノづくりは基本的に工業製品であるが、上限1万個以下、中心はロット2000−3000個の少量生産品である。この少量生産品のなかに、後年になり、製作者の魂がこもったファインプロダクトとして、日本刀のよう芸術的な高みに登る製品も出てくる可能性は十分にあるのではないかと考えている。

 モノづくりは本来、後世に自分の遺伝子のような分身を残す神聖な仕事であったはずだ。この不況で、高度成長期に大活躍してキラキラ目でモノづくりに励んでいた技術者たちの中で、リストラだ、早期退職だとすっかり元気を失ってしまった方も多いと思う。

 しかしこの「マイクロモノづくり」という考え方に基づいたモノづくりを行うことでで、もう一度、技術者としての誇りと自分のやりたかったモノづくりを行い、それをビジネスにするワクワク感覚を味わっていただきたいと考えている。


マイクロモノづくり概論(4):マイクロモノづくりの流れ

マイクロモノづくりのプロセス

企画されたものを、カタチにしていくプロセスが、デザイン・試作である。形状の確認、質感の確認、機能の確認、生産性の確認などを経て、量産、販売されていく。
大企業であれば、自社の経営資源で量産販売につなげることはできるが、中小企業やメイカーズにとっては、実際にカタチにしていくプロセスを持続するだけの経営資源がない。そこで、資源確保というプロセスが重要になってくる。

メーカーとして、商品を生み出して製造し販売して顧客に届けていくには、下記のような経営資源が必要となる。

そしてメーカーとしてこれらのリソースを活用して商品にしていくためには、プロデューサーとしてこれらをマネジメントしていかなければならない。プロセスも計画し、必要なタイミングに必要なリソースを供給しなければ、プロジェクトが進行しなくなるわけである。
マイクロモノづくり経営革新講座では、下記のようなシートを埋めていくことで、リソースの洗い出しをするトレーニングをしている。読者の皆様もぜひお試しいただきたい。

これらのリソースを配置する目安として、マイクロモノづくり(企画する~つくる~販売する)のプロセスを下記に示す。

一番上の企画、一番下の販売以外は、つくるというプロセスであり、詳細に見ると下記のようなリソースがある。この中で必要なタイミングで必要なリソースをピックアップして供給することになる。
ちなみに、いまブームの3Dプリンターは、製造方法の一部に該当する。主として試作用途として使われている。しかし高額のものになると少量の量産に使われる事例も出てきているし、生産準備プロセスの金型に使用される事例も出てきている。数多ある製造方法の選択肢の一つなので、プロセス全体のバランスからどういう製造方法をとるのかといった見方がされるものである。

下図は、製造ステージごとに使用されうるツールの概要をマッピングしたものである。テクノロジーの進化とともに厳密には齟齬はあるものの、概ねこういった使い分けがなされるものと思う。

つくるプロセスで使用されるツールのマッピングをしてみた。(詳細には網羅しきれないので抜粋ではある)
左の縦軸はカタチとして取り出される生産数量であり、右の矢印軸は、ツールの制御である。生産数量が多くなるほどに自動化度合いが高くなるといった見方をする。そして横軸は、モノづくりのステージである。モヤぁっとした構想から徐々に図面や画面上にカタチにしていき、少しずつ試作していくにつれてつくり出す数量も増えていく。そして量産も少量から大量になるにつれて自動化された産業機械が使われだしていくことになる。試作も最初は形状確認できるラフなものから、少しずつ機能を満足するかどうかの確認へと移り、製品として量産できるものになっているかの試作へと移行するに連れて使われるツールも変わっていくことになる。そして金型は、プレス機や射出成形機やダイカストマシン等の産業機械で使用される生産設備であるので、マッピングしていない。
なお、カタチあるものを取り出さない0ヶの領域でもモノづくりはなされており、手描きやソフトウェアでのモノづくりがされていうることを表現している。設計・デザイン・試作・量産全てのステージで各種ソフトウェア(製造業向けITツール)を活用し、モノづくりが行われている。
また、後述するようにモノを作るにあたって、まとまって必要になるコスト(イニシャルコスト)と、そのもの1個あたりに生じるコスト(ランニングコスト)がある。左縦軸の生産数量が少ないうちはイニシャルコストを下げるようにするが、増えるに連れてランニングコストを下げるための、イニシャルコスト投資が必要にある。従って将来どのようにするのかという事業計画とともにこれらツールの活用を検討いただけると幸いである。

マイクロモノづくりと大量生産

マイクロモノづくりはじめようの中でも語っているのであるが、マイクロモノづくりと大量生産は対極の考え方ではあるが、対立する考え方ではなく、実はお互いを必要とするものだと考えている。
たとえば、オリジナルTシャツを100枚作ろうとする。これは、自分が企画して、自分で作って自分で売るという意味でマイクロモノづくりである。しかし、ベースとなるTシャツは、大量生産品を調達して、そこにオリジナルデザインのプリントを施して作るのだと思う。綿花を生産して、紡いで糸を撚リ、機を織って生地を作り、裁断して縫いあわせて、ほんとうの意味でのオリジナルのTシャツを作ることは、想定していないのではないだろうか。自給自足は究極のマイクロモノづくりではあるが、コストがかかりすぎて、ビジネスにはしにくいものである。そのため、大量生産のモノがあるからある程度のコストにすることができ実現できる、モノづくりだといえる。心臓部になるパーツが、大量生産されて流通しており、小ロットでも調達できるからマイクロモノづくりの実現につながるのである。3Dプリンターで実現できるオリジナル部品がオリジナリティを指し示し、大量生産で作られた部品と組み付けて、オリジナル商品とすることになるはずである。どちらかだけではないのである。
自分は昔自動車メーカーにいて、大量生産に関わっていた。自動車のホワイトボディという、塗装される前の自動車のモノコックボディを量産するための生産技術をしていた。プレスで作られた、ボディのパーツ、ルーフやサイドボディ(側面のボディ部品)や、骨格部品などを、スポット溶接してモノコックボディを作っていく車体工場の生産技術である。一日400台を生産するために何万点もスポット溶接が必要で、何十工程もかけて、生産していく。治具と呼ばれる位置決め装置にパーツを固定して、ロボットや人が、溶接し、次の工程へ搬送して、作られていくのである。新機種を作るときは、形状が異なるので、設備を入れ替え、何百億円も投資をする必要がある。何百万台も生産するので、一台あたり数万円でできるのであり、人々が購入できる金額で提供できるのである。そうして作られた自動車を購入した人が、オリジナルパーツやオリジナルステッカーなどでカスタマイズして自分だけのものを手にすることができるのである。大量生産されたものをベースとした、マイクロモノづくりである。
部品点数が1ヶの場合、原材料を購入して、すべてをオリジナルで作るということは可能かもしれない。しかし、作ろうとするものの部品点数が多くなってくると、そうはいかない。既製品を購入して手を加えるか、そのまま活用するかなどの方法が必要である。また、最終的に販売する数量によっても考え方が変わってくる。本当に1ヶづくりで1ヶ販売であるならば、そういうことが可能な商品は限られてくる。これが、1,000ヶ販売するのであれば、そのもののためだけのオリジナルパーツを作ってもそれなりのコストに落ち着くので、もう少し商品展開は可能である。何を作ってどれだけの数量を売るのか、企画とマーケティングによって作られかたは変わってくるのである。

イニシャルコストとランニングコスト

量産品と組み合わせてマイクロモノづくりをするという考えの元となるのが、イニシャルコストとランニングコストである。量産効果が見込めてたくさん作れば安くなるのは、イニシャルコストである。1ヶ作っても1,000ヶ作っても変わらないコストである。デザイン費、開発費、設計費、生産準備費(治具金型費、専用設備費等)などなどである。これらは、ものを作るときにまとまって発生する費用であり、たくさん作って販売できれば、1ヶあたりの費用は安くなるという特長がある。
そしてランニングコストとは、1ヶ作るごとに発生するコストのことで、材料費、加工費、配送料などなどである。
イニシャルコストとランニングコストをよく考えて、製造原価をよく考慮して、販売価格を決めてビジネスプランを考えなくてはならない。
マイクロモノづくりは、max10,000ヶ/年程度作って売るという考え方なので、可能な限りイニシャルコストを抑えて、ランニングコストの割合が多くなると思う。そういう作られ方を追求しなくてはならないのである。つまり、デザイン費、開発費、設計費、生産準備費(治具金型費、専用設備費等)があまりかからない方法を考え実施しなくてはならない。
一人何役もこなし可能な限り自らのリソースですることをおすすめしているのは、このような理由からである。


マイクロモノづくり概論(5):マイクロモノづくりにおけるクラウドファンディング活用法 (前編)

 今回は、マイクロモノづくりにおける、クラウドファンディングの活用方法(その1)を議論していきたいと思う。「マイクロモノづくり」においては、モノづくりをあらかじめクラウドファンディングを活用することを前提に、進める考え方になっている。

 これは、クラウドファンディングが出現以前と、クラウドファンディング以降のモノづくりのやり方がこれまでの方法論と大きく異なる。

マイクロモノづくりの流れを以下に示したいと思う。

マイクロモノづくりの流れ

●製品企画

マイクロモノづくりにおいては、まず、中小企業経営者、もしくはメイカーズが自らモノづくりの企画をスタートするところからはじめる。

●知財の調査

クラウドファンディングは非常に便利なツールであるが、デザインや機構を先に世の中に公開することから、知財の確保をすることが重要だ。自らのデザインやアイディアを盗まれることを心配するよりも、先行者の意匠やアイディア、特許を侵害していないことをあらかじめIPDL(特許電子図書館)のDBなどを使ってリサーチすることが重要だ。よほど画期的なアイディアで生み出した製品が大ヒットしない限り、真似されることはない。

取らぬ「たぬき」の皮算用に時間をお金をかけるより、他人の「たぬき」を盗んでいないかというチェックの方がより重要だ。万が一製品が大ヒットした場合、損害賠償請求を求められる場合もある。他人の知財を侵害していないかを調べるためには、IPDLという特許電子図書館のデータベースを検索すれば良。(http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)また、知財に関してのマニュアル本も多数出ているので、それを参考にすると良いだろう。


●試作・デザイン・レビュー

次のステップとして、企画した製品のプロトタイプを自らの手で試作してしまおう。簡単には行かないかもしれないが、自分の手で試作品を仕上げることは重要だ。プロトタイプを作ったら、周囲の人間に見せてまわろう。何かしらフィードバックがもらえるはずだ。

会社の部下や、友人であればポジティブな意見ばかりかもしれない、もっとも手厳しく、意味のある意見は自分の彼女や奥さんの場合もあるので、できるだけ多くの属性の身の回りの人に見せて、フィードバックをもらおう。

仮に製品がB2Cよりの場合は、年に2回ほど行われるデザインフェスタ(http://designfesta.com/)というアートイベントに出展して、性能や価格に関しての意見をもらうことも可能だ。

町工場経営者や技術系メイカーズであれば、プロトタイプは出来てもデザインは苦手だということで、自らデザインをおこなうことはなかなかハードルが高いと思う。しかし、製品の基本コンセプトを自分の手で生み出さなければ、マイクロモノづくり成り立たない。この部分の具体的な手法はマイクロモノづくり概論(1)を参照していただければと思う。

明確な製品コンセプトさえ自分で取り出せてしまえば、後はデザインが得意な人物を見つけて、共同作業をすることも可能だ。

重要なことは、デザインが先にあるのではなく、自ら生み出したい製品のコンセプトと試作品が先にあるべきだということである。そうでないと、デザインの方がより強力なツールであるので、プロダクトの方がどうしてもそれに引きずられる傾向にある。知らず知らずのうちにデザイナーの作りたいもの、生み出したいものを優先させ、デザイナーの下請けになってしまう可能性があるからである。


●クラウドファンディング

知財のリサーチを済ませ、試作品を完成させたら、クラウドファンディングにプロダクトのコンセプトと掲載しよう。この時重要なのは、自分の生み出した製品が、「スペック」、「イノベーション」、「ストーリー」の中のどれなのかを明確に認識することである。

◯スペック
すでに既存に同様のコンセプトの製品があるが、製品のスペック(価格・性能)が従来品と比較して飛び抜けてたプロダクトであるということである。例えば同じ性能だが価格が従来品の1/2~1/5でそれが実現できるとか、もしくは製品の大きさ、重さ、バッテリーの持ち時間、スピードなどがこれまでの製品をはるかに凌ぐような製品である。具体的には、米国のクラウドファンディングサイトKickStarterで3億円近くの資金を調達した、3Dプリンタ Form Labs FORM (http://www.kickstarter.com/projects/formlabs/form-1-an-affordable-professional-3d-printer)などがあげられるだろう。

◯イノベーション
これまで世の中に存在していなかった製品で、その製品を使うことで人々の生活が大きく変わる可能性を秘めた製品だ。具体的には、Googleグラスのようなウエアラブルデバイスのような製品、またおなじくKickstrterで7千万円近くの資金を調達したFlyKly Smart Wheelなど、これまで存在したことが無かった製品で、人々の生活を大きく変える可能性がある可能性のある製品であるということができるだろう。、
(http://www.kickstarter.com/projects/flykly/flykly-smart-wheel)

◯ストーリー
 古くからあるコンセプトのプロダクトで、その製品の背景にあるストーリーが明確にあったり、それを復刻し、新たなデバイスなどを付加して、付加価値を加えたり、またその製品が生み出された背景にある、「作り手」のストーリーなどとしての付加価値を加えたものである。具体的には、日本の伝統工芸製品の技術をクラウドファンディングで支援する試みである、「この道48年の彫り士が手がけるApple製品のケース」プロジェクトであったり、

革新的なものでは、ロシアで生み出されたクラシックレンズを復刻してデジカメに対応した「Lomography Petzval Lens」

などのプロダクトがそれに当たるだろう。

クラウドファンディングを行う際に、自分の生み出したプロダクトの訴求点が上記のどのカテゴリーに入るのかを十分吟味した上で、クラウドファンディングに掲載するための、以下のコンテンツを準備しよう。

・写真
・動画
・テキストメッセージ

◯写真
 クラウドファンディングにおいて、「写真」の位置づけは非常に大きなものである。インターネットで情報溢れる世界で短時間でプロダクトのコンセプトを伝えるには、
写真が最も効率が良い。クラウドファンディングの中ではまず写真→動画→テキストという動線でユーザーを誘導する方式となる。

従って、最初にユーザーをとらえる写真撮影には、細心の注意が必要となる。具体的には、製品の特徴を最大限に引き出すカット、照明の当て方、露出等ということになるが、この写真のクオリティが最初のアイキャッチとなるので、撮影には徹底的にこだわりたいところだ。

 ちばみに、著者がこれまで支援したクラウドファンディングプロジェクトでは、プロジェクト企画者自身に、我々が写真撮影方法を徹底的にレクチャーした上で、写真撮影をしてもらうようにしている。

◯動画
 まずはパトロンを検討している一般のユーザーは写真でプロダクトに興味持ち、そして製品コンセプトを理解するのに動画を見る。動画では、プロダクトのコンセプトだけではなく、その製品が生み出された背景ストーリーも知ることが出来る。従って、動画の制作には、そのプロダクトが生み出された背景のストーリーを十分に語ってもらいつつ、製品の作り手の「生の声」をどうやって伝えるのかを意識して編集する。

仮に製品のスペックが飛び抜けてすばらしい製品だったり、世の中に無かったイノベーションを盛りこんである製品でも、作り手「生の声」ストーリーはあったほうが良い。スペックやイノベーションが優れている製品にさらに作り手の「生の声」が加わることでさらに説得力が増すプロジェクトにすることができるのである。

当社が支援した全てのプロクトでは、プロジェクト起案者自身に動画の撮影と、編集を行っていただく。最近では、動画の編集ツールを安価に手に入れることができるので、コツさえ覚えてしまえば、動画の編集はわりと簡単に出来る。 ただし、全体の動画の構成を考えるのは、自分一人ではなく、プロジェクトに客観的に関わることが出来る人々も巻き込んでゆくことが必要だ。

◯テキスト
パトロン候補のユーザーは、まず最初にプロジェクトの写真を見て、引きつけられ、その後、「動画」で製品コンセプトを理解し、最後にじっくり詠むのがテキストだ。このテキストの部分は誤字脱字が内容にきおつけよう。それなりの対価でユーザーに寄付をしてもらおうとしているプロジェクトの中に、誤字脱字があると、それだけで信頼度が下がる。

また、テキストの文章の書き方も、単純なECサイトのような商品のスペックや「ウリ」を前面に出すので、その製品が生み出された背景にあるストーリーや、作り手の想いをテキスト化していこう。

● プレスリリース

当社がこれまで支援してきた、クラウドファンディングプロジェクトでは、必ずプレスリリースを作成し、プレスリリース配信サービスであるアットPressを活用し、作成したプレスリリースを配信してもらうようにしている。

現在、国内においては様々なクラウドファンディングサイトが乱立傾向にある。仮に大手のクラウドファンディングサイトに掲載することが出来たとしても、プロジェクトの数が多すぎて、プロジェクト内容がかなり尖って目立つものではない限り、自分のプロジェクト自体が埋もれてしまう可能性がある。

自身のクラウドファンディングプロジェクトで生み出そうとしている製品が、いかに画期的なものであっても、世の中の人に知ってもらえない限り、多くのパトロンから資金調達をすることは難しい。そのためにはプレスリリースを準備して、クラウドファンディングのスタートと同時にプレスリリースを配信しよう。

プレスリリースの効果的な書き方に関しては、プレスリリースの書き方などのマニュアル本を参考にしつつ、自分のプレスリリースをマスメディアにアピールしよう。運良くWEBメディアや新聞などで取り扱ってもらうことができれば、大きな資金を得ることも十分可能である。

●クラウドファンディングは「義理と人情が一番!」、最初の2週間で30%が目安。

 クラウドファンディングで目標の資金調達に成功するためには、まずは自分の身内や周囲の人に応援してもらうことが必須だ。クラウドファンディングにプロジェクトを載せてしまえば、自動的に資金が集まるというのは、幻想にしか過ぎない。

 自分の知人や友人に認めてもらい、パトロンとして支援してもらえるレベルの製品でないと、なかなか資金調達をすることが難しいというのは現実なのである。クラウドファンディングと言っても、それなりの人的ネットワークを持っていない場合は成功することは難しい。目安としては、クラウドファンディングがスタートして2週間で目標金額の30%を集めることができれば、成功率は一気に高まる。

 当社が支援している町工場のプロダクトの場合、町工場という仕事は経営者同士のつながりが深い。そう、経営者同士が「義理と人情」でつながっているのである。従って町工場の経営者同士「あいつがクラウドファンディングやっているのだったら、いっちょ手伝ってやるか」という町工場オヤジのロケットブースターが効きやすい。

ちなみに、zenmonoでは町工場の経営者の「オヤジ」サポーターが多い、一般的に、クラウドファンディングと言うと、20代~30代のサラリーマン世代に支援者に多く、一人あたりの支援単価も4,000円前後と想定される。
それに対してzenmono場合のパトロン一人あたりの支援金額は、約3倍の12,000円程度である。その理由はzenmonoのパトロンが30代~40代の「オヤジ」町工場経営者だからである、町工場といっても中小企業の経営者である、当然一般のサラリーマンと比較して自由になる金額はそれなりにあるし、場合によっては会社として支援をすることは可能だ。会社として支援する場合は、支援する金額もそれなりに大きくなるのである。

 はなしが脇道にそれたが、クラウドファンディングの目標金額を集めるためには、金銭的に支援してくれるような「義理と人情」の人的なネットワークを持ち、目標金額の30%程度はその人的ネットワークから調達できるような体制でないと、目標金額の達成は難しい。


マイクロモノづくり概論6:マイクロモノづくりにおけるクラウドファンディング活用法(後編)

さて、今回はマイクロモノづくりにおけるクラウドファンディングの後編である。メイカーズの方々が自分で企画し、プロトタイプを制作した製品に対して資金を調達しようとした場合の注意点に関して取り上げようと思う。

● 「開発資金」があればモノづくりが出来るという妄想

さて、メイカーズや中小製造業がオリジナル製品を開発し事業として行く場合に必須とされるリソースが以下の3つだ。

1. 開発資金
2. 共同で製造に携わってもらえる工場の発掘
3. 販路

 一般に、クラウドファンディングは1.の開発資金をあつめるための道具として捉えられることが多い。しかし、開発資金さえあれば、マイクロモノづくりをスタートすることができるのであろうか?

 こちらのコラムにも書かれているように、先行している米国において、クラウドファンディングサイトで資金的100%集まったものの、最後まで遂行されているプロジェクトは過半数ということも言われているらしい。

また、こちらのレポートではindiegogoやkickstarterで過去に成立したハードウェア系プロジェクトがこれだけデフォルトしているというデータなどがレポートされて話題となっている。

 実際に当社でも、「クラウドファンディングサイトで資金調達はしたのは良いが、実際のモノづくりを行うために、国内工場に見積りしたところ、予想以上に金型費用が大きくクラウドファンディングで調達した資金では赤字になってしまうので、国内の町工場で小ロット生産にて協力してもらえる町工場を紹介してもらいたい。」などの、クラウドファンディングとモノづくりに関する相談を受けたことがある。

 ハードウェア系のクラウドファンディング・プロジェクトで何がプロジェクトの阻害要因になるのであろうか?大きく考えられる要素は以下のものになるのであろう。

1. プロジェクトコストの見積もりミス。
2. 「プロトタイプ」と「量産」の違いの理解不足
3. 製造先が見つからない・製造先との信頼関係構築ベタ

 実は上記の1.と2、3.は非常に密接な関係にある。主に「メイカーズ」と呼ばれる人たちが陥りやすい間違いなのであるが、先に上げた相談案件のように自分たち判断で誤った見積もりを算出してしまい、いざクラウドファンディングで資金は集まったのは良いが、資金ショートでモノが作れなくなってしまうことが往々にしてあるからだ。

 このようなトラブルはプロジェクトの初期の段階から信頼の置ける製造先(町工場)との面談を重ねることで、技術的な課題や、見積のミスを回避することができるからである。メイカーズと呼ばれる方々は製造業のプロフェッショナルではないが、本気でモノづくりを目指すのであれば、町工場との連携は必須であるので、様々なネットワークを通じて町工場さんと仲良くなって、信頼関係を構築することが必須であろう。

 今回の概論では、上記の3点全てを取り扱いたいが、紙面の都合から今回のコラムでは1.のクラウドファンディングにおけるプロジェクトコストの見積りの考え方を話題の中心として扱っていきたい。

 クラウドファンディングにおいて、モノづくりのプロジェクト全体の原価計算は必須である。中小企業やメーカーであればこの部分は本来業務であるから、モノづくりにおける見積もりミスは少ないが、それでも委託加工を主業務としている中小企業が、最終製品を開発する場合は、「デザイン費」、「パッケージ費用」、「発送費」、「広告費」などのこれまでの下請け的な仕事では想像もできなかった様々な費用が発生するという予備知識が無く、プロジェクト全体のコストを見積もる際に、思わぬ「ヌケ」・「モレ」が発生してしまうこともある。

 モノづくりのプロでも、このモノづくりにおける見積り作業と、その後に続く「修羅場」的な品質問題は幾度ものトラブルを乗り越えて熟達する分野である。従って、モノづくりが素人である「メイカーズ」と呼ばれる人々はこの部分を1回で無難にクリアできるというのはかなり難しい。しかし、予備知識が有るのと無いのではハードルの超え方が全く異なってくるので、このコラムを参考にして自らのプロジェクトの原価計算をしっかりやって欲しいと思う。


● クラウドファンディング活用における原価計算の方法

クラウドファンディングにおける原価計算
モノづくり系クラウドファンディングにおける原価計算は、基本的に製造業の原価計算とほぼ同じである。原価計算は、初期費用である「イニシャル」費用と、量産時のコストである「ランニング」コストに分類して算出するべきである。

コスト計算はまず、製品開発の初期にかかるコストを計算する。それをイニシャル・フィーと言う。設計にかかるコスト、製造設備にかかるコスト、ソフトウェア費用など様々なコストを算出する必要があるが、それらを全て積み上げる必要がある。

こちらの原価計算シートを見ていただこう。

縦軸には、それぞれ、イニシャルコストとランニングコスト、さらにクラウドファンディングが成功して自社商品になった場合の販売コストという大項目が明記してある。

さらに横軸には、主に設計段階である「企画・構想」、そして次の設計にフィードバックをさせるための試作「設計試作」、機能的な部分を確認するための「生産試作」、さらにプロトタイプを展示会などでテスト的展示、もしくは販売をしてユーザーからのフィードバックを受ける「テスト販売」、さらに生産工程を確認するための試作「量産試作」、実際に「量産」するステージ、最後に「販売」のステージとなる。

製品の性質や複雑さによってはここまで細かく分類する必要はないが、メーカーのモノづくりではこれらの工程と原価計算を踏んで作られている。マイクロモノづくりにおいてはこれらのステップを全て行いことは無いかもしれないが、一応それぞれのステージを分類わけしておく必要がある。

● モノづくりクラウドファンディングの体験はほぼ起業に近い?

モノづくりを体験したことが無いメイカーズの方々にとって、このシートを埋めるのはハードルが高く、「まるで一つの会社を立ち上げる事業計画ではないか?」と躊躇される方がいる。そう、クラウドファンディングで資金を調達して、モノづくりを行い、対価であるプロダクトをパトロンに最後まで届けること自体が、小さなメーカーを立ち上げ、売上と出荷を行うレベルのマネジメント能力が必要なのである。まさにプチ起業に近いレベルなのだ。

実際に我々がサポートしている中小企業経営者がクラウドファンディングを体験することによって、経営者としてのレベルアップが著しい。経営者によってはクラウドファンディングを行うことで、自社の持っている強みを徹底的に考えなおし、再度「経営理念」を生み出し、名刺に印刷した方もあるほどである。クラウドファンディングを行うことは、徹底的に自社や自らの強みと向き合い、それをどう表現するのかということを徹底的に考えることなのである。

もちろん、マイクロモノづくりの場合はここまで詳細にステージを分ける必要はないかもしれないが、まずは埋められる範囲でこのようなエクセルシートに数字をいれて、ざっくりと事業全体にかかるコストを見積もるべきである。

 この原価計算シートを用いてきちんと原価を見積もり、全体を俯瞰しておくことで、クラウドファンディングで資金調達はしたが良いが、集まった費用ではプロジェクトが遂行できないということに陥ることを避けることができるのである。

●クラウドファンディングにおける目標金額の設定

さて、次は、見積もったプロジェクト全体のコストから、クラウドファンディングの目標金額をどのように設定するかということである。

この記事をご覧になっている方は、製造設備を持たないメイカーズの方もいるだろうし、自社の製造設備を持つ中小製造業の方もいらっしゃると思う。


●「基本編」はメイカーズと中小製造業向き

今回の事例では、製造設備をある程度持つ、中小製造業の方がクラウドファンディングを行うことを前提に話をすすめていきたいと思う。

中小製造業であれば、製造業であるので、自社の設備をお持ちだと思う。板金加工、溶接、プレス部品製造、射出成形、レーザー加工、金型設計、金型製造、などさまざまな自社設備を持ち、それぞれ独自の加工技術を持っていると思われる。

マイクロモノづくりでは、まず自社の製造設備を活かした自社商品開発を提唱しているので、自社の加工技術を用いることが前提になる。しかし、必ずしも自社商品開発は自社の技術だけで、自社製品ができるわけではない。(理想的には自社技術だけで成立させるのがマイクロモノづくり)従って、自社の技術で出来る範囲の開発費用は、内部コストとして捉え、それ以外のコストは外部コストとして捉えるべきである。

 会社として自社製品を開発する場合は、この内部コストはプロジェクト費用に入れるべきではない。

 マイクロモノづくりは、経営者自身が製品開発担当者となり製品開発を行う、全く新しい自社製品開発手法である。一般的に製品開発には膨大な時間を必要とすることになる、そこで経営者の時間単価と膨大な開発時間を算出し、そのコストを全てクラウドファンディングのプロジェクト費に参入していては、膨大な費用になってしまう。そのような「内部的な」コストをクラウドファンディングのプロジェク費用の中に全て入れ込むのは現実的ではない。

 また、マイクロモノづくり製品の場合、社内の技術と設備を用いることで生産できる製品を開発することが前提である。一般的な製造業では、賃加工費のコストテーブルを作成し、稼働時間に応じて加工設備の費用を稼働時間で割って顧客に請求する方式をとっている。仮に、時間チャージが非常に高い加工機械を用いて、製造をする場合のコストを全てクラウドファンディングの費用の中に参入してしまうと、プロジェクト全体の費用が非常に高くなってしまう可能性がある。

 そこで、クラウドファンディングのプロジェクト目標金額を決める際には社内の加工賃を全てプロジェクト費用に含めるのではなく、その一部をプロジェクト費用に含め、それ以外は内部コストとして処理するのが妥当である。

 こちらの「(基本編)モノづくり系プロジェクトの目標金額設定の考え方」をご覧いただこう。このチャートの場合では、基本的な設計と、一部の加工ができる製造業を前提に書いてみた。

 こちらのチャートの左側が「トータルコスト」である、そしてその右側のチャートが「外部流失金」の合計額である。それぞれ、設計、デザイン、材料、加工、金型、外注加工費、梱包材料費用、送料がある。こちらのチャートに書いた想定の会社では、設計と加工の一部をおこなうことができる小規模な製造業を想定している。

 製品に必要な「デザイン」は外注、「材料」は外部から購入、「加工」は社内で、さらに「金型」を必要とする場合は金型費も外注する、また全ての加工を社内で出来ない場合は「外注費」、忘れてはいけないのが支援してくれたパトロンに送付するための「梱包費用」や「送料」である。

 クラウドファンディングで開発した製品のパッケージをなにもそこまでこだわる必要はないが、最初からクラウドファンディング終了後は自社製品としてそのまま自社製品化することも多いので、このタイミグで自社製品時と同等のスペックにしておき、そのまま自社製品として出荷できる体制にしておくべきであろう。

 これら全ての「外部流出金」の合計に、クラウドファンディングサイトに支払う手数料を合計して、プロジェクトの目標金額とする。通常はプラットフォーマーに支払う手数料パーセンテージは15%から20%までさまざまである。自身のプロジェクトとプラットフォームの相性を加味してプラットフォームを選択しよう。

 この合計金額より多く集まれば、それがプロジェクト運営者にとっての「利益」となる。この「利益」の処理に関しては、会計士や税理士の専門領域になるので、この概論では特に言及しないが、現在ではこの処理に関してまだグレーゾーンである。最近ではクラウドファンディングの会計や税務にくわしい専門家も出てきているので、そのあたりのことを相談したほうが良いだろう。

 この基本編では、基本的に外部コストとして社外に流出する現金を、クラウドファンディングプロジェクトで回収するという考え方である。このコストであれば、

●「応用編」は中小製造業向き

 「応用編」では、社内で提供できる範囲は、内部コストとしてプロジェクト費全体には組み込まない考えは同じである。基本編で異なるのは、クラウドファンディングを行い入ってくる現金で、プロジェクトにかかる費用を全て捻出するのではなく、製品開発にかかる一部の費用を捻出するというものである。

 米国においてはクラウドファンディングで数億円単位の資金を集める手法も確立されつつある。(そもそもパトロンになるベースの人数が桁違いであるという背景もある。)日本国内においてクラウドファンディングを行うことは、数十万から数百万円という範囲である。

 モノづくりにはとかく大きな費用がかかる。その大きな費用を回収するというのは、まだ国内のクラウドファンディングサイトの集金力では難しいというところが現実的である。従って、クラウドファンディングを、将来のユーザー候補から開発資金の一部を支援してもらいつつ、同時にユーザーからのフィードバックを受けられる、マーケティングツールとして活用するという考え方である。

 従って、国内において中小製造業がクラウドファンディングを活用して製品を開発する場合は、自社製品を開発するための、開発費の一部を回収しつつ、同時に顧客からのフィードバックを期待してマーケティングのためにクラウドファンディングを活用するというのが応用編である。

●「応用編」では2つの目標金額を設定

 応用編はいわゆる「メイカーズ」という方にはおすすめできない、なぜならば、資金的な余裕がなければ、仮にプロジェクトが成立して資金が入ってきても、支出のほうが大きくなってしまい、プロジェクト自体が成立しないからだ、応用編は資金的にはある程度余裕があり、自社製品のための発射台としてクラウドファンディングを活用したいとかんがえている中小企業向けである。

 応用編のチャートをご覧いただこう、まず、プロジェクト全体にかかる費用を算出する。
そこから、クラウドファンディングのサイトの規模や、その製品の性質に応じて、表面上の回収を希望する金額を決定し、そこにクラウドファンディングサイトへの支払い手数料をプラスして第一の絶対に集まるだろうという第一の目標金額を決定する。

 次に、目標金額をクリアして、(前編)で紹介したような、クラウドファンディングの前半で紹介したような、様々な施策:プレスリリースを打ったり、時にはイベントでの告知活動を行ったり、運良くプレスリリースがマスメディアに掲載された場合の対処方法などを計画しておき、「ここまでは伸びるであろう」という第二の裏目標金額を設定しておく。
 
 開発費用が大きな案件であれば、この第二の目標金額でも全ての原価を回収することはできないが、クラウドファンディングを達成することにより、ある程度のマーケットニーズがわかり、同時に告知の意味としても自社製品として発売が可能になるので、その販売を行って得られる利益でのこりの開発費用を回収するという考え方である。

●対価を試算する

 さて、プロジェクトの目標金額が決まったら、対価を設計しよう。この対価の設計はクラウドファンディングを行う上で原価計算の次に重要な作業である。なぜなら、どれくらい魅力的な対価を、どの程度の価格で設定できるかどうかで、集めることができる支援金の額が大きく変わってくるからである。

 ご覧のような対価設定シートを作成し、過去に自分と同じようなクラウドファンディングプロジェクトが無いかを、国内、海外のクラウドファンディングサイトを徹底的に分析し、その成功要因、失敗要因を分析し、オリジナルの対価と対価設定の価格を設計しよう。

 過去のクラウドファンディングプロジェクトを分析し、それぞれの対価がいくらで設定されており、そこに何人のパトロンがついたのかを分析し、自分のプロジェクトのなかでどの対価が最も売れ筋になるのかを設計する。

● 対価設定には商人(あきんど)の感覚が必要。

 対価設定の設計が、クラウドファンディングの調達資金の大小を左右すると言っても過言では無いほど重要な項目だ。特にモノづくり系のクラウドファンディングでは、この設計がはまれば、目標金額を遙か上回る資金を調達することができる。なぜなら、イベント系やチャリティ系のプロジェクトとは異なり、プロダクト系のプロジェクトは量産体制さえ整えてしまえば、何個でも出荷できるからだ。そのポイントはどれだけ「お得」感を出せるのか、この一点につきる。


 対価の設定のコツとしては、最も売れ筋になるであろう「基本」の対価をまず決める。その一つ上に、基本の対価より少高い対価を設定してする。人間は「上」、「中」、「下」という価格を提示されたら、ほぼ「中」を選択するという経済心理があると言われている。その「中」の対価に支援金をより多く集めるため、基本対価の「上」の対価と、その「下」の対価を設定するのだ。

 具体的な額を数字であげるならば、下:3,000円、中:5,000円、上7,000円というそんな感じだ。しかし、きりが良い数字よりも端数を多少負けた方が良い結果が出ることがある。たとえば、下:2,800円、中:4,800円、上:9,800円などという端数の金額が心理的なハードルを下げる傾向がある。この傾向は、海外のクラウドファンディングプロジェクトを分析したこちらの記事からも読み取れる。

● 代理店パッケージが対価の大口資金獲得のキモ

 クラウドファンディングで大きな金額を集めているプロジェクトでは、その多くが代理店パッケージを用意している。そのプロダクトが魅力的であればあるほど、代理店パッケージによって大きな金額を集めることができる。

 代理店パッケージとは、クラウドファンディングで商材を仕入れ、店舗があるならば自らの店舗、または自分のECサイトやYahooオークションなどで販売する人向けのパッケージだ。ECサイトはいまではどこでも価格競争にさらされており、同じ商品ならば価格が一番安い大手のECサイトなどで購入されてしまう、そのために、まだ他では販売していない魅力的な製品をいち早く仕入れ、独自の価格を維持して販売したいのだ。この代理店パッケージをいかに魅力的な価格にできるのかということが大口の資金獲得につながる。

 ここまで説明してきた値付(ねずけ)の経済学は、これで本が1冊かけてしまうほど奥深い。その感覚を養うのは、とにかく、数多く過去のクラウドファンディングで大成功したものをより多く見て参考にすることで、価格に関する感覚をつかむことができる。数多くを見ること、そして自分の対価が一般の人にどう受け入れられるのかということを、協力してくれるメイカーズ仲間や、友人知人にできるだけ多く聞いてみよう。モノづくり職人やエンジニアがまさに商人(あきんど)の感覚を持つべきステージなのである。

● 対価の個数の増やし過ぎは逆効果

 価格の心理学では、選択肢が多すぎるとひとは迷ってしまい、結局は何も選べないということがわかっているという。クラウドファンディングの対価も様々なバリエーションをセットしたくなってしまうが、できるだけ数を絞ることで、対価が出やすくなるということもある。海外のクラウドファンディングプロジェクトを分析したこちらの事例だと、9〜11個くらいの対価数が最適であるというデータが出ている。

 さて、対価を設定したら、忘れがちなのが送料である。1つの対価の中に送料も含めておかないと、数個の送料はたいしたことがないと思うかもしれないが、仮にプロジェクトが大きく成功し、100個−200個分の支援が入った時には大きな金額になる。

 全国一律の料金でモノを遅れるわけではないので、どの方法が最も安い方法なのか、プロダクトの大きさ・重さによって送料が変わる場合もあるので、あらかじめ見積もっておく必要がある。また離島など遠隔地に対価を送付する際は別料金が発生することもあるなどという但し書きが必要になる場合もある。


 さて、こまでクラウドファンディングにおける原価見積もりの考え方から、対価の設定の考え方まで説明をしてきたが、モノづくり系クラウドファンディングは、資金が十分にある場合でも失敗することもある。それは、冒頭にあげた以下の原因の中のうち、

1. プロジェクトコストの見積もりミス。
2. 「プロトタイプ」と「量産」の違いの理解不足
3. 製造先が見つからない・製造先との信頼関係構築ベタ

 プレイヤーの2と3の部分の力不足も大いにある。今回の概論ではここまで説明できなく、1の議論だけをご紹介したが、2と3に関しては今後に続くマイクロモノづくりに関するコラムの方で説明できる機会があればと考えている。

 一言に「クラウドファンディングで資金調達をしてモノづくりができる!」とはいっても、インスタントにできるわけではなく、資金調達に成功し、きちんと約束通りプロダクトを出荷出来ているプロジェクトには裏側で尋常ではない作業が行われているということを理解していただければ幸いである。そう、ちょっとした「起業」に近いレベルのマネジメント能力が必要である。逆に言えば、クラウドファンディングを使ってモノづくりを成功させれば相当の経営的な経験値を積むことができるということだ。

 我田引水になるが、わたしが代表をつとめるenmonoはこのクラウドファンディングの教育効果を期待し、自社のzenmonoというクラウドファンディングサービスを活用する「マイクロモノづくり経営革新講座」という講座の中で経営者のレベルアップは図るプログラムを定期的に開催しているので、興味が有る方は当社のホームページを一度ご参照いただきたい。

さいごに

2014年に記事投稿したもののオリジナル生原稿をそのままきさいしました。既に時代遅れになっている部分もありますが、そのあたりはご了承ください。オリジナルなのでしっかり編集者さんの校正が入ってないため読みにくかったり、整合性がついてない部分ももしかしたらあるかもしれません。もろもろ含めて、温かい目で読んでいただけたならば、幸いです。

「マイクロモノづくりはじめよう」という本には網羅してますので、ぜひご購入ください。

あと、講座で使ってるテキストも配布してますので、ご興味がわきましたら、ダウンロードいただけると嬉しく存じます。ワークシートなども入ってるので試してみたい方にはお勧めかも知れません。






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