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第29回MMS(2012/02/24対談)「溶接工場が生み出したバリアフリーなハンドバイク」宇賀神溶接工業所 宇賀神一弘

本記事は2012年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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宇賀神溶接工業所(埼玉県朝霞市)は、40年培ってきたノウハウと高い技術力による「精密板金溶接加工」を得意とする。事業の柱の一つは受注生産、もう一つは、同社2代目の宇賀神さんが始めたオリジナルプロダクトの開発である。

ステンレス材を用いた家具やプロダクトのブランド「WELDICH(ウェルディック)」と、ハンドバイクの専門ブランド「HandBike Japan(ハンドバイク ジャパン)」がある。

宇賀神さんは独立心が強い。それは自他ともに認めるところだが、オリジナルプロダクトの開発を始めたのは理由があった。

「受注生産だけで、将来は大丈夫だろうか?」

「自社製品があれば、自社の技術をもっとアピールできる」

受注生産した商品は守秘義務もあるため、会社のパンフレットや展示会でオープンに紹介することは、なかなか難しい。自社製品を作るのなら、ステンレスの可能性を広げるようなインテリア製品にしよう。そう考えた宇賀神さんは、休日を利用して専門学校に通い、インテリアデザインを基礎から学び始めたのだ。

そして自らデザインもする溶接職人となり、作品をコンペに応募したり、工業系以外の展示会に出展するようになったという。

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「座ってみたい北の創作椅子展」で入選し、北海道帯広で展示されている宇賀神さんの作品

宇賀神さんは2008年、デザインイベント「TOKYO DESIGNERS WEEK」に参加している。翌2009年にニューヨーク国際現代家具見本市に出品したテコデザイン(東京都荒川区)代表の柴田さんがデザインした家具、DNA shelfを製作した。柴田さんは専門学校時代の講師でもあった。

この時は宇賀神さんも柴田さんも、二人でハンドバイクを開発することになるなど、想像もしていなかった。

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柴田さんが「ニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)2009」に出品した、DNA shelf(写真中央)

展示会の出展仲間から加工の仕事を依頼されるようになった宇賀神さんは、持ち前のコーディネート力で、その繋がりを「DESIGN Heart」というデザインユニットへと進化させていった。宇賀神溶接工業所に入社する前は、大手旅行会社で営業の仕事をしていたのだ。

宇賀神さん自身はインテリア製品のブランド「WELDICH」を立ち上げ、専門分野の異なるプロ達とコラボレーションできるネットワークが誕生した。2010年に始動した「DESIGN Heart」は現在、13組19名のデザイナーが商品企画から販売まで行っている。

我々(enmono)は、そのような宇賀神さんのマイクロモノづくりについて、取材させていただいたことがある。2012年には第29回MMS放送にご出演いただいた。ハンドバイク専門ブランド「HandBike Japan」を設立される直前で、なぜ溶接工場がハンドバイクを作るようになったのか、お話を伺ったのだ。

▶対談動画

2009年に、事故で下半身の自由を失ってしまった方から「自分用に、手でこぐ三輪自転車を作ってほしい」と問い合わせがあったそうだ。宇賀神さんが「自転車は作ったことがないので」と断ろうとしても、「(ホームページに載っている製品のように)技術があるから作れるはず」と熱弁で返されてしまった。

しかし、図面もない。一年前、一緒にモノづくりをした柴田さんが、すぐ頭に浮かんだ。

宇賀神さんからハンドバイクの件を相談された柴田さんは、困難を想像しつつも、大きな可能性を感じた。日本製のハンドバイクは、当時はなかった。世の中にないものをデザインすることへの挑戦に、興味を持ったのだ。

また、何事も「やってみよう」と前向きに考えるタイプだった。自動車・家電部品のセールスエンジニアや、企業のプロモーション関係の仕事も経験し、幅広い分野のデザインを手がけられている。

柴田さんはメンテナンスやコストを考慮し、既存の自転車パーツに合わせて何度も設計変更しながら、10ヶ月かけて図面を完成させた。

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エネルギッシュな宇賀神さん(左)、ラグビーをやっていたそう
ライダーの柴田さん(右)が並走しながら、細やかにフォローする

約3年間、宇賀神さんと柴田さんは新しいモデルのハンドバイクを開発し続け、展示会やイベント、インターネットで情報を発信してきた。近年、それらの活動は多くのメディアで取り上げられ、注目を集めている。

宇賀神さんと柴田さんの理想は、「日本国内でのモノづくり」だ。ハンドバイクが注目されるようになれば、日本の製造業や関係者が海外ではなく、日本のモノづくりに目を向けてくれるのではないかと考えている。

たった二人でやっている事業であるから、自分達が業界を動かすくらいの気持ちでなければ、企業は協力してくれないのだ。

日本のモノづくりの未来を考えれば、自分達だけ良ければ、今さえ良ければいい、というわけにはいかない。モノづくりをする人間として、若い人がモノづくりに興味を持つような、本当に役立つモノを作りたい、という思いがあるそうだ。

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これまで宇賀神さんと柴田さんは、一生懸命に「点」を作ってきたという。今、その「点」とenmonoが持っている「点」が繋がり、新たな線が出来つつある。

先月末より、zenmonoでハンドバイクのプロジェクトを立ち上げ、さまざまな形の支援を募集している。支援いただいた内容によっては、ハンドバイクの試乗会に参加できる。

柴田さん:「体験していただいて、『モノづくりって、面白いな』と感じていただければ。楽しんで乗ってくださる皆さんの笑顔が、励みになります」

宇賀神さん:「私達も楽しみながら頑張ります!」

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有限会社宇賀神溶接工業所

テコデザイン有限会社

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溶接工場が生み出したバリアフリーなハンドバイク「HBJ-X」

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