見出し画像

黄剛Weibo:今後5年はデジタル経済の時代へ突入:物流サプライチェーンの最新動向(三大産業で今後5年間の傾向分析)④

デジタル経済時代におけるサプライチェーンの変化:生鮮食品(農産物)の産地直送

アパレルがECショッピングの大きなカテゴリーであり、家電製品が将来の5Gスマートライフのアップグレードのための重要な製品群であるとすれば、サプライチェーンにも大きな変化が起きている重要な分野がもう一つあります。それは生鮮食品です。 10年近く生鮮食品のサプライチェーンに携わり、基本的に10年間この業界の発展を目の当たりにしてきました。 記事の長さの制限のため、重要な部分を重点的に分析していきます。

1.農業の工業化
これから農業のトレンドは、徐々に工業化生産に向かい、ますます集約化されていくに違いありません。野菜温室、規格化された果樹園、立体農園、近代的な養鶏場、高密度な養殖場などが、至るところで誕生しています。大規模農業、標準化された生産、ブランド化されたオペレーションを実現してこそ、製品の競争力が生まれるのです。例えば、「レタスの王様」と呼ばれる馬鉄民は、KFC、マクドナルド、バーガーキング、シーベッドなどの企業にレタスを全面的に供給しており、全国の主要都市に生産拠点を持っています。正大食品は全国の主要都市に養殖場を持ち、鶏肉と卵を多くの町へ直送しています。

したがって、現在の生鮮食品の物流、特に「爆発的に売れる製品」を大規模生産する企業においては、各々の産業にあるサプライチェーンのモデルを理解し、製品に特化した個別対応の物流・サプライサービスを提供しないと未来がないとも言えます。

2.農産物の直接発注と産地直送
かつて、高品質の農産物の将来はターゲットを絞った品種改良、特別な供給モデルであると予言したことがあります。将来的には、農業生産地の一部は都市の高品質な消費者に新鮮な農産物を供給するために向けられることになるでしょう。農産物は最初に購入予約され、需要に応じてリアルタイムに供給されます。それを実現するためには、効率的で機動的な物流と供給体制が必要です。更に細分化すると、下記2つのサービスになります:

① 将来、都市流通を担う一部の物流企業は良い市場セグメントを構築するために、都市周辺の農場を確保し、産地から直接新鮮な農産物サービスを提供していきます。同時に、新疆特級品の牛肉と羊肉は北京周辺や天津、河北へ、無錫、蘇州は江蘇、浙江、上海などをカバーするなどの形で、遠方産地の物流中継サービスを提供することになるでしょう。

② ワンピースの発送、全国の高速物流サービスは言ってしまえば、順豊が長年提供してきたサービスです。陽澄湖の毛ガニ、長安湖の太頭魚、四川省雅江と雲南省シャングリラの松茸など、効率的で機動的な物流システムを稼働させています。

3.大型ネットプラットフォームが徐々に実体農業の世界に浸透していく
将来の大規模なインターネット・プラットフォームはすべて、実体産業と深く連携し、産地側の実体農業に投資を進めることになると私は予測しました。盒馬にしろ、美団にしろ、拼多多にしろ、今後安定した供給を受けるためには、こうした大きなプラットフォームが上流に関与していく必要があります。大型ネットプラットフォームが農業用の大型施設、大型立体農業、標準化された品種改良に投資し、市場予測に従って生産する可能性は否定できません。
 
今後の発注ベースで生産する農業のサプライチェーンモデルは、必ずしも一般消費者による注文で動くわけでもなく、プラットフォームによる注文で生産する形になる可能性もあります。

4.セントラルキッチンがリードする新型サプライチェーンモデル
2021年はSNSインフルエンサーによる外食業界の宣伝効果が絶大であり、インフルエンサーを看板にしたタピオカミルクティーなどもブームになっています。単なる今の流行りにも見えますが、ここで裏側の仕組みも考えてみましょう。外食業界の新しいトレンドの裏には、農産物のサプライチェーンの変革が支えとなっています。全国の大手外食チェーンは「インターネット側のセントラルキッチン」を作り始めていて、自社に限らず社会全体に対して幅広く供給しています。例えば、海底撈グループの上流サプライチェーン組織である蜀海供应链は中国全土の中核都市圏でセントラルキッチンを作りました。そのうち8割ほどは、海底撈グループのほかにも3000店舗程の外食チェーン店などに供給しています。

これは何を示唆しているのでしょうか。このようなサービスは、上流の農産物サプライチェーンとの整合性を向上させてくれます。データから見てみましょう:中国の外食業界は毎年3万憶元以上の売上を達成している一方で、食材購買額も8000億元に増加しています。しかし、仲介業者などの「つなぎ」が多数介在しているため、サプライチェーンが長くなりすぎてしまい、非効率さが大きな問題となっています。

大手外食チェーンの自社キッチンだけでなく、SNSインフルエンサー主導の外食やテイクアウト、デリバリー専門店なども標準化を進めています。老乡鸡(安徽省ご当地ファストフード)、水煮鱼(魚の唐辛子煮込み)とご飯、持ち帰り注文の小鉢、红烧肉(豚バラの醤油煮)などの料理を注文しても、店頭で注文当日に作られていると思われているでしょうか?違います。すべてセントラルキッチンで予め調理されたものが店舗で簡単に加熱処理され、デリバリーサービスで届けられています。考えてみれば、毎日たくさんのお店からの注文がある中で、この標準化された製造工程がなかったら、競合に負けてしまうでしょう。
 
海外でも二つの事例がありますので、見てみましょう:
 
1)米国カリフォルニア州のTaylor農園の仕組み:Taylor農園は、800か所の農園+セントラルキッチン+全チャネルのエンドユーザーへ販売するモデルを構築しました。米国で主要都市に供給されるレタスは、この会社が担っています。

2)韓国のレタス工場:原産地より直送+AI工場+全チャネルへの販売
韓国最大手のレタス工場です。おそらく韓国の都市部住民が食べているレタスはすべてここで作られています。セントラルキッチンで加工し、フラットなサプライチェーンで運営しています。上流側には水耕栽培の工場もあり、需要に併せて必要な量だけ生産できるようになっています。

以上の事例から、今日の生鮮食品のサプライチェーンは、大きな変化を遂げつつあることがわかります。特にデジタル経済の時代には、農産物の産地からの直接供給、都市のセントラルキッチン、コールドチェーン物流への迅速な対応を原動力とした新しいビジネスモデルが、新しい産業となることでしょう。したがって、農産物物流やコールドチェーン物流の企業は、新しいトレンドを明確に認識する必要があります。

まとめ

上記の3つは、衣料品、家電製品、生鮮食品を表している代表的な事例であり、いずれも人々の暮らしに密接に関係しています。同時に、デジタル経済の流れの中で、伝統的なビジネスが新しい小売や新しい消費へと急速に変化している産業でもあるのです。過去15年間のEC業界の成長をみると、インターネットによって最も早く変化している産業でもあります。
 
共通点をまとめてみました:
三大産業のトラフィックは急速に変化し、集中型から分散型に変わり、脱プラットフォーム化が進んでいます。言い換えれば、どこで取引するかは問題ではなく、「誰が好きか、誰が信頼できるか、誰が信用できるサービスを提供してくれるか」がより重要なのです。
 
スニーカー企業の鸿星尔克は、その善行によって多大な支持を得て、独自のブランドトラフィックを作り、古くからあった国産ブランドを活性化し、あらゆるチャネルでの販売を動かし、製造やサプライチェーンの変革を推進しました。
 
家電業界では、取引場所は関係なく、価格が透明で、誰が取引のためのサービスを行うか、特に総合物流サービスの配送・設置がより重要であることがわかります。各社が提供されているサービスではありますが、各々の体力や達成度が異なることが今回の評価で明らかになりました。京东はいつものように安定したサービスを提供し、国美安迅は予想外ですがやるべきことをやっている程度なので、厳密に言えばまだ改善の余地があると見受けます。そのため、この領域ではまだまだ成長の可能性があるとも思われます。
 
生鮮農産物の変化:一方は4億人の農業従事者の生存に関わり、他方は14億人の日常生活に関わります。信頼による経済体系の再構築は、農産物、特に高品質の農産物の従来の商業流通のあり方を一変させました。セントラルキッチンの普及により、農業のサプライチェーンは新たな変革を遂げました。
 
現在、デジタル経済は始まったばかりで、2021年は「デジタルチャイナ」元年と言われています。どの業界も変化を育み、その変化があるからこそ、不確実性やチャンスも生まれます。その動向を見ながら、従来の国産ブランド、従来の国産品、物理的な製造や物流サービスが、新しい経済に完全に統合されつつあることを最も嬉しく思っています。鸿星尔克、国美安迅などたくさんの小売り店舗を持つ従来型企業の古いブランドが若返ることで、インターネットの波の背後に新しい芽を出す老木を見ることができるのでしょう。

この記事は、毎年行っている数少ない業界分析の一つで、物流に始まり、ビジネスの流れを見る、サプライチェーンを見る、そしてニューエコノミーの新しい分野を見るという3つの重要な業界を取り上げたものです。 今の物流業界の起業家や実務者は、このような視点で未来を見ると、また違った何かを得ることができるかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?