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週末に、さくらんぼ農園で“いっくど”働いてみた!

農業現場の人材不足が深刻化する中、注目を集めているのが、全農グループが取り組む労働力支援事業。
そこで、昨年から山形県でスタートした労働力支援事業の「さくらんぼ収穫プログラム」を、全農グループで働く
職員& 社員が体験!実際に、“いっくど(山形の方言で一生懸命の意)”働く、2 人の様子をご覧ください!

体験する、その前に 労働力支援を知ろう!

 労働力支援事業に興味をもったら、まずその仕組みを知ることが大切。解説してくれるのは、実際に労働力支援事業に取り組んでいる、全農 山形県本部 営農企画部 営農支援課 佐藤大輔さん。さくらんぼの産地で実施している労働力支援事業の仕組みや取り組みを教えてくれました。

Q1. そもそも、労働力支援事業とは?

 人手不足に陥っている農業現場に、別の産地や業種から短期的に人員を確保し、支援する取り組みです。
元は、かぼすの産地である大分県で始まった事業であり、この大分県のビジネスモデルを参考に、昨年から全農 山形県本部と株式会社JTBの共同事業としてスタートしたのが「さくらんぼ収穫プログラム」です。

 さくらんぼは、実がなると一気に収穫をしなければならず、短期的に多くの人手が必要になります。これまでさくらんぼ農家では、収穫時期に近隣や親戚などに手伝ってもらうことが恒例となっていましたが、近年は高齢化が進み、人手不足が深刻な課題となっていました。

 そこで多様な人材を確保するべく始まったこの事業では、全農山形県本部が主に、作業の委託を希望する農家さんのニーズなどを取りまとめ、農作業受委託の契約事務代行を行い、全体のコーディネート役として機能します。
JTBは異業種も含め、広域で多様な労働力を確保してシフト調整を行い、受託した農作業を完遂する役割を担っています。そして、参加者が雇用契約を結ぶのは、農家さんではなくJTBであることも特徴です。契約に関する事務手続きや連絡などもJTBが請け負うため、農家さんは、労働者に対する事務処理や連絡、賃金の支払いといった手間を省くことができます

 また参加者は、農作業の経験が無くても問題ありません。現場では、3〜4人一組のチームで動き、作業経験のある参加者が必ず入り、指示や指導をしてくれます。そのため、農家さんは、農作業に慣れていない初心者に一から教える時間や労力が省ける上、その分の時間を自分の作業にあてることが可能。参加者にとっても、チーム内にサポートしてくれる心強いメンバーがいるので、作業をスムーズに進めることができます。

Q2. この仕組みを活用するメリットは?

 労働力支援事業の特徴的な仕組みに、報酬・賃金体系が挙げられます。

 農家さんは、参加者が収穫し、箱詰めをした製品を1㎏あたりで換算し、出来高分の料金をJTBに支払います。そのため、農作業がはじめての参加者が来ても、その成果に見合った料金が発生するようになっています。一方、参加者の賃金は出来高ではなく時給制。農作業に慣れていなくても、労働した時間分の賃金を受け取ることができます

 これは労働力支援事業独自のシステムであり、JTBと全農が仲介することで、農家さんは出来高払い、参加者は時給制という仕組みが成り立っています。
 また、常時雇用ではなく、シフト制という点もポイント。農家さんは繁忙期の人手が足りない時だけ、希望の人数に見合った作業を委託できます。参加者も労働日数を1日単位で選べるため、副業として参加したり、学生や主婦(夫)の方が、時間がある時に働いたりすることも可能です。

Q3. どうやって人材確保をしているの?

 今年度は県内だけでなく、県外からの人材確保にも力を入れています。その取り組みの一つが、産地間連携による人材確保です。農林水産省が主宰する「農業労働力産地間連携等推進事業※」を活用し、繁閑期の異なる九州の産地と連携。実際に6月からの約1か月間、福岡県・大分県をはじめとする九州地方の参加者に、さくらんぼの収穫や選果、箱詰め作業を支援していただきました。

 さらに、もう一つ新たな取り組みが、企業間連携における人材確保です。日本航空株式会社と全農山形県本部、JTBが連携協定を締結。客室乗務員や輸送貨物などのスタッフが業務の一環としてさくらんぼの収穫や箱詰め作業に従事。その対価として、JTBがJALに業務委託費用を支払うというかたちを取っています。企業間での業務委託とすることで、社員の副業などが禁止されている企業からの人材支援が可能となった好事例となっています。

※農業労働力産地間連携等推進事業……他産地・他産業との連携による労働力確保をサポートする補助金制度。

さくらんぼの収穫・選果・箱詰め 労働力支援体験レポート


 普段、農業現場に関わることのない業種で働く四方さんと上瀧さん。「ほかの業種の現場を見てみたい!」と語る2 人は、はじめての収穫作業にドキドキ、わくわくの様子。今回は、山形県天童市にあるさくらんぼ農園「たきぐちファーム」に1日お世話になります!

果肉が柔らかく“うるむ”前に一気に収穫!

 さくらんぼ収穫プログラムの作業時間は、
①5時半〜12時、
②8時半〜17時
の2パターンから選ぶことができます。
 今回2人が参加したのは、②の8時半スタートの回。
さくらんぼは、気温が上がると果肉が“うるみ”(実が柔らかくなること)、品質が劣化してしまうため、収穫作業は涼しい明け方からお昼くらいまでに行います。
 農園に到着すると、まずチームに分けられます。四方さんと上瀧さんは、この作業に入って4日目という経験者2人と4人一組のチームとなり、圃場へ移動。到着すると、木にたくさんなっているおいしそうなさくらんぼに大興奮!
 この労働力支援では、農家さんが参加者一人ひとりに指示を出すのではなく、参加者同士で助け合いながら作業を進めるのも特徴。そのため、現場のリーダーが四方さんと上瀧さんに、摘み方などを指導してくれます。初心者の2人は、あっという間に収穫作業をマスターした様子。朝は、たくさん木になっていたさくらんぼが、次々と収穫され、開始から約3時間半が経った頃には、葉っぱだけの状態に。担当した2本の木のさくらんぼを4人で全て収穫することができました。

意外と難しい!?さくらんぼの選果作業

 1時間半のお昼休憩をはさみ、午後からは収穫したさくらんぼの選果と箱詰め作業に取りかかります。山形県には、品質とブランドを守るために設けられた「山形県青果物等標準出荷規格」があり、選果作業をする際もこれらの規格が基準となります。
 さくらんぼは主に横径サイズと着色で等級が分けられます。サイズは、専用の基準プレートを使って計測をしますが、着色については目視で果実着色割合を確認します。今回、四方さんと上瀧さんが一番難しかったというのがこの作業。判断が難しい場合は、経験者の2人に確認しながら作業を進めます。とはいえ、作業終盤にはしっかりコツをつかみ、てきぱきと選別とパック詰めを行っていました。さくらんぼをパックに並べる作業も手慣れた様子です。
 そして開始から約3時間でさくらんぼの選果&箱詰め作業を完遂。最後に農園の担当者が検品をした結果、4人で45 ㎏分の製品を作り上げることができました。

「さくらんぼ収穫プログラム」を終えて

四方 無事終わったね〜! おつかれ様でした。
上瀧 大変だったけど、純粋に楽しかったです。四方さんはどの作業が大変でした?
四方 やっぱり選果作業かな。自分の判断が合っているのか不安で、リーダーに何度も確認しちゃいました。
上瀧 私も同じです。経験者のお二人が初心者の私たちに丁寧に教えてくれて本当にありがたかったです。
今回はじめて農作業を体験して、自分には見えていないことや知らないことが、まだまだたくさんあると
実感しました。でもこれは、経験したからこそ気づくことができたんだと思います。
四方 僕もこういった現場ははじめてでしたが、実際に働くことで、労働力支援事業の仕組みなども深く理解
することができました。また機会があれば、参加したいです!
上瀧 私もまた必ず、参加します!

農家さんの声も聞いてみました!

株式会社たきぐちファーム 代表取締役 滝口征司さん

 山形県では、農業従事者の高齢化が進み、人手不足が本当に深刻な状態です。我々の農園では、この労働力支援事業に、昨年から作業委託をしています。もちろん、自分たちで作業員を直接雇うよりも、作業委託をするほうが多少コストはかかりますが、参加者への連絡や事務処理などを全農さんやJTBさんが請け負ってくれたり、現場では最小限の指示だけで作業を進めてくれたりなど、それ以上に大きな価値を感じています。それに生産者側にとっては、出来高で料金を支払うという仕組みはとてもありがたいですね。
 

全農グループ広報誌「Minorinote」


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