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高齢化と人手不足により放置・廃棄されるかぼすを救いたくて「ニッポンエール 大分県産完熟かぼす」を商品開発しました。

こんにちは。JA全農 広報部 note編集部員のKです。
突然ですが、みなさまは「完熟かぼす」をご存知でしょうか?

現在、農業現場で深刻な問題となっている生産者の高齢化と人手不足の影響を受けている果実の一つが大分県の名産「かぼす」です。焼き魚や飲み物にキュッと絞ると爽やかな香りで料理を彩ってくれるかぼす。通常は緑色の状態で流通して使われますが、完熟するとレモンのように黄色になります。これが「完熟かぼす」です。 

しかし、この黄色くなった「完熟かぼす」は傷みやすいためほとんど流通できていません。大分県内のかぼす農家では、高齢化や人手不足が原因でかぼすを緑色の時期に収穫しきれずに、黄色くなった完熟かぼすが畑に放置・廃棄されるという問題が発生していました。

廃棄されている完熟かぼすを生産者の所得につなげるため、全農は完熟かぼすの商品化を検討し、(株)伊藤園とともに飲料「ニッポンエール 大分県産完熟かぼす」を開発しました。今回はその商品開発の担当者に、かぼす産地での課題や商品開発にかけた想いをインタビューしました。

登場人物

上野さん

(株)伊藤園 マーケティング本部 上野 大輔
野菜や果汁飲料の商品企画を担当。これまでに多くの商品に携わってきた。


内田さん

JA全農 営業開発部 内田 貴子
国産農畜産物を使用した商品営業・開発に携わる。

高齢化や人手不足により廃棄されるかぼす

部員K:産地でかぼすが廃棄されているという課題があるとききましたが、何故廃棄が起こっているのでしょうか?

内田:かぼすは通常、緑色の果実が出荷されスーパーに並びます。黄色く完熟したかぼすは傷みやすく広域での流通が難しいため、産地である大分県内での限られた消費になってしまい、地元で使いきれない分は収穫されないまま放置・廃棄されてしまうこともあるんです。かぼすは現在でも収穫が全て手作業なので、高齢化や人手不足により収穫が間に合わずに完熟してしまうケースも多く、長年課題となっていました。

かぼす畑

一方で、熟したかぼす「完熟かぼす」は甘みが増し、酸味が控えめになるといった特長があります。かぼすの生産量を維持していくためにも、全農として完熟かぼすを活かした商品開発を進め、需要の拡大に努めています。

上野:かぼすを使った商品を扱ったことはありましたが、「完熟かぼす」の存在は全農さんから聞いて初めて知り、多くの果実が廃棄されてしまうことも伺いました。産地を守るために、この果実を地元だけでなく全国に届けたい、知って欲しいと思ったのが商品開発のスタートです。糖度が増し、酸味がまろやかになるという完熟かぼすの特長は飲料に向いているとも感じていました。

かぼす

かぼすを感じられる飲料「ニッポンエール 大分県産完熟かぼす」として商品化

部員K:完熟かぼすを使って、今回はどんな商品が出来上がったのでしょうか?

内田:伊藤園さんが長年果実飲料で培ってきた技術を活かし、完熟かぼすの清涼飲料水を企画しました。

部員K:商品開発におけるこだわりポイントはどんな部分でしょう?

上野いかに“かぼす”を感じていただくか、という点がこだわりであり苦労した点です。全農さんとはニッポンエールブランドとして宮崎県産日向夏のドリンクも開発したことがあるのですが、日向夏は果実をそのまま食べるので消費者から味のイメージがつきやすい。一方でかぼすは調味料として使う機会が大半であり、そのまま食べることはまずありません。どうすれば飲んだ時に「あ、かぼすだ!」と思って頂けるか、酸味のバランスや甘味の強さを変えるなど、100パターン以上の商品試作を行いました。

部員K:100パターン以上とは驚きです!通常はどの位のパターンを試すのでしょうか?

上野:商品によって様々です。実はこの商品の開発担当者が大分出身で完熟かぼすの存在を知っていたこともあり、一緒になって気合が入りました(笑)。
それでも中々味の再現ができず、産地を担当しているJA全農おおいたの職員に相談したところ、ポイントは「さわやかな香り」だとアドバイスを頂きました。そこで、糖度と酸度の配合バランスを再検討しながら、香気成分が多いかぼす果皮エキスを新たに加えたことで、ようやく思い描く味に近づけることができました。

部員K:なるほど、確かに柑橘を絞る時は皮を下にした方が良いという話を聞いたことがあります。

上野:この商品に限らず、農産物をよく知る地元の方の感覚は大切です。本来であれば産地に直接出向いて話を伺うのですが、今回はコロナ禍の情勢もあり叶わなかったことが、苦労した原因の一つだったかもしれません。その分、「コロナ禍で遠方への外出が難しい消費者の元に、地域の魅力が詰まった果実のおいしさを届けたい」という意味でも気持ちのこもった商品になりました。

背面写真(更新)

こだわりと言えば、少しでもかぼすのことを知ってもらうためにパッケージには特設サイトのQRコードを掲載しました。親しみやすさを求めてご当地のかぼすマスコットの「カポたん」も載せています。お買い求めの際に是非見てみてください。

産地を応援するニッポンエールプロジェクト

部員K:この「ニッポンエール 大分県産完熟かぼす」はニッポンエールプロジェクトの第2弾ですね。そもそもこのプロジェクトはどんなプロジェクトなのでしょうか。

内田:全農の食品ブランド「ニッポンエール」ブランドでは、全国の特徴ある農産物を世の中に届けるべく、商品開発のプロであるメーカー各社と手を取りながら販売拡大を進めています。商品はドライフルーツやグミ、キャンディと様々です。その中でも特に、人手不足や高齢化などの課題を抱える産地を応援したいという気持ちを込めて始めたのが「ニッポンエールプロジェクト」です。

上野:伊藤園側としても、飲料などの原材料となるお茶や野菜・果実を通じて農業とは密接な関わりがあり、産地を応援したいというこのプロジェクトに共感するものがありました。生産者が愛情を持って育てた農産物の良さを、商品を通じて消費者にお伝えすることで、産地振興に繋げたいと考えています。

地元に眠る「掘り出し物」を商品展開することで産地の力にもなる

部員K:今後の商品開発について教えてください。

内田:今回の完熟かぼすのように、流通に向かない・規格に合わないなどの理由で魅力を活かしきれていない農産物はまだまだあると思っています。今後もそうした農産物に焦点をあてて、全農ならではの商品をメーカーと連携して開発することで、産地の力になっていきたいです。

上野:原料確保の観点からも、農産物の産地振興は非常に重要です。果物に限らず野菜を使った商品も作れたら面白いと考えています。引き続き全農さんと協力して、今回の完熟かぼすのような地元に眠る「掘り出し物」を全国に送り出したいと思います。

上野さん&内田さん

内田:日向夏や完熟かぼすは通年確保できる農産物ではないため、季節毎に商品を変えることで、年間を通じてニッポンエールのブランド商品を提供していく予定です。現在すでに開発を進めている商品もありますので、楽しみにしていてください。

「ニッポンエール 大分県産完熟かぼす」は2021年10月4日から、全国のコンビニ、量販店、自動販売機で販売しています。爽やかな味わいを楽しめるうえ、飲んでいただくことでかぼす産地の応援になります。ぜひお試しください。
詳しくはこちら→https://www.zennoh.or.jp/press/release/2021/85779.html