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百鬼夜行 vol.10 開催レポート


- はじめに.

2023年9月16日(土)-17日(日)、『百鬼夜行 vol.10』を開催しました。参加者並びにスポンサーの皆さま、ありがとうございました。

記念すべき10回目の開催となった今回の舞台は、奈良県。古の空気が今も残る吉野エリアを中心に、桜井や橿原を巡りました。当日のレポートを書き留めたいと思います!

- 百鬼夜行 vol.10 備忘録

◉ 旅のしおりはこちら

旅のしおり

◉ 修験道の中心、金峯山寺

国土の7割を山地が占める日本では、古代から山は聖なる場所とされていました。中でも奈良県南部の吉野・大峯や和歌山県の熊野エリアは、古くから山岳信仰の霊地とされ、「山伏」「修験者」などと呼ばれる山林修行者が活動をする場所でした。

こうした日本古来の山岳信仰や神道、そして仏教や道教などと習合し、日本独自の宗教として発達をとげたのが修験道であり、その開祖とされているのが「役行者(えんのぎょうじゃ)」です。

役行者は、7世紀前半に今の奈良県生まれた、様々な験力(超人的能力)を持っていたとされる伝説的な人物。そして、今回最初に訪れた「金峯山寺(きんぷせんじ)」は役行者が創立した修験道の根本寺院とされている場所なのです。

今回の百鬼夜行は、そんな吉野の地からスタートです。

金峯山寺 蔵王堂(国宝・世界遺産)

金峯山寺の本堂である蔵王堂は、国宝であり、世界遺産の中核資産に登録されています。木造古建築としては、東大寺大仏殿に次ぐ大きさを誇るということで、迫力満点です…!

蔵王堂の中には、金峯山寺の御本尊であり、役行者によって感得された権現仏と伝わる「金剛蔵王大権現」がお祀りされています。

役行者は、全国の霊山を開山した後、熊野から吉野にかけての山々に入り修行を33度重ね、最後に金峯山の頂上で一千日間の参籠修行をしました。その結果「天地鳴動し、山上の大盤石が割れ裂けて、雷鳴と共に湧き出るがごとく、憤怒の形相荒々しい姿の御仏がお出ましになられた」といいます。

この御仏が金剛蔵王大権現であり、役行者は「これぞ末法の世を生きる人々の御本尊なり」としてその姿を山桜の木に刻み、お祀りされたのでした。これが、金峯山寺の始まりであり、修験道の起こりと伝えられています。

吉野の山々

さらに役行者は、鬼神を使役できるほどの法力を持っていたといいます。人々に災いをもたらしていた夫婦の鬼(前鬼・後鬼)を改心させ、従えていたという言い伝えが残っています。金峯山寺では、その言い伝えにちなみ、毎年節分の日には、全国から追われた鬼を「福は内、鬼も内」という掛け声で迎え入れ、改心させる伝統行事が行われています。

ZENKIとしては、節分の行事もぜひ体験してみたいものです…!

お昼ごはんは、旬の鮎を食べ歩き

◉ 吉野水分神社・金峯神社

吉野山には、金峯山寺のほかにもたくさんの社寺が存在します。今回は、金峯山寺の他に2箇所の神社を巡りました。

1箇所目は、「吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)」。

吉野水分神社の社殿

水の分配を司る天水分大神(あめのみくまりのおおかみ)を主祭神にお祀りする、世界遺産の神社です。豊臣秀吉が子授け祈願をし、その子である秀頼を授かったことから、子授け・安産・子どもの守護神としても篤く信仰されています。現在の社殿は、その秀頼が慶長9年(1604)年に再建したもので、重要文化財に指定されています。

回廊

中庭があるのが特徴的で、静まり返った境内は夏なのに涼しく、とても美しい神社でした。

そして次に向かったのは、「金峯神社(きんぷじんじゃ)」。吉野水分神社から細い細い山道をさらに山奥へと登った先にある古社です。

「修行門」と書かれた鳥居をくぐり、さらに坂を登る
細い山道の先にひっそりと佇む古社

金峯山の地主の神、金山毘古神(かなやまひこのかみ)をお祀りする金峯神社。創建の経緯などはわかっていないそうですが、昔から生物の枯死を防ぐ神として崇敬されてきたのに加えて、金鉱の山を司る黄金の神としてお祀りされてきたそう。

義経隠れ塔

金峯神社の脇にある坂を下った先には、その昔、追っ手に追われた源義経が身を隠したという「義経隠れ塔」が残っています。追っ手に囲まれた際、屋根を蹴破って逃げたことから「蹴抜けの塔」ともいわれているそう。

車でもなかなか辿り着くのが難しいほどの山奥に位置する金峯神社。まさに修験の空気を感じる、とても味わい深い場所でした。

◉ 夜の宴

吉野巡りの後は、買い出しをして、宿泊先のゲストハウスに移動。今回は、食材とお酒をたらふく買い込み、ゲストハウスで自炊しての宴です!オランダから旅行で来日中というご夫婦もいらっしゃり、とても賑やかな夜になりました!

▼宿泊したゲストハウスはこちら

夜の宴!

古民家をリノベーションした建物は掃除が行き届いており清潔で、キッチンには調理器具がかなり充実していて、居心地のよいゲストハウスでした。何より、オーナーのお人柄が素敵で、気持ちよく滞在することができました。

◉2日目の朝も、神社参拝から

翌日は「丹生川上神社 中社(にうかわかみじんじゃ なかしゃ)」の参拝からスタート。本来一社であった丹生川上神社ですが、歴史の渦に巻き込まれ、江戸から大正時代にかけて三社になったそう。今回は、丹生川上神社の中社を訪れました。

丹生川上神社 中社

初代・神武天皇は、苦境の中「丹生川上」を訪れ、この地で天神の教示を受け、後に畝傍橿原で即位されたと神話では語られています。この故事にちなみ、歴代天皇は苦境に立つと必ず吉野を訪れ、神様の力をいただいていたといいます。その事に奉謝して創建されたのが、丹生川上神社のはじまりです。

境内にある「叶の大杉」

ご祭神「罔象女神(みづはのめのかみ)」は、イザナギ・イザナミの御子神で、水を司る神さま。境内から少し離れたところには、「東の瀧(ひむかしのたき)」とよばれる瀧があり、そこには龍神が棲むといわれているそう。

東の瀧

早朝の神社は、気持ちがいいものです。古の空気が漂う、素敵な神社でした。

◉「大淀焼」陶印づくり体験

次に向かったのは、吉野・大淀町の里山で作陶をされている、松林玄衛先生の工房。松林先生は、吉野の土を使った味わい深い器をつくられている、陶芸作家さんです。縁あって、工房にお邪魔させていただきました。

窯元「大淀焼」

今回は先生のご厚意で、陶印づくりの体験をさせていただきました!「陶印」とは、器などの作品に入れる、いわばサインの役割の印です。

まずは先生のレクチャー
石膏の板に、思い思いの印を掘る
掘った印に土を詰めて
完成!

はじめての体験に、皆集中して時間を忘れるほど熱中し、あっという間に1時間が経過。それぞれの陶印は、どれも味わいがあって、それぞれの個性が滲み出ています。焼き上がりが楽しみです。

◉日本最古の神社、大神神社

吉野を後にし向かったのは、桜井エリア。日本最古の神社とも言われる「大神神社(おおみわじんじゃ)」です。

大神神社

ご祭神は「大物主大神(おおものぬしのおおかみ)」。大神神社の創祀については、『古事記』や『日本書紀』にも記されています。『古事記』によれば、大物主大神が、国造りの神さまとして知られ出雲にお祀りされる「大国主神(おおくにぬしのかみ)」の前に現れ、国造りを成就させるために「吾をば倭の青垣、東の山の上にいつきまつれ」と三輪山に祀まつられることを望んだ、と記されています。

御神体は三輪山そのもの。そのため、大神神社にはお参りをする拝殿があるのみで、本殿がありません。

拝殿

参拝に訪れた方々で、境内はとても賑わっていました。さすが日本最古の神社です。

昼食は名物の「三輪そうめん」

◉建国の聖地、橿原神宮

大神神社から車で20分。最後に訪れたのは、日本建国の地「橿原神宮(かしはらじんぐう)」です。

橿原神宮

神話によると、アマテラスの子孫である「神日本磐余彦火火出見天皇(かむやまといわれひこほほでみのすめらみこと)」が、豊かで平和な国造りを目指して天から降臨し、九州高千穂の宮から東に向かい、奈良・畝傍山(うねびやま)東南の麓にて、第一代「神武天皇(じんむてんのう)」として即位されました。

それが紀元元年、今からおよそ2,680余年前のことです。そしてこの地に、橿原宮が創建されました。

初代天皇が即位された場所。ロマンが溢れます…!

境内

たくさんの場所を巡った奈良の旅。これにて百鬼夜行 vol.10 は終了です。

- おわりに.

古代の伝説、そして神話の世界に想いを馳せながら巡るも奈良。今回も、とても趣深い旅となりました。

個人的に奈良は何度も訪れたことがある大好きな場所ですが、背景を知り、歴史に想いを馳せ、語らい合いながら巡る奈良は、いつもと違う特別な感じがして、とても良い時間を過ごすことができました。

次回の舞台は鹿児島県。数々の神話が残る九州にZENKI上陸します!次回もどんな発見があるのか、とても楽しみです。