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【火の鳥復活編】これは人間なのか?人類への警鐘!AIに恋をした人類の末路…

今回は「火の鳥復活編」をご紹介いたします。

これは凄まじい作品です!
火の鳥の中でも鳳凰編、未来編に並ぶ人気作のうちのひとつで
これを読んでおかないと火の鳥は語れないほどの名作中の名作

ドラクエで例えると最高傑作とも言えるスリーです。スリー。

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あ、スリーは未来編かな?鳳凰編かな?



だからフォーかファイブですかね。
たとえが良くわかんないかもしれませんけど
ドラクエ好きな方ならどれほどの作品なのか分かってもらえたかと思います。。。

しかも火の鳥だけでなくSFという大きなジャンルで見ても
SFマンガの最高到達点ではないかと思えるほどに完成度の高い作品です
それくらいの凄まじいSFマンガと言っても決して過言ではありません。

この先ロボットとの共存を迎える我々人類にとっては
非常にメッセージ性も強く
読めば必ず膝の震えが止まらないほどの衝撃を覚えます。

自分が近未来へ進んでいくという方は
絶対に読んでおいた方が良いマンガです。
つまりこれは全人類必読書であるということなんです。

そしてそんな金字塔漫画を今回解説するわけですが
はっきり言ってどこから解説していいのかさっぱり分かりません。
テーマも多いし深いし複雑だし
何から手をつけていいのか分からないくらいすんごいことになってます。

本当は説明してはいけない漫画なのかもしれませんが(笑)

手塚治虫が示した人類の進化論
今回はその断片だけでも解説してみようと思いますので
ぜひ最後までお付き合いください

それでは行ってみましょう。

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まず火の鳥復活編とは最終巻である未来編の2つ前のお話なのですが
本作の約100年後に位置する「宇宙編」を飛び越えて
未来編近くの話と行ったり来たりするストーリーになっておりまして
本作だけでも1000年近いスパンの物語が展開する
とてつもないスケールで描かれています。

ちょっと難解なんですが最後には「マジか~!」って繋がる
圧倒的な伏線回収劇が盛り込まれているので
ここまで順番に火の鳥を読んできている方なら
アゴが外れるくらいの感動と衝撃間違いなしです。


それがこの「復活編」最大の魅力です。

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それではストーリー追っていきましょう
西暦2482年
いきなり主人公レオナが、交通事故により死亡するところから始まります。
一旦は死亡するも再生医療によりレオナは「生き返り」ます。

しかしレオナが目を覚ますと、そこにはおかしな景色が見えるんです。
人間ではないものが言葉をしゃべり、
人間が一人もいない世界だったのです。

一体この世界は何なんだろう。

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そこへ一人の人間の女性が突如現れます。

目を覚ましてから初めて出会う人間なので
追いかけ話しかけてみると
彼女は自分は「ロボット」だと言うんです。

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「???」 …何が何だか分からないレオナ

実はレオナは手術により脳も含めて体の大半を人工物と交換した後遺症により生物が無機質の塊にしか見えなくなり
反対に人工物が生物に見えるようになってしまったのです

ですので見かけたこの女性
実際はただの作業用ロボットなんですけど
レオナには美しい女性に見えてしまっているのです。

そして
ついにはその作業用ロボットにをしてしまうんです。

周囲からは狂った目でみられ
レオナは、はたして自分は人間なのかロボットなのか悩みます。

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体の大半を人工的なものと交換されたけど心は人間
だけど周囲からは人間ともロボットともとれる扱いを受け
戸籍まで外され、実際は死んでいることになっている。
自分の目の前では
醜い遺産相続問題すら勃発しカオスな状況…。

人間と機械との曖昧な境界線で生き返ったレオナは
何が人間の本当の姿なのか苦悩していくのであります。



一方、別の時系列ではロビタが「自分は人間だ」と主張します。
ロビタと言えば火の鳥における人間に愛される未来のロボット
このロビタが「私は人間だ」って言いだすわけですよ。

人間には逆らえないはずのロビタが
自我を持って発言、行動していきます。
シンクロするように世界中にある作業用ロボットロビタも
次々と自我に目覚め始めていきます。
そして臨界点を迎えた先にとんでもないことが起きてしまいます。

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ここから
科学の領域を踏み越えて「人間とロボット」
今でいうAIと人類の共存におけるドラマがダイナミックに交錯していき
最後には「ロビタ~~~~!」って叫びたくなる
スペクタクルな展開を迎えるわけであります。

そして読者全員が興奮度MAXに到達するラスト
というのが本作の大枠のストーリーとなっています。


マジですごいですからね、
このラストは!

毎回言ってる気がしますけどこの火の鳥はもうエグイ!
これを見るために火の鳥を見てほしいといっても過言ではありません。

過去のエピソードとのつながりが徐々に明らかになっていきますし、
シリーズとの関わりに益々深みが濃密で濃厚になっていきます。

なんせあの「ロビタ誕生の秘密」が明かされますからね。

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そんな見どころ満載の火の鳥「復活編」のポイントでありますが
考えさせられる要素としては、恐らく火の鳥最多だと思います。
ざっくり考えてみてもこのくらい浮かび上がります
もうマンガの枠を超えたテーマがてんこ盛り(笑)

●ロボットと共存する未来
●人間とロボットとの恋愛
●人間の定義とは(半分は人間?ロビタは人間?)
●人間臭さとは
●目に見えない世界が正しいのか
●何をもって死と言えるのか
●命の再生に手を加えるべきか

等々…まだまだありますけど
本当に挙げればキリがないほど重厚なテーマが内包されています。

故に、本作は読み解き方がかなり難しいし
読んでいるうちに何が正しいのか訳わからなくなってしまうので
最高傑作に挙げる人も多い反面、
意味不明という二分した意見が出ちゃう作品でもあります。

そこで今回は思考の袋小路に陥って仕舞わないように
あえて3つに絞って解説してみます。

その3つとは

①人間とロボットの恋
②何を以て死と言えるのか
③人間臭さとは

この3点です。
最低限ここさえ押さえておけば復活編を楽しめると思います。


まずはひとつめ


①人間とロボットの恋

本作の主人公レオナは、交通事故により死亡、
そして体の大半を人工的なものと交換され「生き返り」ますが
これによって有機物と無機物の違いが分からなくなってしまいます。
有機物、生命体は歪んで見え、
無機質なものが清らかなものに見えちゃうんです。

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これは深いテーマですよ。
目に見えるものを否定する描写
単なるロボットに恋をしてしまうという浅はかなメッセージに留まらない
虚構の美しさへの提言

一見すると人間が醜い生き物だからそう見えると
捉えてしまいがちですが
犬までもが歪んで見える描写がありますので
これは目に見えるものと解釈する方が正しい解釈だと思います。

実際に目に映る世界は虚構で「○○」から見た本当の景色とはこうだ。
といわんばかりのメッセージのようです。
じゃあこの「○○」ってなんなんだろうって話なんですけど

これは人間とロボットとの境界線ということが言えるでしょう。

ここでは「人間とロボットとの恋」に絞って掘り下げますが
実はコレ、ボク的には非常に恐ろしいことだと思っています。


どうしても主人公目線で読んでしまうので
愚かな人間は醜く見えて、ロボットは純真で美しいと解釈してしまいますが
手塚先生は「人間は愚かだ、だけど美しい」という生命讃歌、人間賛歌を
描いているのではと思われます。

この「火の鳥復活編」というのは単なる
人間とロボットとの儚い恋の物語ではないという訳です。


レオナにはロボットは清らかな美しい存在に見えています。

自分の思い通りになるロボットは、
一緒にいると楽しいし励ましてもくれるし自分好みの女性にもなる…
これって最高だし
そんな人がいたら間違いなく恋に落ちちゃいますよね

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ゆくゆくは抱きしめたくなるし結婚もしたくなるでしょう。
でも、その先には絶対に進めないんです。
人間はロボットと恋に落ちても悲劇しか生みません。

つまりこれ(ロボットとの恋)は
子孫を残すという種族の生存本能を否定する行為になっちゃうんですね。


火の鳥シリーズを通して描かれる「生命」「種の存続」
受け継がれる系譜で見ると
引き継がれないものは否定の対象なのです。

異形なものとの関係は成就しない
これは手塚作品の中でも結構出てきます。

「るんは風の中」という作品ではポスターの中の女の子に恋をするんですけどもちろん最後はハッピーにはならない

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「やけっぱちのマリア」に至ってはダッチワイフですからね。
もちろん成就しません(笑)


現に本作ではさらっとここら辺の伏線がボスと呼ばれるランプでも描かれています月の上で住むランプはアンドロイドの女と暮らしており
アンドロイドは
「私にできないのは子供を生むことだけよ」と言っています。

アンドロイドは寂しさを紛らわすだけの存在として描かれており
「生命」と「種の存続」については否定されているんです。

つまりは科学の領域を飛び越えて「生命」に細工をしたとしても
人間以外のものとは紡いでいけないということです

実際
体と脳が半分だけ人工物になったレオナは
本来は人間として扱われるはずがそうはなっていません。
半分だけの人間、
ハーフアンドハーフは人間じゃないとして描かれているんですね。

再生医療を施した博士はレオナに対し「君は人間として生き返った」と言っていますが人間なのかロボットなのか分からないレオナは

「人間かロボットかはっきりさせてくれ!」との叫びますが
博士は答えが出せず黙り込んでしまいます。

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これはつまり人間と機械のラブロマンスのようで
本質的には機械同士の愛情劇ということになります。


現に最後はレオナの意識だけがチヒロと融合でき
新しい生命体ロビタの原型に繋がるラストを迎えるわけですが
これは異形との交わりを否定しています
ロボットはロボットと結ばれる
人間は人間でしか結ばれないという答えです。


ロボット同士の恋物語を描きながら
人間とはなんだを痛烈に問うてくる手法はさすがですね。

そしてロボット目線からみた人間は醜くいものであるという描写は
人間自体が段々と無機質なものになっていってるよという警鐘にもなっていますね

ほんと凄まじいメッセージをぶっこんでくるなぁって
思います。ほんと…。

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そして
ロボットとの恋なんてことは、この先何年後かには
確実に起こりえる未来ですからね
むしろAIに恋をしてしまうなんてことは現代で
すでに起こっていても不思議ではない世の中になっています。

手塚先生は、それらが進んでしまうと、
ある種の人類滅亡に繋がる重大な問題になり
めちゃくちゃ危険なんだよという
命を操作しようとした未来へのアンチテーゼを描いているのだと思います。

人間って本当に必要なの?
思い通りになるんなら恋人も人間じゃなくてもいいじゃない?
という思想に対してパンチを喰らわしているんですよね。

面倒なことをすっ飛ばして
合理的に物事を進めていった結論は果たして正しいのだろうか。
実は一点の曇りもない未来を求めてもそこには未来はなくて

人間とは醜くも生きていく
人間性を失ってはいけない
人間として生きる上で醜くても辛くても這いつくばってでも生きていくこと

それこそが人間の美学
人間の本来の姿であるというメッセージを込めているのだと思います。


ロボットに恋をするというのは
大量生産品を好きになるということであり
「そんなもん好きになっちゃいかん!」…という
これが手塚先生のメッセージなのではないでしょうか。


テーマ3つのうちにまだ①人間とロボットの恋だけしか
解説していないのにこんなに長くなってしまいましたので
残りの②③は次回後編にてご紹介させていただきます。

すいません。

次回はこちらでどうぞ。


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