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「だから反対したんだ」と上司に言われた~後知恵バイアス~

このシリーズはわたしが学んだヒトの行動について、行動変容と経済学と絡めて(それを行動経済学という)勉強したことをアウトプットをこのnoteで共有していくものです。

せっかく上司にプロジェクトを実施する承認をもらったのに、プロジェクトがうまくいかなくなったら「だから俺は反対したんだ」と言われたことありませんか?
監督が変わり、世間からは絶対負けると思われていた試合に勝った時、ある人は「絶対勝つと思ってたよ、監督変わったしね」と言っているのを聞いたことありませんか?

今回は後知恵バイアスについて。

後知恵バイアス(Hindsight bias)

人は何かが起きた後で、それが当然の結果だとまでは思わないまでも、あたかも自分は前もってそうなるのではないかと予想していたかのように考えてしまう傾向。

もしわたしを含め、以下のようなことを言っていたら、後知恵バイアスに陥っている可能性があるでしょう。

そんな風に言った覚えはないよ
これくらい、みんな予想できることだよね
だから言ったよね

なぜ後認知バイアスが起きるのか?

何か問題が発生したときに「起こるとおもっていた」と言う人になったことも、聞いたこともあるでしょう。これは後知恵バイアスが働いているためです。

ではこのバイアスはいったい何によって起こるのでしょうか。
このバイアスを初めて体系的に調査したのは、リスクと意思決定理論の研究者であるバルーフ・フィッシュホフ氏により、1975年から行われました。
そこで以下の3つの要素が相互に作用して、物事を実際よりも予測可能なものとして見てしまう傾向があることがわかりました。

1. 認識の要素
人は、現在の結果に対して過去の予測を歪めたり、誤って覚えていたりする傾向があり、現在の出来事や知識と一致する情報を思い出す方が簡単だと指摘されています。
2. メタ認知の要素
ある出来事がどのように、あるいはなぜ起こったのかを容易に理解できる場合、その出来事は容易に予見できたように思いこんでしまいます。
3. 動機付けの要素
ある結果が「必然的」であると信じることは、人にとってひとつの安心材料になります。実際に、「絶対に起こる」と言われるほうが、「たぶん」と言われるより安心します。

この3つのことが発生してしまうと、後知恵バイアスが発動してしまいます。


身の回りの後知恵バイアス

「自分は後知恵バイアスにかかっていない」と思っていても、実は陥っていたということがあります。

📕勉強していて、参考書読んだり先生の言っていることを聞いていて、「やっぱりそうだよな」「これ知っているな」と思ったりする。

しかし、実際の試験で回答できない、ということありませんか?
すでに知っていると思い込んで、勉強を怠ってしまって、実践や試験では使えないということです。

📺ドラマを見ていて、犯人が後半でわかった時に、「ああいう伏線があったから、やっぱり怪しいと思ってたんだよな」と友人に話す。

ドラマを最後まで見終わってみると、最初から自分には犯人がわかっていたと思い込んでしまうことってありませんか?
もちろん実際はそんなことを予想なんてしていないし、今の記憶ですっかり書き換えられているということですね。

⚽️Jリーグで浦和レッズが優勝した。「やっぱり浦和が勝つと予想したとおりだ」と言う。
🎓大学の合格結果発表前日、母親と父親が「受からなかったら大変ね」と心配していた。しかし翌日息子の合格通知が届き、「あなたは受かると思っていたのよ!」と歓喜した。

すべての事象に共通することは、それが起きてから「予想できた」と言っていることです。記憶が塗り替わって、現在の記憶が正しいという人の認知によるものと言えます。

結果がわかってしまうと、後知恵バイアスが働いて「予想していた」「当たり前だよね」と考えてしまいます。

後知恵バイアスが怖いところと対処法

思い込んでしまうことです。
その結果があたかも当たり前で、自分が予想していた通りであると解釈してしまい、深くなぜそうなったのか、因果関係を理解しようとしないことが一番危険なことだと言えます。
(そして同じ失敗や後知恵バイアスに陥ってしまうのです。全然ロジックで考えてないということですね)

なんでそうなったのか、上記の例を用いると「なぜ知っていると思ってしまったのか」「なぜ浦和が勝ったのか」「なぜこの人が犯人だったのか」を考えてみることが後知恵バイアスから得る反省点の活かし方だと言えます。

仕事を例に考えてみましょう。

プロジェクト実施前
上司「君を信じているから、この件は承認するよ。うまくいくよ!」
プロジェクト後
上司「だから俺は反対したんだ。責任を取りなさい」

こんな上司になるのではなく、上司なら上司らしく部下の責任をとるだけでなく、なぜプロジェクトが失敗したか、なぜ自分が分析できていなかったのかを掘り下げて考えることが重要です。

ほかにも、起こったかもしれないが起こらなかったことを考えてみる。例えば「なぜ競合は負けて、なぜ自分たちのプロジェクトが成功したのか」と。実際は起こっていない潜在的な別の結果を思考するだけでも、後知恵バイアスが起きずに、バランスのとれたものの見方ができるんでないでしょうか。

参考リンク


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