ソフトバンクから出資を受けたコロンビア企業 Rappi(ラッピ)について
おはようございます。ダイゼン(@daizennnn)です。
以前にメキシコの配達サービススタートアップ企業について調べた記事を書きました。こちらも参考にどうぞ。
デリバリーといえばUber EatsやDiDiFood、Grab Food、出前館などが有名だと思いますが、Rappiというコロンビアのユニコーン企業もラテンアメリカでは大きなシェアをとっている企業の一つです。
調べていると分かったのが、ソフトバンクもこの会社に10億ドル出資しているんですね。
そのほかにも
・2015年に創業したコロンビア屈指のスタートアップ
・創業から1年後に900万ドルもの出資を獲得
・競合が多いマーケットに切り込み今や9カ国200都市に展開
・現地での課題にも果敢に取り組む
・2019年Bloombergが選ぶ50社に選出
など、注目しないわけにはいかない企業であることには間違いなさそうです。
今回はなぜソフトバンクも注目するのか?なぜ競合とも対等に戦っていけるのか?コロンビアのユニコーン企業、Rappi(ラッピ)について解説していきます。
久々に今回は以下の動画を参考にしました。
Rappi(ラッピ)とは?
洗練されたUI。真ん中に書いているのは「スーパー、レストラン、そのほかにもたくさんオーダーしてね!」という文言。
その下に自分の住所を入れて、地域で使える提携のお店を検索します。
メインとなる事業は宅配サービス。レストランにとどまらず、スーパー、薬局、専門店、お酒の宅配を行います。
また航空券予約サービスや、ライブストリーミングサービス、支払いサービスも事業として抱えています。
いうならばラテンアメリカのGrab!(アリババよりは規模はかなり小さいので)
最初はただのショッピングの配達業者だった
今は大きなプラットフォームを持つまで成長しているRappiですが、創業当時はギグワーカーによる宅配代行業者だったのです。
創業者はシモン・ボレロさん。大学で経営学を専攻し、後に自身でプログラミングを学びRappiの構想を形にしていきました。
182ドルだけを投資し、当時はショッピングの宅配サービスだけにフォーカスし、メッセンジャーとしてギグワーカー達にアプリ経由で宅配オーダーとマッチさせており、2013年に創業したGrabilityというオンライン上のスーパーというサービスから着想を得て、サービスを開発していきました。
今ではgrabilityの提携としてもRappiがダウンロードできるようになっています。
参考:grabilityサイトより
その後2016年Y Combinatorというスタートアップ専門に投資をする会社を通して投資を募ることにしました。
その時に160もの投資案が集まり、結果的に35件のオファーを受けることなり、900万ドルが集まりました。
FacebookやAirbnbに投資しているAndresen Horrwtzさんによる投資を受け、Rappiはさらに成長を続けていきます。
2018年、2億2000万ドルの投資を獲得し、コロンビアで2番目に大きいユニコーン企業へと成長していきました。(1番目はアビアンカグループの LifeMilesという会社)
ここまでで巨額な投資を獲得し、徐々にRappiのメインとなるビジネスモデルも確立していきました。
当初はショッピング専門の配達の仲介を行っていましたが、徐々に規模を拡大させ、レストランやスーパーの購入にも対応するようにビジネスを広げていきました。これが今知られているRappiのメインのビジネスモデルです。
ユーザーの声を聞き続けた結果
大きな投資を獲得したRappiですが、利益追従だけでなく、ユーザーの声を拾い上げていくことにも注力していました。
例えば追加して欲しい商品がある、〇〇のサービスがあればいいな、違う商品が届いた、とても早く届けてくれて嬉しかった、などクレームからいいレビューまで、顧客に寄り添って声を聞くことに専念し、サービス改善へと結び付けていきました。
その結果、スーパーやレストランの宅配だけでなく、ランドリーサービス、ペットの散歩、現金配達などへとサービスも拡大していきます。(お散歩などはRappifavorという名前で展開。メキシコでは現在サービス停止中。)
もちろんサービス改善はソフト面だけでなく、ハード面のギグワーカーたちと一緒に取り組んできた結果でもあります。
Rappiでは配達をするギグワーカーたちのことをRappitendero(ラッピテンデロ)と呼んでいます。
彼らと一緒に顧客のニーズを吸い上げ、共に改善してきたわけですが、もちろん彼らRαppitenderosに対してもニーズを吸い上げ、ソフト面での改善を行ってきました。
その大きなサービスの一つがRappi Cash(ラッピキャッシュ)。何ができるかというと、GrabやUberと同様で、
・現金決済ができる
・最大2000ペソ(1万円相当)までアプリ内ウォレットでつけ払いのようなことができる(緊急時の支払いなど)
クレジットカードや口座を持っていないユーザー、もちろんRαppitenderosが現金でも取引できるように、整備をしたわけです。
多様なサービス展開
現在Rappiは9カ国(メキシコ、コスタリカ、コロンビア 、ペルー、エクアドル、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル)にてサービスを展開し、今までで20万件のオーダーをアプリ内で完了させています。
Rappi Cash(ラッピキャッシュ)やお散歩やランドリー代行サービスといったRappi Favor(ラッピファボール)の他にも事業を展開させていきます。
2019年には適用する配送提携店を拡大し、2020年にはRappi Music(ラッピミュージック)、Rappi Games(ラッピゲーム)、他にもストリーミング配信を行うプラットフォームを構築したり、ライブショッピングという機能まで拡充させていくと発表。(まだサイトには出ていません)
|Rappi Games
ゲームのプラットフォーム。
1兆5600億ドルもの市場価値があると言われているゲーム市場。そこにRappiが参入し、現在150個のゲームの配信がされています。
規模もすでに大きく、26万人が登録しています。
|Rappi Music
音楽配信アプリ。ライブストリーミングサービスも行っています。
3億4100万人がこのアプリで音楽を楽しみ、ラテンアメリカ初の音楽プラットフォームになるべく成長を図っています。
|Live Events
ライブ配信に特化したアプリ。世界中のアーティストとユーザーが繋がれるをメインにし、コンテンツはパーソナライズされて、個々人の好みに合ったジャンルのライブが配信され、課金は投げ銭で、という仕組み。
音楽イベントだけでなく、文学、テクノロジーなどのテーマに特化したイベントや、コメディも含め、毎月50個のイベントをアプリ内で行う予定。
|Live Shopping
ファッションショーやイベントをライブ配信し、販売されている商品(またはアーティストやモデルたちが着用している服など)をライブ内で購入し、30分以内で配達するというサービス。
競合他社は増えていくものの、一つのスタートアップ企業がライフスタイルからエンタメまでカバーするということを図っており、ラテンアメリカ初のスーパーアプリになるのではないかと期待されています。(参考URL:Rappi Games, Rappi Music, Live Events y Live Shopping: ahora la startup se convierte en toda una súper app)
直面する問題への対応
もちろん企業の成長にはコンフリクトは常に存在します。それがRappitenderos(Rappiの配達人)による労働環境改善のためのデモです。
2017年にコロンビアのボゴタで発生し、メキシコ、アルゼンチンまでもその火花が散っていきます。
それに対して、Rappi側では配達人への手数料を他の競合よりも上げる措置をとっっていきましたが、それ自体が根本的な問題への解決策にはなりませんでした。
2020年10月8日にはUber Eatsを含めた配達人による世界的なデモを行うとの報道がありました。
実際の手数料の問題ですが、Rappiは他の競合よりも高めに設定されています。(参考:¿Uber Eats o Rappi?, te decimos las diferencias de trabajar en cada una)
こちらがUber Eats。読み方は150ペソ(日本円740円相当)から700ペソ(3400円相当)までのオーダー金額による手数料。左側の縦に記載の1〜50は配達件数です。
Uber Eatsの場合は150ペソだと20ペソ(約100円)の手数料。
こちらがRappiの手数料一覧。
150ペソのオーダーあたりの手数料が25ペソ(約124円)と若干高めで、さらに、横を見てみると、300ペソ以上のオーダーだと35ペソ。700ペソのオーダーだと40ペソに増えていきます。
UberEatsが300から700ペソのオーダーに対しても一律で25ペソしか支払いがないことに対して、Rappiの手数料が高いことがわかります。
しかし、配達人のフラストレーションは高まる一方で、いまだデモは顕在化しています。手数料以外の問題を解決するため、Rappiの動向が気になります。
おわりに
2019年3月、ラテンアメリカ市場に特化した投資ファンド「ソフトバンク・イノベーション・ファンド」を設立し、その投資先として選ばれたのがRappiで10億ドルを調達することに成功しました。
ソフトバンクグループはAlphaCredit(アルファ・クレジット)というフィンテック系のメキシコ企業の投資も視野に入れており、フィンテック・健康維持系のサービスへの投資をラテンアメリカに行っていくと報告されています。
Rappiもそのうちの一つの企業であり、元々はショッピングの配達代行を行っていたサービスが今ではラテンアメリカのプラットフォームを築くまで成長しています。
Rappiがここまで成長できたのは以下の戦略があったから、とビデオで解説されていました。
①一つの事業にフォーカスする
これは配達代行から初めて、ユーザーや提携店が増えることで規模の経済をどんどん大きくしていったということが成功につながっています。
②思いついたら始まっていたスピード感
こういったアイデアはすでに競合も存在するので、すでに頭にある、という人は多いはずです。しかし、彼らは思いついたら、すぐにプログラミングをして、サービスのプロトタイプを作ってローンチという、スピーディーにここまで持ってきました。(現にサービスがローンチされたのも2015年)
③ユーザーの声を聞き続ける
サービスを作っても、自分よがりになってしまっては成長はしません。「やりたい」を実現し、そのあとはユーザーが何を欲しがっているのかを聞き続けていく。「ペットを散歩に連れてってほしい」「現金を下ろしてきてほしい」など、使用しているユーザーが本当は何がほしいのかを直向きに聞き続けていきました。
そして、顧客に寄り添ったことで今のスーパーアプリのようなサービスまで徐々に拡大することができました。
上記プラス、わたしが考えた成長理由としては
④現地のインフラを理解していた
Uber やDiDiなど競合がひしめき合うこの業界。彼らも南米市場には進出しているものの、彼らと一緒に競合して、戦えるだけの体力は普通だとありません。
が、Rappiは現地の特性をよく理解していて、どこにニーズがあるのか、なぜRappiが利用されるのか、必要とされるのかが明確だったからだと思います。
なぜ?を考えたときに、Rappiを使う理由としてあげられるのが
・渋滞が多いので車で行くのが面倒、時間がかかる
・現金を安心して口座から下ろしたい(治安の面)
・配送人への手数料も高いため、手数料の高さから安心が担保できている
・現金やクレカなどを持ち歩かなくても良い(Rappi Cash利用で。治安面)
こう言った理由から、ラテンアメリカのスーパープラットフォームになる可能性を十分秘めており、今後拡大成長していくこと間違いなしのサービスかなと思いました。
それでは!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?