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『マッドマックス・フュリオサ』を観て‼

 映画の冒頭、幼いフュリオサが、果物を樹からもぎ取った後、盗賊に見つかって、「緑の地」から連れ去れるシーンから始まります。このシーンを観て、直感的に旧約聖書の『失楽園』の話しが頭を過ぎりました。つまり、「禁断の実」を食べたイヴがアダムと共に「エデンの園」を追い出され、苦しい生活を強いられる話が、この映画のベースになると思ったのです。フュリオサは、連れて来られた地獄のような場所で、過酷な運命に翻弄されながらも、自分の意志を貫く茨の道を突き進んで行きます。前作「マッドマックス・怒りのデスロード」の前日譚というスピンオフ作品ですが、丁寧にストーリーが作り込まれており、フュリオサは強い意志(殺された母の復讐)と、希望(「緑の地」に還る)を胸に秘めて、そのチャンスを自ら作りだし、たとへ失敗しても次のチャンスを作り出す執念に、引き込まれていく映画でした。

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 この映画の凄い所は、派手なカーアクション・シーンに目が奪われがちですが、主人公フュリオサの極端に少ないセリフなのです。実は、全て目で演技をしている目力に圧倒されます。やはり、覚悟の出来ている人間は、ピンチにも負けない強さが光ります。鋼の精神力で、窮地を脱していく姿に惚れ惚れしました。また、出てくる悪党にも個性があり、悪党同士の駆け引きにも見応えがあります。最初にフュリオサを手に入れたディメンタス将軍にも、「悪の華」があり、この地獄のような世界で、のし上がっていく姿に、共感は出来なくても、理解は出来ます。彼の心の変化が、彼の纏う白いケープに現れています。最初は、真っ白ですが、次第に赤や黒などがケープを汚し、最後はネタバレになりますが、フュリオサに捕まって、果実の種を体に埋め込まれ、その樹の栄養分にされてしまう展開は、ひねりが効いていました。その後フィリオサは、この地を支配するイモータル・ジョーの傘下で、力を付け、「緑の地」に帰還する機会を狙っていきます。

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 そして、前日譚を引き継いで、「怒りのデスロード」と繋がります。一人旅をしていたマックスが、イモータル・ジョーの手下に捕まり、ウォー・ボーイズの輸血袋にされ、そこから逃走するシーンになり、ウォータンクにイモータル・ジョーの花嫁を乗せて、「緑の地」を目指して逃走していたフュリオサと合流する所から、話しが展開していきます。

 実は「怒りのデスロード」を映画館で観ていなかったので、急遽ネットでレンタルして観ました。やはり、この映画でもマックスよりもフュリオサの方が主役でした。近年、米国ではポリコレやフェミニズムが煩くなり、必ず映画には黒人やアジア人、ジェンダーを盛り込む事がお約束になっており、特に米国ではポリコレやジェンダー疲れが顕著になり、主人公も女性ヒーローが多くなり、フェミニズムに対しても嫌悪感が広まっています。
この映画も例に漏れず、米国では観客動員数が尻すぼみになっています。
私は、素直に「フュリオサ」は映画としても、面白かったのでお勧めしますが、米国では観客動員数が伸びず、失敗作になりそうです。女性が主人公というだけで、観る前に敬遠されているようです。この映画には政治的な配慮があまり感じられませんが、ポリコレに配慮した作品に魅力がないのは、ディズニー映画やマーベル映画で顕著に現れています。

 余談になりますが、日本映画はポリコレやジェンダー、フェミニズムに対する配慮は薄いので、作品を損なうレベルに達していないのが救いです。しかし、いつ日本もそれらを配慮した作品作りにシフトするか分からないので、予断を許せません⁉

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