過去 救い 永遠 ベルクソン

 「世界は時間でできている: ベルクソン時間哲学入門」という本を読んだ。久々に死ぬほど面白い本だった。
 哲学好きの人とベルクソンの話を何回かしたことがあるが、毎回「彼だけなんか一人で別のことをしている」という話になる。

 ベルクソンが主張していることで一番直観に反するのは「過去はそのまま存在している」ということだ。物凄く平たくいうと「保存されている過去から脳が想起という機能で記憶を呼び起こす」ということらしい。理路は複雑だから置いといて、アイデアが凄い良い。

 神の記憶だとかいろいろ解釈があるらしいが、「過去がそのまま存在している」という発想が凄く良い。これ以上良いことってあるか?と思う。
 母親と過ごした日々とか、地元の友達とバカしたこととか、昔飼っていた猫とか、自殺してしまった友達とか、全部「保存」されているのだとしたら、こんな救いになることってない。母親が死んだ時に、父親に「心の中に生きている」と言われたが、心ではなく、「事実」として、過去が去っていないならば、まだ母親は現在形で「生きている」ことになるし、友達も猫も生きていることになる。
 「時間が去らない」というのは直観に反するけれど、哲学理論としては成り立つので、本当にそうなのかもしれない。

 白隠は地獄が怖くて出家したのだが、首を切られて死んだ坊さんの話を聞いて「悟っても死ぬじゃん」と思ったらしい。だが、悟った瞬間に「あの坊さんは死んでない!」と分かったらしい。
 現代の悟っている坊さんが、悟った時に「この瞬間に過去も未来も全て含まれていることが分かる」みたいなこと言ってたが、どういう意味なんだろう。沢木興道は「宇宙の全景をチラっと見る」と言っていた。

 たまに父親と顔を合わすと白髪が凄い増えている。虚無になる。三木清が「別れていった人達と死後に会える可能性がゼロではないことが慰めになる」みたいなことを書いていたが、年を取ると実感するな。まだ27だしこれからみんな死んでいくし、僕も死ぬし、宇宙に全て刻まれていたら、本当にうれしいんだけどな
 
 
 

勉強したいのでお願いします