見出し画像

これまでに書いた小説を振り返る(前編)



夜しかない国に何故来たのか、初恋の人が校庭の花壇の隅で虫を食べていた…


今日は、私が人生でこれまで書いてきた小説について、どんな内容だったかとか、どんな状況の時に書いたものだとかを思い出しながら綴っていこうと思う。
長くなりそうなので、前編後編に分ける。

小説家を目指していたわけでもないし、読書家という程に本を読んでるわけでもないが、それなりに文章と関わってきた人生の作品を振り返り、ここに残しておきたい。

ちなみに最初に言っとくが、私は中2で江戸川乱歩にハマり、エログロナンセンス、アングラな雰囲気にメロメロな厨二病時代を過ごした人間なので、純文学っぽい繊細さはない。高校生の時に書いたこの2作は、ちょいキモめな部分もあるので、そういうのちょっと…という方は気をつけてね!






①タイトル不明、恐らく「夜の国」


高校2年生の時に、人生で初めて書いた小説だ。
当時、「とにかく何かを作り出したい」というマインドで小説書いてみた。
映画をよく観ていた時期なので、いかに映像を思い浮かべられるかを意識して書いた気がする。

会社員の男性が朝に目を覚ますと、外は夜のままだった。不思議に思い外に出ても街灯は点いてるのに人がおらず、途方に暮れていたところ、公園のベンチで眠り続ける女子高生とその子を膝枕し介抱する男性と出会う。
男性と女の子は歳の差が大きい恋人同士で、夜にしか会うことできなかった。
ずっと一緒にいたいと願い続けて、やっと夜の国に来れたのに、女の子はちょっとしか起きていられない。それでも男性は、女の子と一緒にいられて幸せそう。
話を聞きながら、主人公は何故自分が夜の国に来たのかを考える…。



というお話だった。
キモめな部分があると言った割には、まともそうなシーンも書いていた。
ちなみに当時この小説を母親に見せたところ、「伊坂幸太郎っぽいね」と言われた。
伊坂幸太郎ファンの方、すみません。
映像化を意識して書いたため、各シーンの自分のイメージ映像を鮮明に思い出せる。



主人公は二人と別れた後、自分の眼を太陽で焼いたという初老の男性と出会う。
その男性は昔から作家を夢見ていたが、重労働低賃金の職場で時間がなく、書き物ができる時間の夜に思いを馳せすぎて、陽を感知できる自分の眼を焼いてしまった。
やっと光が届かない視界になれたと思ったところで夜の国に来て、見えても見えなくても変わらなくなった、と言う。




この初老の男性は、私が高校生の時に崇拝していたロックバンドTHE BACK HORNの「白夜」という曲の歌詞をイメージして登場させた。歌詞の一部を抜粋する。

「夜がこなければ誰が愛を語るだろう
夜が恋しくて俺は目を潰すのさ」

THE BACK HORN、まじで死ぬほど好きだった。ギター菅波さんの書く歌詞の重苦しさがたまらない。ボーカル山田さんの地を這う低い歌声にゾクゾクする。
気持ちが底まで落ち込んだ時には「ジョーカー」を聴いて怖すぎて泣いたし、「ディナー」はぶっ飛んだ変態すぎてたまに思い出す。「幾千光年の孤独」はイントロを聴いただけでテンションがぶち上がる。
THE BACK HORNの持つダークで切ない感じがたまらなく好きだった。


ずっと夜にいたいと願う人達が、夜の国に来れて嬉しいのに、少しだけ残念に思いながら生きている。
昔、夜にこそ自分を取り戻せる感覚が常にあって、自分は夜側の人間だと信じていた。
当時の私が、夜に救われる感覚と切なさをどこかに落とし込みたくて、この作品を書いたのだと推察できる。
結末は覚えていないが、主人公も夜の世界に安心して終わった気がする。





②「虫」


高校3年生の時に、自由研究という授業があった。
自分の好きな教科を選び、その教科に関連する研究をするという授業だ。
科学選択の子達は理科室で実験していたし、音楽選択の子達は作曲していた。
この自由研究は3年生の前期にあった授業で、迷える受験生達に、自分の興味のある分野を見つけ、進路を決定しやすくするために行われたと考えられる。
私は国語を選び、短編小説集を書くことになった。

その小説集の中の一つが「虫」。
最終的に提出する際には、この「虫」をトップバッターとして掲載して出したと思う。



「好きな子が虫を食べていた。校庭の花壇の隅で。」
小学3年生の僕が、小学4年生の好きな女の子が花壇の裏で虫を食べているところを発見する。
その女の子は、集団下校の際に低学年の子達を牽引する、みんなに慕われている憧れの女の子だった。
放課後の夕暮れに、その子ががむしゃらに虫を頬張り、口から虫の脚が飛び出している姿に主人公はドキドキして、それからすっかりその子の虜になる。




という話だった。
最初のシーンのインパクトが大事だな!と思い、小学生時代のトキメキシーンはかなり丁寧に作り込んだ気がする。



虫を食べる女子が好みのタイプになってしまった主人公は、その子と会えなくなってから恋愛で随分苦労する。
高校生で何となく付き合った女の子とのランチデートにて、その子の食べようとしていたパスタに虫が止まり、それを見て主人公は興奮するとともに、改めて自分の性癖に絶望する。
主人公がその女の子を振る際の台詞は、
「だって、君は虫を食べないじゃないか!」
だった。




これは厨二病さが色濃く出ている。
エログロナンセンスがほとばしっているし、私が一番好きな乱歩の作品「蟲」へのリスペクトを感じる。
アングラ乱歩感とどうしようもない性癖の虚しさを描きたかったのだと推察できる。

こちらも結末が思い出せない。
書いていた当時も結末がどうしても思いつかず、取ってつけたようなものにしてしまった気がする。最初のインパクトが強いだけに、もったいないことをした。

短編小説集だったので、これ以外にも3作ぐらい書いたのだが、あまり覚えていない。
それぐらい私はこの「虫」に注力していた。







というわけで、前編は高校生の時に書いた2つの作品をご紹介させて頂いた。

本当に懐かしく、当時好きだった芸術感をもう一度味わいたくなってきた。

後編は、文芸学部に進学した時分の小説をご紹介しようと思う。

ここまで読んでくれてありがとう!
また、後編でお会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?