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会社が副業や兼業を推奨、指示している

⇒要注意です!労働条件の改悪(不利益変更)やリストラ、違法な業務命令の懸念があります。

コロナ禍で、収入が減ったなどの理由で副業を希望する人が増えていると言われます(※1)。就業時間外に何をするかは、労働者の自由です。企業秘密をライバル企業にもらすなどの恐れがない限り、副業の権利は認めるべき、との裁判例もあります。
 
しかし、会社が副業を推奨し始めたら、要注意です。「経営が大変なので賃金を下げるかわりに、その分を他の会社で働いて稼いでほしい」ということであれば、労働条件の不利益変更であり、一方的に行うならば、労働契約法第9条違反です。また、事業の縮小から事業所閉鎖に向け、リストラ準備を進めている可能性もあります。

さらに、会社が副業を「指示」したとしたら、これは大問題です。
実は、会社を複数の事業会社に分け、一連の業務を分割し、各会社に委託して、労働者が労働契約を各会社と結んで働かせるようにすれば、一社で働かせた場合に発生する使用者責任を回避しうると考える経営者もいるようです(社会保険料負担軽減、労災の責任回避、時間外労働割増賃金の支払い回避等)。実際に、2019年7月には、実態として同一の経営者らが運営する2つの会社で、同一の労働者を働かせながら、労働時間通算をしていなかった事件があり、労働基準法第32条違反として書類送検されています。副業の悪用には、要注意です。
 
副業には、多くの問題があります。
特にフルタイムの本業に副業が加わると、長時間労働となり個人の時間や社会活動の時間が減り、疲労が蓄積され、健康被害を生むおそれがあります。そのため、労働基準法では、本業と副業の労働時間を通算して1日8時間・週40時間の法定労働時間の原則を適用し、それを超えた時間外労働には、後から契約を結んだ副業の事業主を中心に、割増賃金の支払い義務をかけています。しかし、実際にはこの規定はあまり運用されず、長時間労働に歯止めをかけることができていません。

過労は生産性を下げるばかりか、作業ミスによる労働災害も誘発します。また、長時間労働に起因する健康被害が起きても、使用者が複数いるため、原因や責任の所在が特定されず、労災認定はされにくく、損害賠償も求めにくくなります。結局、副業をした本人の自己責任にされやすいということです。

安易な副業には手を出さず、まずは、労働組合/全労連にご相談を。

全労連
http://www.zenroren.gr.jp/jp/soudan/rodosodan_form/form1.html

※1:総務省の平成29年「就業構造基本調査」では、正規雇用で2%、非正規雇用で6%が副業をしていたとのことですが、それより増えているかもしれません。


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