お正月法話『仏教が考える、正しいとは?』

新年あけましておめでとうございます。
本年が皆様にとって良き一年になることを、心よりお祈り申し上げます。
新年を迎え、心を新たに、また様々な想いをもって、お正月を迎えられているのではないでしょうか。

「正しい」と「月」で、正月です。
「正」という字は「一」を「止める」と書きます。
よって正月は、「一切止めて」、今までの人生を振り返り、自分自身を見つめなおす、新たな始まりの月です。
また、正月には「どの様な生き方が、正しいのか」「今年一年の日々をどの様に、正しく生きていくのか」自身にとっての「正しい」を、今一度見つめ、定める時間にしてみては、いかがでしょうか。
正しい日々を積み重ねていくことが、心豊かな人生につながるのではないでしょうか。
どのような考え方が、正しいのでしょうか。
仏教には「八正道(はっしょうどう)」という考え方があります。
八正道は、お釈迦様の説いた涅槃に至るための、八つの基本的な修行の道筋です。
仏教は全ての物事は、原因があり、結果が生まれると、考えます。
これを因果律といいます。
因果律に従うのを「正しい」と考え、全てのものは、全てそれなりの原因があり、結果が生じると考えます。
そのような考えを背景として、八つの徳目、八正道を実践します。

八つの正しい修行の一つ目は、正しく見る、観察する「正見(しょうけん)」です。
偏見や固定概念を持たずに、正しい目で物事を見る。
何が原因で現在の結果になったのかを見る「正見」は、お釈迦様の悟った一番目のことです。
「正思(しょうし)」は、ものごとを深く考えるということです。
「正語(しょうご)」は、正しい言葉で話す。
因果関係からいえば、良い言葉を使えば、悪い言葉(悪口、二枚舌、お世辞、嘘、中傷、無駄口)を使えば、どのような結果が生まれるかは、明らかです。
「正業(しょうごう)」正しい行いをする。
殺生や盗みなどの悪行から離れ、善行を積む。業は行為です。
「正命(しょうみょう)」正しい生活を営む。
正業によって生活財を求めることが、正しい道とする。
「正精進(しょうしょうじん)」ひたむきに努力すること。
正しい努力をする。精進は励む。
正しい努力をすることです。
「正念(しょうねん)」邪念を断ち、正しい心を持つこと。「正思」に似ていますが、「念」は、思い考える思索で、その内容が正しくなければいけません。
「正定(しょうじょう)」は、精神統一をするということです。
精神統一が八正道の最終の目的です。
そのために、正しく見、正しく思い、正しく語り、正しく行い、正しく生活をし、正しく励まなければならないと仏教は考えます。
それによって精神統一ができていくという、原始仏教の考え方です。

節があるゆえに、竹はしなやかです。
節目(度)ある生活、サッと割れば真っすぐ割れる如く、清く正しく、われわれ人間も意識的に節をつくることで、心豊かに生きることができると思います。
正月のこの時期に意識的に立ち止まり、過去を省み、未来を思う時間が、人生においての節となり、心豊かな人生を送る上での、要諦となるのではないでしょうか。
お正月に定めた思いも時間が経過していく中で、あるいは周りの環境により少しずつ、ずれていくと思います。
少しの角度の違いが、時間が経過すると大きな差になります。
ゆえに毎日、あるいは定期的に、正しい生き方ができているかを省み、ずれていたら一旦立ち止まって、修正をする習慣をお勧めします。
姿勢を正し、ゆっくりと深い呼吸をし、正月の定めた「正しさ」を思い返してみては、いかがでしょうか。
あるいは、御朱印やお月様を見て、正月に定めた「正しさ」を思い返してみては、いかがでしょうか。
お互いに、お正月で定めた正しい生き方を、日々積み重ねていくことで、良き一年にしていければ幸いです。
泰勝寺はお釈迦様の教えを通じて、少しでも皆様の心の支えになれるように精進する所存です。
本年も宜しくお願いいたします。合掌

 令和五年 新春

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