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無心のプレーは引き算から生まれる 主客逆転のメンタルトレーニング

スプリンターは早く走ろうとします。
ゴルファーやスラッガーはボールを遠くに飛ばそうとします。

早く走るために必要なものは何か?
ボールをより遠くに飛ばすために必要なものは何か?

多くの選手が「パワー」と答えるのではないでしょうか。もちろんパワーは大事です。しかし、パワーだけの勝負で考えると、日本人の体格は不利です。

しかし、スプリンターでも近年、世界で戦える日本人選手が出てきました。ゴルファーでも世界ランキング上位に名前を連ねる選手が出てきました。大リーグで活躍する野球選手も増えています。

これから自分の実力を伸ばす上で、パワーだけに偏ると、どこかで必ず無理がやってきます。

では日本人が長けているものはなんでしょうか。メンタルトレーニングをしているある野球選手は「繊細さ」と答えました。確かに、日本人は器用で、繊細な動きが得意です。

ボールを投げると、必ずどこかで落下します。当たり前のようですが、ここにボールの飛ぶ距離はパワーだけで決まるわけではない真実があります。

投げたときの力が球に伝わり飛んでいきます。そして、空気の抵抗を受け、引力の力を受けて、速度は落ちていきます。投げだされたパワーがゼロになるとき、ボールは落下します。

要は、飛距離はパワーから抵抗を引いた引き算なのです。いかに投げるときのパワーが大きくても抵抗が強ければ早くボールは落下します。一方で、力はそんなに強くなくても抵抗がなければボールはどこまでも飛んでいきます。宇宙で見る無重力の状態です。

人には、何かがなければ、それは何かを持っているということです。ないものをだけを見れば「足りない」ことを足そうとします。しかし、あるものを見れば「伸ばす」ことが出来ます。

では、日本人の繊細さをどう発揮すればよいのでしょうか。

それは、いかに抵抗を少なくするかです。黒人のスプリンターを見ていると、ある余るパワーを上手く使えていない選手も多い。要は抵抗が多いのです。大きな抵抗を受けながら、それをパワーでねじ伏せようとしている走りになりがちなのです。一歩ずつのパワーロスが大きく、出力の割には速度があがらないのです。

一方で、今世界のトップで戦っている日本人のスプリンター達をみると、走りの波の上下動が小さいように見えます。特に調子がよいときには、一歩ずつの速度の低下がほとんどありません。パワーのロスが少ないので、スーッと楽に進んでいるように見えます。

今、オリンピック出場を目指している幅跳びの選手のメンタルトレーニングをしていますが、重心がブレてくると空気や地面の抵抗が増してくるのです。

抵抗を少なくしていく鍵は「重力」と「地面」にあります。いかに重力が身体の動きに引っかからないようにするか、足が地面と戦わないようにするか。

これは頭で考えて動ける範疇を超えています。

重力や地面と協力出来るようにさまざまなトレーニングをやっていきますが、その一つが主客逆転のメンタルトレーニングです。

普通に見ると、足が地面を蹴るということになります。いかに地面を強く蹴るか。それで速度があがると考えがちです。しかし、これは一方向の動きです。強く踏もうとするほど、地面からの抵抗が生まれてパワーのロスも大きく、また足にも負担がかかります。

これは、地面と戦っている状態です。抵抗を減らすには、いかに地面と戦わず、協力出来るか。

地面と戦わない走りをするためのトレーニングにおいては、地面を主語にします。

選手によっても感覚がまちまちなので、なかなかいい表現が見つからないのですが、あえて申し上げれば、地面が足を蹴ってくれるという感じでしょうか。

地面から足の動きをイメージするというのは、主客が真逆になっています。これが、足と地面の新たな関係作りの一つのトレーニングです。ちなみに地面を主語にしていると、今までにない新しい感覚が生まれてきます。

たとえば、足で地面を蹴っていたときは足の外側だけで飛んでいたのが、地面を主語にすると足の内側の動きまで感じられる。このように地面に足が触れる感覚が敏感になっていきます。

これがまさに、「繊細さ」が磨かれている状態といえます。

禅の師匠である藤田一照老師は、坐禅を身体のワークととらえています。

藤田老師いわく、「坐禅とは、カメラの画素を上げていくようなものです。感覚の画素を上がると、身体の感覚が変わってきます。」

主客逆転のトレーニングでは、「地面の声を聴く」ことをやっていきます。地面がどう感じているか。地面になることで、地面がいろいろなことを教えてくれます。

さきほどの幅跳びの選手によると、もう少しかかとよりに接地した方がいいよとか、接地をもう少し強くしてとか、自然に地面の声がきこえてくるのです。また、あるときは、地面が「いいぞー!!」と励ましてくれたそうです。

地面の声を聴くトレーニングを続ける中で、「地面と友達になれた」そうです。

次回も主客逆転のメンタルトレーニングについてお伝えします。




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