禅語 而今(にこん)- 今この瞬間を生き切る
あなたは、生き切っていますか?
「生き切る」とは、どんなことでしょうか?
わかりにくいかもしれませんね。
「生き切る」のがどんなことか想像できても、「生き切るなんて無理」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
仕事、家事、子育ては、毎日続けて行うものなので、継続という視点も大事です。
「生き切る」ことで力尽きてしまい、続けられなくなっては困ります。
ただ、これからも続いていくと思っていると、1日や一瞬一瞬を味わうことなく、流してしまいがちです。
この仕事は明日も続く。
また明日も同僚や家族に会える。
このように思うと、今日や一瞬一瞬の豊かさやありがたさを感じにくくなってしまうのです。
今の環境があるのが当たり前だと思ってしまうと、いろいろな不満が湧き上がってきます。
家があるのは当たり前。
家の布団で眠れるのも当たり前。
仕事があるのも当たり前。
家族がいるのは当たり前。
実際は、それまで当たり前だと思っていたことが、当たり前でなくなることもあります。
会社への最終出勤日。
明日からはもう、毎日顔を合わせていた上司や同僚に会わない。
高校を卒業した息子が一人暮らしをするために、家を出て引っ越していく日。
転んだだけで泣いていた息子が家を出ていく…
このような日、どんな気持ちで一日を送るでしょうか。
きっと、一瞬一瞬を味わうように、大切に過ごすのではないでしょうか。
当たり前と思って過ぎていく日も、一瞬一瞬を大切にして過ごす日も、時計が刻む時間の長さは変わりません。
ところが、私たちの心構えによって、一日の感じ方は、大きく異なりますね。
私たちが持っている意識によって、一瞬の感じ方が変わると言えます。
「而今(にこん)」という禅語があります。
神奈川県にある建功寺の枡野俊明住職は、著書『おだやかに、シンプルに生きる』の中で、次のように説いています。
「『而今』という禅語は、命の真実は『今』にしかないことを説いた言葉です。私たちは『今』この瞬間にしか生きることはできません。昨日の自分はすでに死んでいるのと同じ。明日生きているという保証もないのです。であるからこそ、『今』という時期を大切に生きることが大事なのです」
禅の思想に影響を受けたスティーブ・ジョブズの次の言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、
今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」
スタンフォード大学で行った祝賀スピーチの一節です。
ジョブズは、17歳のときに次のような言葉を聞いたそうです。
「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。
そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう」
そこでジョブズは、33年間、毎朝鏡を見て自分に対して
「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら…」と問い掛けたのです。
Noが続いたら、何かを変えなければならないと考えたのですね。
毎日「今日が最後の日」だと思って生き切るのは、少し極端だと考える方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、一瞬一瞬を生き切る、今日を生き切るという視点を取り入れると、一日や人生が変わってくるでしょう。
私も以前は、目標や戦略を考えて、目標を早く達成するために、計画的を立てて実行していました。
企業に研修に行くときには、
「どうすれば参加者にいい気づきを持ってもらえるか」を考えるのと同時に「いかに研修を継続していただけるか」を考えていました。
自分の売り上げをいかに上げるか目標を掲げて、そのための努力をしていたのです。
目標に向けてがんばっている中で、契約を守るために行動している自分にどこかで納得できていませんでした。
そこで、ルールを一つ決めました。
その日が研修の最後の日という気持ちで研修に臨み、やりきることです。
心をゼロにリセットして、その日にやれることをやりきることだけに集中します。
「主催者にダメという烙印を押されるのではないか」
「こんなことを言っては、参加者に嫌われるのではないか」
このような考えが頭をよぎることもありますが、
最後の日だと思って、やりきることだけに心を戻すのです。
先のことを考えないようにするには、結構、覚悟がいりました。
しかし、覚悟を持って「やりきろう」という気持ちで臨むと、何度も接している参加者も、まったく先入観なく観ることができます。
すると、不思議と素晴らしい直感も湧いてくるのです。
参加者にとって必要なメッセージを躊躇なく伝えることで、研修が参加者にとって、貴重な経験になるようです。
やりきることだけに集中している研修は、私にとっても、本当に充実した時間です。
そんな研修で感じるのは、計画して進めていたときとはまったく違う、誰も予想できない爆発的なエネルギーです。
そして結果的に、再び依頼がやってくるのです。
これほど嬉しいことはありません。
それ以来、私はすべての研修、コーチングのセッションの前に
「これで終わっても悔いのない時間にしよう」と
心を決めることにしています。
わたしたちは、日々、挨拶をします。
挨拶は、相手に対してだけではなく、自分に対してもっとも意味があるのではないでしょうか。
朝の挨拶は、自分の心を新鮮にしてくれます。
寝る前に「おやすみなさい」と言葉にすることで、「今日も一日いろいろあったものの、家族全員無事に過ごすことができました」という感謝の念で一日の区切りを付けることができます。
挨拶も一日を生き切ることにつながるのではないでしょうか。
生き切るとは、何か特別なことをするというのではないと思います。
前に向かって進むだけだと、感謝の心をつい忘れがちになります。
新鮮さと感謝を持てているということが、精一杯生き切ることに懸命になっているということの証ではないでしょうか。
この記事も読んでいただいて、ありがとうございました。
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