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シールと僕

シール

自分は今年30歳になるが、ある時期からずっと、大人になっても、見るだけでちょっと苦手意識が出てしまう物がある。それが "シール" だ。

それも、全てのシールではない。
お惣菜に貼られるような "半額のシール" は平気、
パソコンにパスワードを書いて貼るような所謂 "付箋" も平気。

苦手なのは子供が貼って遊ぶために使う "動植物モチーフ" の物や、
ラジオ体操の出席カード等に貼るような "赤や青の丸のシール" 。

そういった、子供がたくさん貼る事があるようなシールが苦手だ。
原因は明確であり、その時の事は鮮明に思い出せる。

少年時代

それは遡ると小学4年生だったか、5年生だったか。
自分は習い事をあんまりやっておらず、週に1回の水泳教室と、月に2回の "スポーツ少年団" というボーイスカウトクラブみたいな物のみだった。

両親は自分が赤ん坊の頃に離婚しており、自分を引き取った母親は朝から夜まで仕事のため学校から帰ってきても家には誰もおらず、職業柄土日も仕事だった。

自分としてはその事は苦でなかったが、母親はその時間を埋めてくれようとしてくれていたのだろう。その時期、一番仲の良かった友達が通っていた学習塾を薦めてくれた。

当時は勉強自体は嫌ではなかった事、友達と一緒の時間も増える事から、「やりたい!」と即答したような記憶がある。

学習塾といっても、全国に色々店舗(店舗っていうのか?)を出し、最強の講師陣が教えてくれるような物ではない。
今でもあるか分からないが、一般家庭のリビングをその時間だけ開放し、長机や丸机に集まって用意された学習ドリルをやり、その家の人に採点だったり解き方を教わるライトな塾だった。

大体の生徒は学校が終わるとその家に行き、リビングで他の生徒と同じ机で横並びでドリルをやる。
終わったら提出して出席ノートを書いて貰って帰る。
今思えば講義や授業みたいなのは1回もなかった気がする。

とにかく、そういう感じの塾を通わせて貰っていた時期があった。

トラウマ

その学習塾に通っていた時に起きた些細な出来事が、
そこから先20年以上もシールを見る度に思い出し、
鬱屈した気分にさせるトラウマを与えるようになった。

それは小学校が夏休みの時期。
自分は祖父母の実家に長期間帰省していたか何かで、塾に行くのは久しぶりだった。

その塾は小学生を対象にしている事もあり、毎年夏休みやハロウィン、クリスマス等が近くなると、行事に合わせた小さいイベントが行われていた。
この夏休みも例に漏れず、イベントは開催されていた。

そのイベントは【一定のドリルを解いた数だけ自分の出席ノートにシールが貼り、溜まったらお菓子が貰える】という内容。

そう、 "シール" である。

小学生にしては結構スカしていた自分にとって、
シールもお菓子も特に喜ぶべき物ではない。
つまり、普段通り参加していればおまけ程度のイベントだった筈。

ただ、運が悪かったのがイベント参加期間に一度も塾へ行けなかった事、
そして、そこで使う筈だったシールが大量に余っていた事だった。

いつも通りドリルを終わらせ、友達を待っていた自分はそのイベントを先生から聞き、そして「参加してなかった君は、余ったシールを好きにしていい」権利を得たのだ。

前述の通り、小学校時代はスカしていたので
シールなんかいらなかったのだが、待ち時間が暇な事もあり、
その余ったシールを自分の出席ノートに貼っていた。

それはもう何枚も。ぺたぺた。ぺたぺた。
目の前のシールを全部、贅沢に使えるのだ。
「待っている間にシールを貼っているだけです」という顔をしながら、
ぺたぺた。ぺたぺた。

そして、今思えば夢中になっていたのかもしれない。
同じ塾の生徒である、学年が上の名前も知らない女の子。
その子が自分の後ろを通る際、シールを貼っている自分を見て呟いた。

「なんでシールぺたぺた貼ってんの」

ショックだった。
生まれて初めて向けられた【軽蔑】の感情だったかもしれない。

興味で聞いてきたのではない事は確かだった。
その女の子はそれだけ呟いて、そそくさと立ち去ってしまったからだ。

「いや、俺は、普通に友達待ってて、暇だからであって、
別に、シールが好きな訳じゃなくて…….」

そう言いたかった。
そう言いたかったけど、それを言った所でもう "ダサい"。

傍から見たらその時の自分は
「シールをぺたぺた貼る事に夢中になっている小学生」だったからだ。
いや、実際そうなんだけど。

実際そうなんだけど、その時の自分のプライドは
そう見られたことが本当に悔しかった。
弁解もさせて貰えなかった事が本当に辛かった。

その後、自分は余ったシールを先生に返し、
友達を待って帰宅した。
色々なシールがぺたぺた貼られた出席ノートを、今すぐまっさらな状態に戻したかった。

今でも、シールを見る度に、
後ろからかけられた【軽蔑の声】を思い出す。

「なんでシールぺたぺた貼ってんの」

これが、自分のトラウマ。
小学生の頃のひと夏の、知らない女の子に言われた、たった一言。
20年以上も鮮明に思い出せる、あの感覚。

つまり

何を伝えたいという事はないのだけれど、
自分は他人のこういう話を聞いたりするのが好きなので、
もしかしたら皆の中にも好きな人いるかなと思って書きました。

大人になっても思い出してしまう小さい頃の苦い記憶があったら、
皆も教えて欲しいです。

読み辛かったらすみません。
また何か書けるような事があったら書きたいです。

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