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成功企業のブランディング事例 Vol.5「freee」

成功企業のブランディング事例シリーズのVol.5へようこそ。
(Vol.4を見逃した方は、こちらからお読みください!)

本シリーズでは、様々な企業をピックアップ、その企業のブランディング手法や、それによって得られた効果についてご紹介します。

ニューヨークでサービスをローンチし、一年で約55,000ユーザーを獲得したZeBrandが、ブランディング初心者にもわかりやすい解説を目指します。グローバルで展開するブランディングサービスで提案している3つのステージに基づいて、体系的に企業を分析し紹介していきます。このシリーズを読みながら、ブランディング知識を蓄えていきましょう。


freeeとは

今回取り上げる「freee株式会社」は中小企業をはじめとした法人・個人事業主向けの、事務管理(バックオフィス)を効率化するためのSaaS型クラウドサービス(「会計freee」、「人事労務freee」など)を開発、運営するフィンテック企業です。株式会社MM総研によると2017年にクラウド会計ソフトにてトップシェアを獲得しているそうです。法人企業だけでなく、個人向けのサービスも展開しており、確定申告や経理のコストを抑えたいフリーランスや個人事業主の方々にも重宝されています。

ZeBrandにご興味を持たれる方は、freeeのサービスにお世話になっている方も多いのではないでしょうか。


freeeのすごさとは

今回freeeを取り上げた理由は3つあります。

1つ目は、スタートアップ企業でありながら高い成長率を誇る企業であることです。freeeは2012年に設立され、2019年7月に上場を果たしました。これから新しく事業を始めよう、ブランディングに力を入れてみようと考えている方の良い参考事例となるでしょう。
2つ目は、freeeという会社の魅力度の高さです。年間サブスク売上の成長率が高いことと、会計だけでなく人事労務を含めた統合型の経営プラットフォームを目指していることから、伸び代が見込まれていて、とても市場から期待されています。
3つ目は、ブランディングを重要視する雰囲気です。強い想いの込められたミッションを始め、統一されたデザインや社内で共有される「マジ価値」という考え方など一貫したブランディングが達成されています。


freeeのブランディング

それでは、ここからfreeeのブランディングの特徴について見ていきます。

市場におけるfreeeの立ち位置

ブランディングにおいて、競合他社との関係性や市場の中でのポジショニングは、とても重要な要素となります。

freeeの競合としては、マネーフォワードが挙げられます。マネーフォワードはfreeeと同じく、中小企業をターゲットにしたクラウド上の会計サービスです。マネーフォワードとfreeeの違いはマネーフォワードが従来の会計ソフトの延長線上にある(複式簿記のフォーマットに基づいている)のに対して、freeeはスモールビジネスに関わる人の労力をなるべく減らせるようにという観点から設計された会計サービスになるため、初心者でも使いやすい(会計をやってきた人からすると、少々使いづらいとされる)設計になっている点です。

類似したサービスがある中で、freeeがここまで生き残れた理由にはミッションである「スモールビジネスを世界の主役に。」に基づいたサービス展開を一貫しているところにあるのだと言えるでしょう。

インナーブランディングの力

freeeのブランディングの特徴の2つ目は、社内全体へしっかりとブランディングが浸透している点にあります。インナーブランディングがきちんとしている企業は、従業員のモチベーションも高く全員が同じ方向を向かって進むことができる優良な企業といえます。

「マジ価値」というカルチャー
freeeがカルチャーの軸に据えているのは、「マジ価値」です。「マジ価値」とは、「本質的(マジ)で価値ある」の略で、ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする、という想いが込められた言葉です。この考え方は、2012年のfreee創業時から、代表をはじめとするメンバー間で共有されてきた考えなのです。


freee採用情報より

「マジ価値」に救われたマーケター
マーケターとしての成長を求めて入社したfreeeの古部さんは実際に、「マジ価値」という文化に奮い立たされたそうです。入社したての古部さんは、前例も、適切なマーケティング手法も、プロモーションに割ける予算もないfreeeでのマーケティングに、絶望を感じていたそうです。そんな中、日々「それって『マジ価値』なの?」という言葉が出るほど、「マジ価値」を追求する先輩の姿から、お客様の「マジ価値」を知る方法は何なのか再考したそうです。行き着いた答えは、「数字を追うのではなく、顧客の声だけに集中する」ことでした。freeeの『マジ価値』というカルチャーが、マーケターとしていちばん大切な『顧客にとっての価値』からスタートしてマーケティングを考える力を鍛えてくれたそうです。

ブランディングの変遷

freeeが創業当時から、ミッションやビジョンを変えていることをご存知ですか?

ブランディングができている会社ほど軸となる「ミッション」や「ビジョン」は創業当時から変わらないようなイメージがあるかもしれませんが、freeeの場合は、時代や会社のフェーズに合わせてうまく変更しているのです。

ミッションの変遷

2018年7月
「スモールビジネスに携わるすべての人が
創造的な活動にフォーカスできるよう」

「スモールビジネスを、世界の主役に。」

6周年目を迎えたfreeeは、クラウド会計のソフト市場においてトップシェアを獲得する存在となり、新ミッションへの変更がなされました。
変更の理由として、CEOの佐々木大輔氏は、ミッション以上のものを感じてくれている顧客が出てきたことや、freeeが既存のミッション以上のことを目指せるほどステップアップしたということをあげている。つまり、今回のミッションの変遷には「拡張」的な意義があったということです。企業として、より根源的なミッションにすることができたと佐々木は述べています。

ミッションを拡張させることの懸念点として、「具体性に欠けてしまう」ということがあるでしょう。そこに対して、freeeでは、サービスコンセプト「アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」を掲げることによって、その懸念を払拭しました。変更によって、言葉が端的になったことも、変更のメリットだったと佐々木は述べています。


変化に合わせたロゴやデザインの変更
freeeのロゴといえば、青いツバメのイメージを想像できると思います。しかし、freeeのロゴも、創立当初のイメージから変更を重ねて完成したものになるのです。直近では、2021年にリブランディングをしています。ビジョンの変更とともに、ブランドロゴの変更やブランドコアの設定を行いました。この変更は沢山あるfreeeのサービスに統一性を持たせることにつながり、freeeならではの「らしさ」を表現することに成功しました。また、カラーやイラストパーツなどを策定した「ガイドライン」の策定が、社内での業務効率化にもつながるというメリットをもたらしました。


freeeアイコンの変遷


リブランディングを支える環境
freeeでは、ブランディングに着手し始めた2017年から出版社のデザインスタジオでグラフィックデザイナーとして活躍したのちに、自動車部品メーカー・デンソーでアートディレクターとしてリブランディングに参画した経歴を持つ小川哲弥氏をメンバーに加えました。
小川氏は全社員を前に「心地よい解放感」「ちょっとした楽しさ」「もう一手間かけられる余裕」からなるデザインフィソロフィーというものを発表しました(2017年)。この発表から2年が経って、小川氏は社員の口から『このデザイン、freeeっぽくないですよね』という言葉を聞くようになったと言います。アウトプットを行うすべての社員に対して、このフィロソフィーを理解してもらうことで、社内のデザインの統一化やデザインでfreeeらしさを表現し続けることを可能にしているのです。


ブランディングの浸透方法
入社して1年の頃のブランドデザインチームのHoshi Eriさんは、freeeのデザインフィロソフィー(2021年のリブランディングで「かろやかシンプル」「あんしんインテリジェント」「まえむきリラックス」「たのしさスパイス」の4つのキーワードで目指すデザインを定義されたもの)を社内へ広めようというプロジェクトを進めたそうです。ブランドコアに気軽に触れてもらうために、「ブランドコア自由研究」と名付けて、ブランドコアを実際にアウトプットする例を毎週自社用のSNSworkplaceで発信することにしました。これによって、事業部問わず、ブランドコア表現に関する相談が増えたそうです。デザイナーによるブランドコアの発信によって社内全体がブランドを意識したデザインというものを重要視するようになったそうです。このような地道な活動も、ブランディングの浸透には重要になっていきます。

https://note.com/changoli/n/naceb438116af


まとめ

今回の記事では、freeeという企業についてブランディングという観点から、成長の理由を探っていきました。freeeがうまくブランディングをしている要因をまとめると以下のようになります。

  • freeeはブランディングによって、自分たちが他の企業と違うことをしていることを明らかにしている

  • 共感を得るミッションの存在と、それをみんなが信じている環境によって、良い人材が集まっている

  • freeeらしさを広める土壌ができている

freee幹部のブランディングへの意識の高さは、見習うべきところですし、参考になる事例も多かったのではないでしょうか。この記事がみなさんのブランディングに対する理解が深まるきっかけとなりましたら幸いです。

成功企業のブランディング事例シリーズでたくさんの事例を知ることで、ブランディングに関する知識やアイディアを蓄えることにつながります。本シリーズの他記事にも興味がある方は、こちらからご覧ください。

ZeBrandはブランディングに関して、戦略構築からアセット作成まで一括で管理することのできるブランディングプラットフォームとなっております。ブランドガイドラインの作成や各種SNS用テンプレートの作成なども可能です。ご興味ありましたら、お問合せください。


参考
・https://shirofune.com/inhousemarketinglab/0012/
・https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000672.000006428.html
・https://www.shopowner-support.net/glossary/branding-strategy/freee-rebranding/
・https://012cloud.jp/article/kaikei-freee
・https://corp.freee.co.jp/news/companymission-8680.html
・https://www.wantedly.com/companies/freee/post_articles/410628
・https://note.com/changoli/n/naceb438116af
・https://jobs.freee.co.jp/recruitblog/career/freee_marketing_furube/
・https://www.edp.jp/edp-plus/20220831/
・https://markezine.jp/article/detail/38579