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成功企業のブランディング事例 Vol. 2「クックパッド」

成功企業のブランディング事例シリーズのVol.2へようこそ。
(Vol.1を見逃した方は、こちらからお読みください!)

本シリーズでは、様々な企業をピックアップし、その企業のブランディング手法や、それによって得られた効果についてご紹介します。

ニューヨークでサービスをローンチし、一年で約55,000ユーザーを獲得したZeBrandが、ブランディング初心者にもわかりやすい解説を目指します。グローバルで展開するブランディングサービスで提案している3つのステージに基づいて、体系的に企業を分析し紹介していきます。このシリーズを読みながら、ブランディング知識を蓄えていきましょう。

ブランディングに興味はあるものの、

・ブランディングが実際どんなメリットを企業にもたらすのか知りたい方
・ブランディング知識を蓄積したい方

に役に立ちます。

ブランディングの概要に関しては、こちらの記事をご参照ください。

Define: ブランドの核となる方向性を整理し、定義する
・ブランドDNA
Design: ビジュアルアイデンティティをデザインする
・ブランドストラテジー
・ビジュアルアイデンティティ
Deliver: ブランドを世界中に届ける
・ブランドアセット
Refine: ブランドを見つめ直す
・フィードバック

ZeBrandによって定められたブランディングのステージの概略
Define、Design、Deliverのサイクルでブランディングを進めましょう


クックパッドについて

クックパッド株式会社では、お馴染みの料理レシピ投稿・検索サービス「クックパッド」から、生鮮食品EC「クックパッドマート」や食育絵本が毎月届くサブスクリプションサービス「おりょうりえほん」、料理が楽しくなるオンラインマルシェ「Komerco」などさまざまな事業が展開されています。

クックパッドの着目すべき点はミッションドリブンのサービス展開で、さまざまな領域に事業を展開している点です。創業者や、役員のミッションに対する強い思いや、それをいかにして浸透させるかについて着目していきます。

クックパッドのDefine 〜ブランドの核となる方向性を整理し、定義する〜

ブランドストラテジー

まずは、クックパッドのHPをもとに、ミッションやビジョン、バリューについて見ていきましょう。

クックパッドのミッションは「毎日の料理を楽しみにする」と定義されています。海外展開の強化のため、「毎日の料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす」というミッションが2016年に短縮されましたが、ミッションの意図自体は創業時から変わっていません。また、クックパッドの定款には以下の文言が記されています。

第1章 第2条世界中のすべての家庭において、毎日の料理が楽しみになった時、当会社は解散する

https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/cw5oh2/

「解散する」という力強い宣言からは、クックパッドのミッション実現に対する強い想いを感じることができます。

また、ビジョンに関しては動画を用いてわかりやすく説明されています。現代の社会問題を踏まえ、「つくり手」を増やし、「つくり手」のコミュニティを作りたいということが掲げられています。

※ クックパッドでは、料理をする人、食材の生産や流通に関わる人、料理の道具をつくる人など、食の楽しみを広げるすべての人を「つくり手」と呼んでいます。

また、クックパッドではMVVを根付かせるために、新卒研修に力を入れています。実際に研修を体験した方によって、クックパッドの新卒研修の様子がまとめられていますが、「一般的にイメージするような講義形式とは異なり、体験型で学習することで心から楽しんで濃い時間を過ごすことができた」という感想が出ています。

例えば「Mission, Vision, Truths, Values研修」ではクックパッドのミッション「毎日の料理を楽しみにする」について考えるために各自家からZoomをつないでパスタを作るということをしていました。また、クックパッドが大切にしている「つくり手」について学ぶための「つくり手ツアー」というプログラムではJapan CEOや執行役員の案内によって、畑、牛舎、漁港、農産物直売所などに赴いて「つくり手」と対話できるプログラムとなっていました。

このような経験から、クックパッドのカルチャーを新卒社員でも体現できるようになるのでしょう。

クックパッドのDesign 〜ビジュアルアイデンティティをデザインする〜

ブランドデザイン

2022年、クックパッドはコーポレートデザイン「Organic」の策定とオリジナルフォント「クックパッド Sans」の作成を行いました。

クックパッド事業の拡大に伴い、クックパッドの思いやミッションをより多くの人に伝え、共感してもらうため、一貫したコーポレートデザインの策定に踏み切ったそうです。

Organicは「多様なつくり手を受け入れ、つながることで生まれる『料理の楽しさ』を感じさせるデザイン」をコンセプトに作られました。ユーザーに「ブランドイメージ」を認識してもらうためには、デザインの力=視覚で伝えることは有効な手段になります。

コーポレートブランドデザイン「Organic」

環境デザイン - クックパッドのオフィス

クックパッドは2021年に本社を恵比寿ガーデンプレイスタワーから、横浜にあるWeWorkオーシャンゲートみなとみらいへと移転しました。この移転はJapan CEOの狙いによるものでした。横浜という街を選んだのには、二つの理由があったとCEOの福﨑氏は言っています。一つ目は、横浜が「つくり手」が多様に存在する街であり、飲食店と生産者が共存する街である点です。二つ目は、横浜が地形的に多様な価値が認められる上、職住近接が叶うことで従業員の通勤ストレスを低減させることができる点です。このように、カルチャーやビジョンを大切にしているからこそ、本社移転が行われたのだということが、読み取れます。CEOが決断をする際に、常にミッションやカルチャーを軸にしていることで、社員にミッションカルチャーの浸透を図ることができます。


クックパッドのDeliver 〜ブランドを世界中に届ける〜

規定されたミッションやカルチャーとそれに伴うデザインにより、どのようなサービスが展開されているのでしょうか。クックパッドはお馴染みのレシピのまとめサービスにとどまらず、様々な領域でサービスを展開しています。

例えば、「つくり手を増やす」という想いのもとに「おりょうりえほん」というサービスがあります。これは、クックパッド監修の食育絵本が、毎月届くサービスです。このサービスによって、子どもが食や料理への関心をもち、健康的な食生活を実践できるようになることを目指しています。

おりょうりえほん by cookpad

他にも、「つくり手をつなげる」という想いのもとに、「クックパッドマート」というサービスがあります。こちらのサービスは、精肉店や鮮魚店などの専門店や、地域の資産者が販売する「こだわり食材」を1品から送料無料で注文できるサービスです。このサービスにもクックパッドの強い想いを感じることができます。人々が現代の生き方に即した買い物ができるように、サービスを展開しています。クックパッドマートはスーパーやECの不便さを解消しつつ、生産者と消費者が簡単に出会えるようなプラットフォームとなっているのです。

上の二例にとどまらず、ミッションドリブンでサービスをどんどん展開するクックパッドは、「レシピ」の会社から「料理」の会社へと変貌しています。さまざまな事業が展開され、それが共感されることで、ロイヤルティの高い顧客を獲得できるのです。


まとめ

クックパッドがいかにミッションに忠実に事業を展開しているかということが分かったのではないでしょうか。「料理を楽しくする」ためにできるサービスを、領域を超えて展開していく姿は消費者の心を打ち、共感を得ることにつながります。

成功企業のブランディング事例シリーズでたくさんの事例を知ることで、ブランディングに関する知識やアイディアを蓄えることにつながります。本シリーズの他記事にも興味がある方は、こちらからご覧ください。


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