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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【2月22日㈬~2月28日㈫】

ベルリン国際映画祭出張から戻って、早一週間が経ちました。体調はおかげ様で絶不調です(泣)。時差ボケが酷くて、帰国当初は眠りに落ちても1時間半ほどでパッキリと目が覚めてしまい、その後1時間ほど眠れず…というのを繰り返し、睡眠時間は全部足しても4、5時間、という日が続いていました。おまけに咳まで出始め、まさかコロナ発症??と動揺しましたが(ベルリンで何十社という会社の担当者と、マスク無しミーティングをしてきた身です…)、幸い、その後発熱することもなく咳止め薬とのど飴だけで症状も沈静化。昨日はようやく全部足して7時間ぐらいまで眠ることに成功し、やっと疲れも抜けてきました。昔は、帰国した晩グッスリ眠ると、翌日からはすっかり元気!みたいな回復ぶりだったのに…。これも“老い”というものなのでしょうか…。

そのベルリン国際映画祭ですが、『音のない世界で』(’92)、『ぼくの好きな先生』(’02)で知られるフランスのドキュメンタリー作家、二コラ・フィリベール監督の新作『On the Adamant』に金熊賞が贈られて26日に閉幕しました。『ぼくの好きな~』以降、日本で同監督作品を配給を手掛け、本作が3作目の共同プロデュースとなるロングライドさんの、長年の監督との信頼関係が実を結んだ形となり、おめでたいことこの上ありません。来春公開が決まっているそうなので、楽しみに待ちたいと思います。

ベルリン国際映画祭は2021年から男優賞、女優賞というカテゴリー分けを取りやめジェンダーニュートラル(性的中立性)を謳い、男女優賞の代わりに主演俳優賞と助演俳優賞を設けています。今年の受賞者、主演俳優賞は、ノンバイナリーの子供を演じたスペイン映画『20,000 Species of Bees』のソフィア・オテロに、助演俳優賞はトランスのキャラクターを演じたドイツ映画『Till the End of the Night』のテア・エレに贈られました。『20,000~』は同業者の方々の間でも評判になっていたので、早晩日本の配給元も決まるのではないかな?と想像しております。それにしてもLGBTQについての理解が、日本より何歩も先を行っているベルリンです。“多様性”という言葉がまだまだ地に足がついていない気がする日本ですが(国会議員の差別発言とか耳にするにつけ、一体何周遅れなのだろう…と暗澹たる気持ちになってしまいます)、世界はどんどん先に進んでいます。

ベルリンの毎朝のジョギングコース、ティアガルテン公園内に謎のモニュメントがあって、何年も前から「コレは一体何だろう?」と思っていたのですが、前回映画祭に参加した時に調べてみてやっと何なのか判明しました。それはナチスによって迫害を受け殺された同性愛者の方々の慰霊碑でした。ヒトラー政権下では約5万人の同性愛者が強制収容所に送られるなどし、その多くが死亡したと言われていてこの慰霊碑は、2005年に建設されたブランデンブルグ門近くにある“虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑”(トップに画像貼りました)に続いて、2008年に建てられたそうです。

同性愛者慰霊碑。四角いところを覗くと、モニター画面が写るはずでしたが真っ暗でした。

第二次大戦後ドイツで男性同性愛を禁ずる刑法の下で、「愛する自由」を求め続けた男の20余年にもわたる闘いを描いた『大いなる自由』というオーストリア=ドイツ合作の映画が、7月7日かBunkamuraル・シネマ渋谷宮下で公開される、というニュースをこの間読んだばかりなのですが、実はうちの会社でも今秋、同性愛差別を真正面から描いた作品を公開することになっています。なので今回、その慰霊碑に改めて手を合わせに行ってきたのでした。今後少しずつ情報を解禁していく予定ですので、チェックして頂ければ幸いです!

さて。ザジ通信的には、この一週間の国内での出来事にも触れておかなければなりませんね。一番大きなトピックスは、パブリシティを担当させて頂いていた『逆転のトライアングル』が2月23日に初日を迎えたこと。満席回も多数出る好調なスタートとなりました。24日の新聞各紙は全紙大枠で映評が掲載され(朝日は監督インタビューで、映評は次週の予定です)、パブリシストとしての役目も果たせた感じ。3月13日に発表になるアカデミー賞に向けて、ますます盛り上がって欲しいところです。加えて一昨日にはリューベン・オストルンド監督が、今年5月のカンヌ国際映画祭の審査委員長に決まった、というニュースも飛び込んできました。コンペティション部門の出品作はまだ発表になっていませんが、ひとクセもふたクセもある監督が、どんな映画にパルムドールを贈るのか、今から楽しみです。

28日は、初日まで2ヶ月を切った次回の自社配給作『セールス・ガールの考現学』のプレス向け3回目の試写も実施されました。モンゴル大使もご来場下さり、ご鑑賞後「多くのお客様にご覧になって頂いて、モンゴルを知るきっかけになって欲しい」とおっしゃっていました。頑張ってヒットさせなきゃ、です。公式サイトのコンテンツも充実してきましたので、ぜひこちらもチェックしてみてください。

texte de Daisuke SHIMURA


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