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息が詰まるような渦から抜け出す、そんな数年と仕事の話の「書きかけ」

 恵まれた大学時代だったと思う。これ以上のぞめないほどの出会い、機会をいただいた。行きたいところに行き、会いたい人にも会った。大いに語り、大いに学んだ。ところが、大学生活が終わりに近づくにつれ、ぼくはなぜか、行き詰まりを感じるようになっていた。

 数ある仕事や職種のどこに身をおけば、自分の存在は最も役立つのだろう。無数の可能性があるなかで、いかに一つに絞り込んでいけばいいのだろう。はてさて、ぼくは、何を選びとり、生きていくのか。

 一年の休学というモラトリアムは、人生のテーマを「境界・線引きを問い直す」ことと表現するに至るかけがえのない観念の旅ではあったが、同時に、師からの「大人になるということは、断念の血の海を渡ること」という重みある言葉の遭遇でもあった。

 あれから四年近くの月日が流れようとしている。いまぼくは、清々しいと言い放つほど平穏無事な日々を送ってはいないが、自省しながらも前向きに、非力に悶えながらも自信をもって、葛藤しながらも未来志向に、生きている。きっと出会った人には、「いきいきしてる」と感じてもらえるはずだ。

 いまの仕事の代表は、はじめてぼくと出会った2020年2月、「こいつ、このまま放っておいたら社会の狭間に落ちてまう」と思ったらしい。実際当時のぼくは得も言われぬ疎外感をおぼえていたし、適応・順応するでもなく、心身が壊れるでもなければ、人生をかけて向き合おうとしていた「狭間」に飲み込まれていたんだと思う。

 そんなぼくを引き上げてくれたのは、仕事だ。仕事で出会い、関わる人たちだ。そして、その人たちの向こうに、無数の命が連なっているというリアリティだ。

 生きることと働くことは、ぼくにとっては切り離すことができないものになった。それなりに「働きたくない」と思っていた気もするから、自分も驚きだが、「働く」「仕事」に対する認識は大きく転換したんだと思う。
 働くという社会的実践を通して、ぼくは学び、変化している。だからこそ「いきいき」と生きている。

 「SOCIAL WORKERS LAB」というプロジェクトから今年4月に発展的に法人化した「一般社団法人ぼくみん」の理事・ファシリテーターがぼくの仕事だ。

 京都・滋賀・東京・伊豆大島・福島・長崎などを住所不定と言われながら行き来し、「福祉なんですよね?」「地域づくりですか?」といった声に「分野や領域を越えて」「異なるもののあいだで」と、うにゃうにゃ答えながらやっているから、大概「結局よくわからないけど、無理し過ぎず、身体だけはだいじにね」と言われる。

 それでよいと思っているところもある。担当や職種など、「自分の仕事」という枠を決めて仕事をしないこと、「ざわけん」を仕事にすることを選んでいる。見えていないものに自覚的であるため、自分以外のものと切り離されないために。

 とはいえ、もう少しくらいぼくの仕事を言葉にしておこう。

 ぼくは、異なる領域やさまざまな立場を理解し、関係づけ、「開かれた対話と創造の場」を生む、あいだの担い手を仕事にしている。冒頭にリンクを貼り付けた、3年前のテーマそのまま仕事・社会的実践につなげることができている。

 違う角度から言葉にすると、最近、ぼくは「悪循環から好循環へ、ともに抜け出す」こと、を仕事にしているんだと認識するようにもなった。

 ぼく自身が行き詰まりを感じていたように、人は、文字通り「息が詰まるような」苦しみに溺れ、行き悩んだりする。組織も、これまでのパターンややり方ではうまくいかず、次を見出せないこともある。地域もまた、次々に課題のふりかかってくるなかで先行きが見えなくなったり。悪循環というのは、一体いつの間にかはまってしまうもので、その渦中でそれを認識することが難しく、認識したとて改善するわけでもないという大変厄介な代物だ。

 そんな渦から、流れをつくり、新しい展開をつくること….とここまで書いてみて、「違う角度」以下の部分は、自分の仕事を十分に捉えられていない感じがしてきた。どうも、そういうこともやっているのだが、違う。むずむずする。

 というわけで、思考がグルグルと深い渦へはまって筆が詰まりそうになってきたので、思い切って、この状態でこの文章は出しておこうと思う。

 2023年12月9日のざわけんの現在地。自分の仕事が言葉にならないということを刻んでおこう。

 そもそもこの文章を書こうとしたのは、ぼくみんの仲間を募集しているからだった。日本仕事百貨で、ぼくたちは一緒に活動してくれる「文脈のデザイナー」をさがしている。

 ぼくたちの仕事に興味をもってもらえるような文章を、と思っていたはずなのに、いざ仕事のを説明しようとすると「言葉にならない」し、結局何をしているのかわからないという不可解な文章を書いてしまった。

 こんな書き方するんじゃなかったと反省しつつ、こんな不格好な「書きかけ」もまたひとつの表現ということにして、あとは読んでくださる方に委ねよう。

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 というわけで、ぼくみんの仕事をもう少し知りたい方がおられれば、こちらの記事をご覧ください。

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