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はじめての一人暮らし

学生寮に住んでいた時、お風呂に入りながら、江國香織の「きらきらひかる」を読んでいた時期があった。

繰り返し読んでいたのは、おもしろかったからというのもあるし、古い本だったので湿気でくしゃくしゃになってもいいと思ったからだった。小さなバスタブで体を小さく折り畳んだ姿勢で、木々と鳥と晴れた空の気配を感じながら、よんでいた。

引越しの時に、くしゃくしゃなので捨ててしまったと思う。

学生寮やシェアハウスを経て、実家からの家出や仕事の変化があって、最近初めて賃貸を借りた。

ばかすかお金は出ていきつつも、なんとか生活している。世の中の人は家を借りるときにこんなにお金を準備してたのかと、貯金ができるくらい収入がたくさんあるんだなと、みんなお金持ちで私は貧乏なのかもしれないなどと考えることもあった。

家で足を伸ばしてお風呂に入ることができるようになった。部屋は整いつつも、寂しいが、自分のお風呂やキッチンがあることが嬉しい。

GW中にお風呂に入りながらドラマを見た。多幸感があった。エイラクという中華ドラマで、主人公が機転をきかせて問題を乗り越えていく宮廷物語だ。ただだれも幸せではない。女性はカゴの中の鳥のまま不自由に生きていかざるをえないのだという、セリフがリアルでつらい。(中華ドラマにもジェンダーの波が来ているのを考えると時代の変化を感じて嬉しい部分もある。)

「きらきらひかる」では、主人公は医者と結婚し、生活は安定してるが、精神面が安定しない。不安定になっては、長風呂をして好きなお酒を飲み、ぐらぐら酔っ払う。お風呂に入りながらこのシーンを読むと、その気持ちが想像できるような気がして面白い。主人公の淡々とした生活、ぐらぐらした精神でも、周りと反発しあっていても、仲良くしていても、パートナーと適度な距離で支え合う。

パートナーはゲイで、恋人がいる。それぞれの関係を適度にきづいて生活していく。

こんな生活に憧れることが以前は多かった。今は、毎日仕事でへとへとで、土日には人と遊びつつも、いろんな人との関わりが希薄になることが増えてきた。

「きらきらひかる」のことを考えると、憂鬱な部分を思い出しつつもタイトルを思い出してほっとする。

この人たちは、それぞれ自立していて、一人では生きていくのが難しいかもしれないけど、必要な人を選んで、ぐらぐらしながら支え合っていて、きらきらしている。

昔住んでいた学生寮の小さなバスタブで、森林や晴れた空、鳥の気配を感じながらこの本を読んでいた当時の思い出もつられてきらきらしている。

はじめての一人暮らしのお家も同じようにきらきら暮らしたい。手始めに、古本屋できらきらひかるを買ってこよう。

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