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建築とWeb ― メタボリズムとアトミックデザイン

建築とWebは似ていると思います。(4回目)

メタボリズム建築

最近はメタボリックシンドローム、通称メタボが日本語としてありますので、メタボリズム建築と聞くと太っちょな建築かな?なんて思うかもしれません。メタボリズムとはもともと新陳代謝を意味しており、建築の新陳代謝を体現したものがメタボリズム建築になります。

メタボリズムの代表的作品に銀座にある、「中銀カプセルタワー」があります。箱がくっついたような特異な外観が目を引きますが、1つ1つが交換可能で、細胞の新陳代謝のように、建築もまたそうであることを体現しています。

アトミックデザイン

デザインの最小要素を原子と捉え、原子が集まってパーツを作り、パーツが集まってさらに大きなパーツとなり...という具合にスケールしていきます。こうしてできたモジュールを組み合わせてデザインを構成していくスタイルです。

これは、昨今の流行りのReactやVueといったフロントエンドフレームワークと相性が良いデザイン手法です。 モジュール化することにより柔軟な変更・拡張が可能になります。この辺りの思想は先のメタボリズムに通じるところがあります。

それぞれの時代背景

メタボリズムが興ったのは高度経済成長の時代です。人口増加・都市化が進み、それに伴う住居問題、インフラ供給などの問題が表面化していました。かつてない拡大に都市機能やインフラはどうあるべきかを求められていました。そこで、新陳代謝という考え方が菊竹清訓や丹下健三らによるメタボリズムは提唱されました。

アトミックデザインも出現したのはWebの役割が拡大している時代です。Webサイトはかつての、単に情報を伝える画面としての役割だけではなく、Web上で高度な処理をこなすアプリケーションとしての場面も増えてきました。1サイトあたりのページ数も固定デザインの数〜数十ページという規模ではなく、動的に内容がいくつも生成されるような大規模なものになってきています。

両者に共通するのは、「拡大する世界」の中で生み出されたということです。

無限の広さ

大枠から決めて、徐々に詳細を詰めていく「大から小」へのアプローチは良くあると思います。これはデザインの話だけでなく、プロジェクトなどにも当てはまります。この手法が有効なのは有限の範囲内にあるものです。最大の領域があるからこそ「大」を決めることができ、「小」へと進めます。

しかし、領域が無限の場合はどうでしょう?どんな領域を設定しても、それは十分な領域ではないかもしれません。

最小の要素を定義と、それらの結合するルールを組み合わせていけば、理論上、無限に拡大にも対応できます。もちろん、都市にもWebにも限界はありますが、スケールしていくことを前提とした時、「小から大」へのアプローチが有効になります。

Webの新陳代謝

メタボリズム建築は新陳代謝というキーワードを用いて拡大と、そして持続可能な都市像を示していました。古くなれば個々のユニットを取り替えることで、更新していきます。アトミックデザインも同様に更新していくことを念頭に置いてあり、その思想はメタボリズムに通じるところがあります。

Webのトレンドは、建築の時間軸からすれば圧倒的に早いスパンで物事が移り変わります。Webデザインは流動性が高く、さまざまな外的要因によってデザインは変わっていきます。メンテナンス性、変更に強いデザインというのが求められている中で新陳代謝というキーワードでデザインを見つめ直すのも良いのではないでしょうか。

アトミックデザインの未来

メタボリズム建築は残念ながら建築の主流思想とはなりませんでした。アトミックデザインはWebの中でどういった立ち位置になっていくか、注目を続けたいです。

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