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ある日、美少女が話しかけてきた。

中学3年の頃、各クラスにそれぞれ高嶺の花がいた。

私のクラスでは隣の席のある少女。

顔は問答無用で可愛い。

口数は少なく、クールビューティー。
でも、喋ると可愛らしい声をしている。

背は低すぎず、高すぎす。
脚が細くて華奢。

とある男子がその子のストーカー行為を行った程、魅力的な少女だった。

同じ部活だったが、魅力的過ぎて全く話せない。
ましてや、連絡先なんか知る訳もない。
(LINEを交換しておけば良かったと死ぬほど後悔しています…)

 

だから、その子が話しかけてきた時、本当に戸惑った。

美術の授業で、自分の好きな絵を描くことがあったのだが、私がどんどん下書きを描き進めていくのを見た彼女は、「何描いているの?」と話しかけてきた。

心の中で、驚きと喜びが要り混ざっていたが、平静を装いながらも私は、「小さい頃よく行った公園の滝だよ」と答えた。

相槌を打ちながら聞いている彼女はとても綺麗だった。

それだけで話が終わらないように、心中必死で「ここで○○をして…、○○な思い出があって…」と話を繋げたが、どんなにつまらなくともちゃんと相槌を打って聞いてくれている。
それだけで、嬉しかった。

 

ある日のこと、朗報が入った。
修学旅行でその美少女と同じ班になったのだ。

私はもう心の底から嬉しくて、彼女と喋れる機会が増えることに喜びを感じていた。

彼女は他の班のメンバーと上手く馴染めていないようだったが、他のメンバーとコミュニケーションが取れるように自分が橋渡し役となれたことが凄く嬉しかった。

 

班の中で係を決める時、自分から率先して「写真係になりたい」と言った。

理由はただ一つ。

 
「合法的に彼女の写真を撮れるから」である。

 

そうして見事、写真係の座を射止めた私は、修学旅行中「彼氏の目線シリーズ」の如き写真を撮り続けた。

もちろん、他のメンバーの写真もちゃんと撮ったが、彼女の写真がぶっちぎりで多かった。

写真を撮る中で、彼女の癖にも気づいた。

 
親指で前髪を整える

 
私は、人差し指、中指、薬指の併用型で前髪を整えるのだが、親指で前髪を整える人を初めて見て、それが目に焼きついてしまったのだ。

前髪を整える姿までもが絵になるなんて、良い意味で罪深い女性だと思った。

 

それにしても、彼女は一回も写真を撮られることに関して「嫌だ」とも「何故撮るのか」とも聞かなかった。

かなりポジティブに捉えるならば、私を信用していてくれていたから聞かなかったのだろうか。

そうであって欲しいと思うが、今現在彼女が何をしているのかすら知らないため、知る由もない。

本当に夢のような一時だった。
(実際、in夢の国での出来事だったし。)

 

 

夏休みが明けてから、彼女は学校に来なくなった。

本当にたまに来たとしても、教室には入らず廊下に居る。

その「たまに」の数は少なく、3回程度だったと思われる。

でも、来ると私に喋りかけてくれる。

そして廊下で話す。

 

「どうして私だけに話してくれるのだろうか」

 
今でも疑問に思っているし、この先も疑問のままだろう。

でも、その疑問が解決しない間、彼女と喋れるのがただ嬉しかった。

 

彼女以上に魅力的な人に私は会ったことがない。

 
この感情は恋でもないし、憧れでもないが、
一生忘れられない気持ちとして私の中にあり続けるだろう。

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