見出し画像

ローローの出エジプト日記⑨ - カイロの異邦人たち


「そっちは今、砂嵐が大変なんだって?」


昨夜、カイロから電話(ライン)がありました。

カイロに30年近くも住んでいるポーランド人の旧知人からです。


今回の電話の目的は、日本メーカーのカメラが欲しいので、日本で立て替えで買ってカイロまで持って来て欲しい(←即却下しました)、

そして某エジプト人(共通の知人)の悪口と、エジプトの政府機関で働いているのに、給料が米ドル通貨からエジプトポンドの通貨(紙屑同然)に切り替えられた、と怒り心頭の愚痴...


一方的にマシンガントークしてきた後、唐突に

「ところで、日本は砂嵐が大変なんだって?」と言ってきました。

は?

「ゴビ砂漠の砂嵐がずいぶん舞っているらしいじゃないか」

 ゴビ砂漠!?

突っ込むとゴビ砂漠=日本、と思っているようで、もうびっくりです。


「ゴビ砂漠は日本じゃない」

と言い返すと

「日本だ」

と反論されました。

お前は何を言っているのだ、思えば三十年近く前から「日本人は毎日生魚を食べている」「日本語では人を呼ぶのに"~さん"と"さん"だけしかない」など、

当の日本人の私が否定しているのに、そう言い張るし相変わらずイラッとします。

じゃあなんでいまだにやり取りを続けているのか、といえばやっぱりあの大変なエジプト留学時代に出会った元クラスメートの外国人たちとは、"戦友"のような絆があるからとしか言えません。


それにしても、カイロの外国人(異邦人)は非常に変わり者が多かった、夜ばいはヤバいホテルの次に泊まった安宿にも、奇妙な外国人たちがそこに"住んで"いました...


まんが: けんいちパンダさん

画像1

↑腕の"じゃらじゃら"がエジプトに長く住んでいる感が!😂👏

画像2


画像3


「トランジットで一泊だけするはずが、もう23年カイロに住みついちゃっているの」


とさらりと言ったドイツ人のオバハン。あまりにもインパクトが大きくて、一生忘れません。

他にもカイロの安宿(当時一泊1~5ポンド(30円ー150円)には、こういう中年ヨーロッパ人の変わり者たちが結構おり、

長年カイロの安宿に"住んで"いるという伝説の日本人(♂)もいたそうですが、私は面識ありません。


【何故カイロにずっと住むのか】

まず物価が安い。滞在(観光)ビザも簡単に何度も永遠に延長できる(できた)。某外国人も十年以上観光ビザ延長をし、カイロに住んでいました。しかも観光ビザなのに、みんな仕事もしていました。


カイロは適度にまあまあ都会だったし、毎日何かしら珍事件が起きるので退屈しない、また深読みすると、白人女性たちはエジ男にちやほやされ、女王様のように扱われるカイロを離れがたい、

そして白人男性(特にイギ男)はアラビアのローレンスかぶれをしていて、ローレンスになりきり、植民地の君主のごとく振る舞うのが気持ちがいいからではないからでしょうか。

さらに、のんびりできる。やれ働け、やれ何かしろ、やれ将来のビジョンを見据えろ、老後の心配をしろなど、エジプトでは誰ひとりいいません。

みんながいい加減でテキトーなので、自分も怠け者でいられる、実際一日中何もしないで、茶店にずっとただ座っているだけのエジプト人オッサンも多かった...


画像6

『Cairo Time』(2009カナダ)の映画。
中東のどこかのUNで働く夫と、カイロで一緒に休暇を過ごすためにエジプトに飛んで来た人妻のジュリエット。
しかし夫は仕事の関係で、なかなかカイロに来れない。仕方ないので、ジュリエットはボディーガード兼観光ガイドとして、あるエジプト人男性を雇う。
そのエジ男氏はキュートで優しくジェントルマン(←絶対存在しないタイプ)。ジュリエットはときめきを覚える。
二人はいい感じになっていくのだけれども、結局夫が現れ、キュートなエジ男氏はバイバイされておしまい...
全く面白くない眠くなる映画で、そもそもエジ男君役の俳優はエジプト人じゃないし、陳腐な酷いストーリーだ、どうしてこんなDVDを買ってしまったのか後悔しましたが、欧米では評価が高い映画でびっくりしました。
言われてみれば、中年の白人女性たちの"願望"が詰まった内容だからなのかも!?


【在カイロの異邦人の国籍は?】

画像4

https://www.statista.com/statistics/1237888/stock-of-international-migrants-in-egypt-by-country-of-origin


上の表(2020年)のとおり、カイロに住む外国人の主な国籍は、出稼ぎのスーダン人や難民のパレスチナ人です。

90年代でも、彼らはオールドカイロの貧しい地域に彼らは多く住んでいました。


マーディー、ヘリオポリスの高級住宅街はアメリカ人たち、もう一つの高級住宅街のザマレックには日本人駐在員及び日本人留学生たち、

イスラム教のアズハル大学にはマレーシア人やインドネシア人留学生、

カイロ大には一年限定の交換留学生、大学のアラビア語コース受講の外国人留学生たち、

ちなみにさらっと書きますが、エジプト人と日本人の両親を持ち、アラビア語を話す国で生まれ育ったという日本人を除き、

カイロ大に四年通い卒業出来た"普通の"日本人なんて、少なくとも私は聞いたことはありません。


授業料の馬鹿高いアメリカン大学には湾岸諸国のご子息やご令嬢たちが大勢通学しており、運転手付リムジンを大学の外で待機させていました。

成績の良くない湾岸人の富豪の子供が、大金(オイルマネー)でどこかの大学に潜りこませるというのは世界中の大学でよくあることでしたが、カイロのアメリカン大学にも

「ああおそらく大金払って入学させてもらったんだろうな」

としか思えない勉強の出来ないお馬鹿ご子息ご令嬢もいました。


同大学のアラビア語コースはヨーロッパ人とアメリカ人ばかりで、少なくとも私のクラスには私ともうひとりのトルコ人を除き、全員白人だけでした。


ブリティッシュカウンシル(語学学校)の英語コースにはカザフスタン人の若者たちが多かった、彼らが日本人の若者とファッションもメイク、髪型もそっくりだった驚きははっきり覚えています。

例えば、当時日本で流行っていたミニサイズのリュックサックや、スケルトンのビニール製のバッグ、上げ底ブーツ、ミニスカート、安室奈美恵風メイクをカザフスタン人の女の子たちがみんなやっていたのです!


夜のクラブ(ディスコ)に繰り出すと、お金持ちのエジプト人ファミリーのところで働いている若いフィリピン人の女性お手伝いさんたちが肌を露出したセクシーな格好で踊り明け暮れており、

五つ星ホテルのカジノはカイロ長期滞在者のお金持ち湾岸人たちだらけ、

そんなに大勢ではなかったものの、五つ星ホテルのバーに行けば米軍のアメリカ人、サッカー選手のナイジェリア人たち、

旅行業界では、日本人が大勢働き

遺跡発掘現場は国際色豊かでフランス人、アメリカ人、トルコ人、日本人、オランダ人などおられた記憶です。


余談ですが、近年は発掘作業もエジプト人チームが主導権を握ろうとしているようです。

でもエジプト人チームはいろいろ"やらかして"いるらしく、ベテラン外国人発掘調査隊員たちは、非常に歯痒く心配で見ていられないらしい...


カイロのオーケストラ楽団には東欧出身者が非常に多く、90年代はエジプト人女性の音楽奏者は皆無だった(はず)なので、オペラハウスでフルートやバイオリンなど演奏する女性奏者は全員東欧人でした。


肌が黒いアフリカ人の出稼ぎ者たちは、ずいぶん嫌な目に遭っていました。エジプト人は肌が黒い人を見下す傾向が強かったからです。

エリート職でも肌が黒いと、方々で不快な目に遭うらしく、プロのサッカー選手のナイジェリア人たちも、アフリカ諸国の外交官たちも「エジプト人は本当に失礼だ」と激怒していました。

アジア人のお手伝いさんたちもずいぶんぞんざいな扱いを受けており、アジア人イスラム教徒の留学生たちもエジプト人に下に見られることが多かったらしく、みんな怒っていました。


日本人の場合は"名誉白人"のような立ち位置だったと思います。わりとどこでもかしこでもちやほやされ、優遇されていました。

でも、それを良く思わないエジプト人たちもおり、特に白人至上主義のエジプト人らには、やっぱり私も露骨に差別を受けました。

また高級住宅街では問題ありませんでしたが、貧しい地域に行くと、(スカーフを被っていましたが)私もずいぶん石を投げつけられたものです。

どこの国でも、高級住宅街よりも貧困街の方が露骨な人種/民族差別が起こりやすいんじゃないかな、というのが私の個人的な意見です。


日本でも同じ傾向がありますが、エジプトでも白人は白人というだけでずいぶんいい対応をされていました。

五つ星ホテルのエントランスでも、白人というだけでバックパッカーの貧乏くさい"なり"でもスムーズに通してもらっていました。


【これからエジプトへ行く予定があるなら】


もしこれからカイロに移住/個人旅行の予定がある日本人へのアドバイスがあるとするならば(短期滞在やツアーは別)、

男性はやはり髭を生やした方がいい、男でも短パンは観光地以外では控えること。

やはりイギリスやフランスのマナーの影響を受けている国なので、高級レストランのディナーにはせめてセミフォーマルの服装をすること。


恋人同士の男女ペアの旅行および同棲は、嘘でいいので夫婦だと言うこと。

女性はフェイクの結婚指輪をはめること。(私もはめていました) 


庶民街に行くときはスカーフを被り、長袖長裾そして身体の線も隠してお尻の形もくっきり見えないようにすること。(だぶだぶしたダサいワンピースなどがお勧め)

そして多くのエジ男君は外国人女性に会うと、挨拶で握手やハグ、頬へのキスをしようとしてきますが、

エジプトでも日本でも、男女がそのような挨拶をする習慣はありません。なので、にこやかにきっぱり断ること。そうすれば、その後見くびられてしつこく誘ってくることはそうありません。


と、ここまで書いていたら、また在カイロの異邦人の旧友から電話がかかってきました。今度は何の用だ、と思いきや

「トヨタの車を手に入れた」

と単なる自慢電話だったのですが (Shiominさんも仰っていましたが、アフリカの人々はトヨタ自動車が大好き)、

ついでにエジプトの観光業のことを尋ねてみました。


昨日(6/8)もギザのピラミッドやサッカラ(階段ピラミッド)は、ガラガラだったそうです。

ガイドを連れた外国人個人客がぼちぼちいるだけで、観光バスの団体は全くいなかったとか。

ま、ピラミッドがそこにある限り、いずれすぐにまた観光業元に戻り賑わうでしょう、

ギザのピラミッドもルクソールの街も世界中の外国人を乗せた観光バスだらけなると思います。と同時にテロも復活するんだろうなぁ...


漫画は次にエジプト人家庭にホームスティ、そしてやっとアラビア語クラスに通い出します。だけどもやっぱり"事件"が起きて...!


つづく

↓頑張れ~!!





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?