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シーン4:ひとりカフェデビュー(カフェ、コーヒーが好きな理由 ③)

先日から自分がカフェ空間やコーヒー好きになった理由を探すため、いろんなシーンを思い出したり、オススメのカフェを紹介したりしている。

先日も書いたが、大学3回生くらいからデート的なタイミング等でおしゃれカフェに行く機会が出てきたのだが、いわゆるオシャレカフェに行くのは「人と会って喋る」タイミングばかりであり、一人でコーヒーを飲む機会といえばもっぱら、ミスドやマクドといったチェーン店であった。

実家暮らしでバイトもしていたので貧乏学生というわけではないけども、「お金の使い方」がわからないまま大学生をやっていたので、一人で飲む一杯のコーヒーにかけられる値段は300円くらいまでが妥当だった。(だからタリーズやスタバもここに入ってこない)

一方で、誰かとカフェに行ったり、チェーン店のコーヒーを飲んだり、(シーン5やシーン7でも書く予定なのだが)自分でコーヒーを淹れたりしているうちに、コーヒーを飲むこと自体も好きになってくる。さらに建築的な興味で、町家やオフィスをリノベーションしたカフェが京都にたくさんあるということに気づき始めた。

そこで、人と会う、おしゃべりのためではなく、純粋にカフェの内装を観察したり、コーヒーを飲みに行ったりするために、カフェに行きたいと思うようになってくる。

そしてようやく(時期が定かでないがおそらく大学4回生の時)、思い立ってひとりカフェデビューをしたのは「月と六ペンス」である。

カフェ激戦区の京都の中でもかなり有名な部類に入るだろう。タイピング音もお断りの静寂に包まれたおひとり様専用カフェだ。(実際には、2人でコソコソくらいは大丈夫)ずいぶん前から知っていたのだが、なんせ寂れた雑居ビルの2階、マンションの1室のような入口のため、扉を開けるのに勇気がいる。

満を持して、鉄の扉を開ける。有名店のため満席で入れないこともあるのだが、初めて行った日は、確か大雨で客が自分ひとりだった。(写真は多分2回目?)

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静謐な空間でコーヒーと対面する。コーヒーとチーズケーキの味はほぼ覚えていないが、どこかの雑誌で「冷めても美味しい」と書かれていて、それを味わうためにも、ゆっくりゆっくり飲んでいた記憶がある。ただ、椅子やカウンターのサイズ感等は身体に馴染むのだが、緊張が相まって、持ってきた本を読もうとしてもどうも落ち着かない。。。

カッコよくオシャレにカフェでコーヒーを飲む、というのは自分にはできないなぁ、と思いながら、本棚に刺さっている文庫本を手に取ってみる。茶色くなった文庫本やコンクリートの梁のひび割れから、(何百年ではなく)何十年というリアリティのある歴史を感じる。


おしゃれカフェは友達とおしゃべりをしたりするのに、打ってつけの場所もあれば、ひとりでゆっくり何かに向き合う空間でもあるということには後から気づくのだが、とにかくあのタイミングで「月と六ペンス」を訪れたのは一つのターニングポイントだっただろう。これをきっかけに、ひとりカフェによく行くようになった。


ところで、この店名の「月と六ペンス」 サマセット・モームという作家の小説のタイトルなのだが、ほんの1年くらい前にようやくその小説を読んだ。

タイトルである「月と六ペンス」は小説にも全く出てこないし、いろいろ腑に落ちないところが多い。が、主人公が語る「ストリックランド」という画家の絵画に対する静かな狂気は、コーヒーカップの底の見えない奥深さと通じるところがあるように感じる。と無理やり関連付けてみても、やっぱりしっくりこないのが奥深いところだというスパイラル。

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