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プロ野球選手を変えた!誰でもパフォーマンスを「呼吸」で向上させることができるー大貫崇氏インタビュー ―

私たちZAKONE(ザコネ)は、睡眠業界を盛り上げるために生まれた、企業や個人を繋ぐコミュニティです。こんにちは!ライターの上石です。


人間が生きるうえで欠かせない活動「呼吸」。

呼吸は身体中の血液を運び、筋肉へ働きかけ、精神状態までに影響します。

ZAKONEのメインテーマである「睡眠」をはじめとし、呼吸はさまざまな活動の土台となりパフォーマンスレベルを左右する重要なキーです。


今回は呼吸の第一人者であるBP&CO.代表・呼吸コンサルタントの大貫 崇氏にインタビューさせていただきました。

アメリカではアスレチックトレーナーとして日米のトップアスリートとかかわり、現在京都東山に「呼吸専門サロン ぷりーずぷりーず」を経営される大貫さんに、呼吸に辿り着いた背景や重要性、呼吸を広めるアプローチについ
て伺います。


BP&CO.代表・呼吸コンサルタント 大貫 崇氏。
大貫さんが経営している「呼吸専門サロン ぷりーずぷりーず」にて。

―アメリカにいらっしゃったときは、アスレチックトレーナーとしてお仕事をされていたと伺っていますが、どのようなお仕事だったのでしょうか。


アスレチックトレーナーを知らない方も多いですよね。

例えば今だとメジャーリーグに大谷翔平選手がいるじゃないですか。彼にデッドボールが当たったりしたときにベンチから人が出てくる人がいます。その役割を担うのがアスレチックトレーナーで、僕もそういう仕事を実際にマイナーリーグでしていました。

現場で起きた怪我をみて、それがどんな怪我なのかを判断して誰に繋いだら迅速に治るのかを判断し、その場でプレーが続行できない場合は現場復帰までどんなプランで治療受ける必要があるのかを判断し、実行するまでが仕事です。

―その場の応急処置だけではないということですね。

はい。テーピングを巻くとかもコンディショニングの一種ですが、僕の仕事はそれをコーディネートするものなので、選手がどこでどんなプランで何をするのかを調べてチームで共有しながらコーディネートしていました。

整形外科学的なことももちろんですが、スライディングをして皮膚がめくれた際の感染症予防や、当時はなかったですが昨今ではコロナ対応など、整形外科だけでなく泌尿器科・皮膚科などの多くの病院の中で何処へ連れていくべきか、選手がベストを尽くせるようにベストを尽くす仕事がアスレチックトレーナーです。

―日本でいうとパーソナルトレーナーに近いのでしょうか?

パーソナルトレーナーはジムに行く人にトレーニングをしてその人の体調やコンディションを良くしてあげる仕事です。アスレチックトレーナーもダンベルやマシンを使ったコンディショニングもコーディネートするので、同じことをすることがありますが一部分。

日本ではこのようにジムでからだを動かすという文脈で活躍しているアスレチックトレーナーはたしかに多いです。

でも本当はもっと後ろに幅広い知識量や仕事の幅があって、単純に筋トレしてでっかくなりましょう、ではなくて、筋トレを含めた膨大な選択肢から不調を取り除いて、最適に体を動かすコーディネートをしていくのがアスレチックトレーナーなんじゃないかなと思っています。

―単純な筋トレ以外にもからだを動かして良くしていくアプローチがあるんですね。

はい。コンディショニングは目指している体調がある場合に現状とのギャップを埋める作業を一緒にするんです。

このときにからだを動かして体調を良くすることを“アクティブコンディショニング”と言い、マッサージや治療などを誰かに施してもらうことを“パッシブコンディショニング”といいます。

日本ではゴッドハンドと呼ばれるようなマッサージ師などが存在して、パッシブコンディショニングが優秀なので「からだを動かす」までに至らない。日本に帰ってきた直後に欧米との差を感じたのはこの部分ですね。悪い体調をからだを動かすことで治せる、ということ自体があまり日本では知られていない。


現在はヘルスリテラシーが高い人、経営者層などは自分自身で動いてコンディショニングするのが大事だとわかっているように感じますが、まだ一般的に届いていないかなと。なのでせめて呼吸だけでもしませんか、と僕は思うんです。呼吸をすればある程度のところは揃ってきます。


特に睡眠は自律神経のコンディションが非常に大切なので、呼吸を適切にできるようなきっかけづくりとして日々活動しています。


―アスレチックトレーナーとして活動されていく中で、最終的に呼吸にフォーカスした理由を教えてください。


僕はアメリカ滞在の最後のほうにアリゾナのダイヤモンドバックスというプロ野球チームにいたんですけど、限られた予算の中で活動するうえでチーム全体が非常にリハビリやコンディショニングに注意を払うチームだったんです。選手が怪我をさせないためにめちゃくちゃ勉強する集団でした。そんな中でチームが取り入れている体幹トレーニングの成果を、勉強して学んだことから再考すると辿り着いたのが呼吸でした。

なんでうまくいかないか、体幹の内側には常に呼吸筋が動いていることを忘れていたんです。体幹で外側をトレーニングするのですが、蓋と底はしていなかった。この蓋と底が呼吸でした。


こうして呼吸を整え出したら体幹がよく機能し始めました。ついでにメンタルも整ってきた。調子悪かった選手がいきなり打てるようになって、今もメジャーで活躍しています。

―呼吸が体幹だけでなくメンタルなど、さらに成果を生み出したんですね。

選手はメンタル面で緊張しちゃっていました。打席に入るといろいろ考えてしまうみたいで打席に全然集中出来ていなかった。だから練習とは違うバッティングになりスイングに迷いが生じてしまう。そんなときに呼吸を整えることをきっかけにメンタルがクリアになり、打席の振る舞いも変わって成果につながりました。

この出来事が僕の中で呼吸に手ごたえを感じるきっかけになりました。それが面白かったですね。呼吸って体幹だけじゃなく、膝を治そうと思ったら呼吸だったり、姿勢やメンタルまで呼吸でアプローチできると。これはプロ野球選手だけではなく他にも適用できることだなと思い、日本に帰ってきたら呼吸をちゃんと伝えないと僕がここにいた意味がないと思いました。こうして最初は身体の専門家向け、そして一般向けに呼吸を伝えるようになりました。

―日本に帰国してからは呼吸の先駆者としてアスリートだけではなく多くの人に呼吸を広めていった効果は感じますか?

感じますね。今ジムなどに行ってちょっと勉強しているトレーナーさんに会うと「まずは呼吸を見せてください」と言われます。呼吸が大事だということが広まっているなど実感します。

ですが一般消費者向けには難しさも感じています。睡眠をはじめ、腰痛やメンタルヘルスが呼吸とつながっているということがわかりにくいですし、本当に危機的状況の場合は医者に行くので呼吸の重要性を実感したり、重要性に辿り着くことが難しいです。サイエンスの弊害とも言えますが眼なら眼医者など、スペシャリストが決まっているのでそこへ行くので全体の土台となる呼吸は注目されにくい。この現状をふまえてなんとか神秘的なものとかスピリチュアル的なイメージではなくサイエンスをベースに呼吸を伝えることができないかと考えています。


―たしかに呼吸の重要性をすぐに伝えることは苦労される分野と察します。今のお話をふまえて呼吸を一般の消費者に伝えるための工夫はされていますか?


呼吸を点数化する際の測定風景。
単純な呼吸だけでなくからだの可動域などさまざまな観点から判断しており、
計測は5分程度で完了する。


はい、呼吸の動きを全体的に見ることで呼吸の点数付けができるようにしました。点数をつけて呼吸に対してAからDまでの評価をつけてお伝えするとみなさん自身の呼吸レベルが思ったよりも悪くて驚かれます(笑)


最近とある企業さまへの健康診断に呼吸の点数付けを取り入れていただきました。私たちスタッフを派遣して、呼吸数や動きをみて点数表をつけ診断します。

その時に呼吸点数が低い方に、体調面の不調を聞くと心当たりがないと答えます。でもよくよく聞いていくと「うまく眠れていない」などの不調があることを伝えてくださります。しかしこれを本人は不調と捉えていなかったりするんです。呼吸点数が悪いことがわかってはじめて自分に不調があることに気付いたりします。


一般消費者の方には足を運んでいただくことの難しさをまだまだ感じますが、企業向けに健康診断の場などにお邪魔させていただいて、呼吸を評価する機会を増やすことでデータも増えていきますし、一回で多くの方々に呼吸の重要性を少しでもお伝えすることができると思うので、今後も力を入れていきたい分野ですね。


―企業向けの呼吸アプローチは福利厚生や社員のパフォーマンス維持向上につながりそうですし、企業にとってもメリットの大きな活動だと感じました。ほかにもチャレンジしたいことやZAKONEとのコラボで生まれるビジネスなどお考えがあればお聞かせください。


今はNECさんが作った呼吸可視化アプリのプロジェクトに関わらせていただいています。このアプリを使うと呼吸の深さや胸の開き具合などが測定できて更に呼吸状態を知ることができます。データ化をして蓄積することで今後に活用できますし、呼吸の改善が誰でも見えるようになるので頑張って完成させたいです。

呼吸をサイエンスチックに見えるようになればもう少し呼吸の重要性を広められるかなと思いますし、今やっているサロン(呼吸専門サロン「ぷりーずぷりーず」 )に来ていただいたりオンラインレッスンを受けていただいて呼吸の呼吸のコンディショニングをする人たちが増えたらいいなと考えていますね。


ZAKONEとのコラボについてはぜひ。呼吸は睡眠にもしっかり繋がっています。寝具やマットレス、パジャマや環境を整えたりすることはみなさんされていますが、ご自身の身体を睡眠のために整えたりすることはまだまだだと思っています。いい呼吸ができるとよく眠れた、途中で起きることがなくなったという声をよく聞きます。いい呼吸はいい眠りに繋がり、良い眠りは良いコンディションにつながりますよね。サロンではお悩みに沿ってコンディショニングを設計できるので、睡眠特化のコンディショニングを企業やZAKONEコミュニティに参加いている方向けにアレンジするのもいいですね。


大貫さんが考案した呼吸の点数表(右上)と開発中の測定アプリ(左下)

―最後に大貫さんが呼吸を通じて目指していることを教えてください。


僕らが目指しているのは「誰もが安心して呼吸ができる文化をつくる」ことです。今はリラックスしにくい世の中になっています。

呼吸にアプロ―チするコンテンツとして風船を用意しています。これをたとえば職場の給湯室に置かれることが常識になったりする社会が目指せるといいなと思います。楽しく風船を膨らませることで呼吸を整えてストレス発散につながったり、プレゼン前の緊張をやわらげたり、オフィス内でも様々な使い道があるかと思います。そもそも風船を膨らませることが呼吸を整えるきっかけになるので普段の呼吸が最適化されて、勝手にコンディショニングができることにつながっていく。この動きをハッシュタグで「#給湯室に風船を」なんて広まっていくといいですね。


―大貫さんのアスリートとかかわる経験から呼吸の重要性に気付き、日本の第一人者として呼吸を広める活動、ただ広める気持ちだけでなく現状を見極めてサイエンスなアプロ―チにもチャレンジされている姿にとても感銘を受けました。今後もZAKONEとの連携をぜひよろしくお願いします。


#休息には風船を


インタビュアー 尾形(NTT東日本)

執筆 上石(NTT東日本)


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