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20010620 どうあい

 かなり昔、「氷山のごとく$${^{*1}}$$」というテレビジョンのドラマがあった。名古屋の商人の話で主演は志垣太郎$${^{*2}}$$であった。

 このドラマの中で名古屋の商習慣について色々紹介されていたと思うが、殆ど記憶にない。ただ一つ憶えているのは挨拶である。店にはいる時「毎度」と声を掛ける。これは普通である。これに対して店の人は「どうあい」と答えるのだそうだ。ドラマの時代設定は大正から昭和初期だったと思う。当時はこのような挨拶が名古屋商人の間で交わされていたらしい。「どうあい」とは、確か「どうぞ、いらっしゃい」が縮まったものと解説されていた。今の時代に実際に使われているかどうか判らなかった。

 学生時代に愛知県で菓子の問屋への配送アルバイトをやったことがあった。先輩に問屋に行ったら必ず「毎度」と挨拶しろ、と言われていた。名古屋独特の商人挨拶「どうあい」が聞けると期待しながら、行く先々で「毎度」と声を掛けたが、「どうあい」と言う返事はなかった。

 そしてついに「どうあい」という返事が返ってきたことがあった。問屋の主人は「毎度」の挨拶に対して確かに「どうあい」と低い声で言った。見るからに頑固そうな主人で菓子の段ボール箱の置き方が少しでもずれていると無茶苦茶怒られそうな感じだったので、いつもよりも丁寧に箱を並べたような気がする。話をしてみるとそれ程でもなかった。

 それ以降、「どうあい」を聞いたことがない。

*1 花登筐テレビ作品
*2 志垣 太郎(しがき たろう)

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