20020626 ○○の素
「素」が付く元素名$${^{*1}}$$に使われる漢字にはそれぞれはっきりした由来がある。殆どが「○○の素」という意味で、「弗素」「沃素」は外国語の音訳$${^{*2}}$$、「臭素」「窒素」は直訳もしくはその元素の特徴から出来た言葉である。
「○○の素」型の元素名で「硼素」「珪素(硅素)」「砒素」の「○○」の部分が「硼砂(ほうしゃ)」「珪石」「砒石」と実生活には馴染みの薄い物ばかりである。これでは「ホウ素」「ケイ素」「ヒ素」と仮名に置き換えた方がいいかもしれない。
これらの漢字を見ていると面白い共通点に気付く。旁(つくり)の部分が繰り返しになっている。それぞれ旁は「朋」「圭」「比」である。「硼」はパソコン上で表示するときの字の大きさが小さいと旁が「用」になってしまうことがあるが、実際の字は「朋」である。
これはその物質の化学的な性質などから作られたのではなく、それらが地中から産出したときの形を表現しているだけなのではないだろうか。「圭」は天然水晶$${^{*3}}$$の形から出来た漢字であろう。水晶の主成分は酸化硅素である。硼砂$${^{*4}}$$や砒石も結晶の形からそれぞれの漢字の旁が当てられたのではないだろうか。「朋」「比」の字のような鉱石というのはなかなか想像できないが、本当にそうだと面白い。因みに結晶$${^{*5}}$$も原子や分子の規則正しい配列の繰り返しである。
この記事を書くに当たって意外なことが判った。硼素の「硼」は硼素の英語名boronの音訳$${^{*6}}$$だというのである。そうすると硼砂は硼素という言葉が出来てから作られた言葉になる。それでは硼素という元素が発見されるまで「硼砂」は何と呼ばれていたのだろう。
*1 20020623 窒素
*2 20000327 音訳
*3 4.SiO2と珪酸塩鉱物の結晶構造(つづき-4)
*4 Rocks and Minerals (A~B)
*5 20000428 CZ
*6 硼素とは - Weblio辞書
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