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20010815 劣化ウラン弾

 劣化ウラン弾$${^{*1}}$$という弾丸がある。対戦車用に開発された弾だ。放射性物質を使うことが開発の着眼点ではない。

 鋼鉄の厚い装甲板で覆われた戦車$${^{*2}}$$を破壊するためには、弾が装甲板を貫通しなければならない。貫通させる方法として大きく分けて二つの方法がある。一つは化学的なエネルギーによって弾を貫通させる方法、あと一つは運動エネルギーによって弾を貫通させる方法である。

 化学的なエネルギーを用いるのは爆薬を使って装甲板を貫く。HEAT弾$${^{*3}}$$と呼ばれる弾はモンロー効果$${^{*4}}$$を利用して装甲板を溶かしながら進入し爆風と溶融した金属を戦車内に飛び散らせる。HESH弾$${^{*5}}$$と呼ばれる弾は装甲板に命中すると弾頭がつぶれて信管により弾の内部の爆薬が爆発する。その衝撃波によって装甲板の内側が破砕し戦車内でその破片が飛び散る。

 運動エネルギーによって装甲板を貫くには弾の速度が速いほど、その重さが重いほどよい。重くするには出来るだけ密度の高い材料を使う。従来はタングステンや鋼を用いていた。運動エネルギーを用いた弾には爆薬を含まないAP実体弾$${^{*6}}$$、貫通後爆発するようになっているAP榴(りゅう)弾$${^{*7}}$$、APDS弾$${^{*8}}$$などがある。

 劣化ウラン弾はウランの密度の高さを利用した運動エネルギー弾である。劣化ウラン$${^{*9}}$$は減損ウランとも呼ばれ、核燃料として有用な同位体元素であるウラン235の含有量が天然のウランよりも少ない放射性廃棄物である。ウランの密度は19050kg/m3でタングステンの19250kg/m3に近い。

 ウラン$${^{*10}}$$の原子量は238.03、タングステンの原子量は183.85である。時々、原子量が大きいと元素の重さも重いと思っている人がいるが、そうではない。ウランとタングステンとを比べてもその関係は逆になっている。原子量は炭素12を基準(12)として、それと同じ物質量$${^{*11}}$$の元素との質量比である。一方、密度は単位体積当たりの重さである。固体の場合、元素によって結晶の構造が違うので同じ物質量でも体積が違ってくる。従って原子量と密度は比例していない。

 元素の中で最も密度の高い物質はイリジウムIrで22650kg/m、原子量は192.22である。  

*1 劣化ウラン弾 被曝深刻
*2 史料館、戦車博物館‐陸上自衛隊第7師団
*3 High Explosive Anti-Tank
*4 Terminal Ballistics:ハ The Shaped Charge Warhead
*5 High Explosive Squash Head
*6 Armour Piercing
*7 Armour Piercing containing High Explosive
*8 Armour Piercing Discarding Sabot
*9 おそろしい劣化ウラン弾
*10 Periodic Table : uranium : index
*11 物質量標準-計量研究所

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