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20030102 構造敏感な半導体

 物質を電気の通りやすさから分類$${^{*1}}$$すると導体、半導体$${^{*2}}$$、不導体もしくは絶縁体の三種類に分けられる。導体とは電気を良く通す物質のことであり、代表的な物に金属などが挙げられる。不導体は電気を余り通さない物質のことでガラスや大抵の樹脂がその代表である。

 半導体とは金属とガラスとのちょうど間ぐらい電気の通りやすさを示す物質である$${^{*3}}$$。半分導体、半分不導体という意味から作られた言葉だろう。電気を通すと言うことに主眼が置かれたので「半不導体」「半絶縁体」という名前にはならなかったかもしれない。もしかしたら英語semiconductorの直訳かもしれない。

 語源からすれば「半」導体なのだが、「はんどうたい」とつなげて発音される。その意味を説明する時以外は「はん どうたい」とは滅多に発音しない。「新幹線」や「抗生物質」とよく似ている。新幹線も「『新』幹線」の筈だが、「しんかんせん」とつながっている。抗生物質は半導体や新幹線とはちょっと違っているが、語源とその単語の発音の仕方がずれてしまっている点で似通っている。語源からすると抗生物質は「『抗』生物質」の筈$${^{*4}}$$だが、「こうせい ぶっしつ」と発音される。

 半導体のうち、ほんの少しの鼻薬$${^{*5}}$$を入れると電気の通りやすさなどの電気的性質が激変する物質がある。これが所謂、半導体産業の飯の種である「半導体」であり、通常はこの性質を持つ物質の総称として半導体という言葉が使われる。単に導体と不導体との中間の電気の通りやすさだけを示す物質を指すのではない。

 こういった半導体は鼻薬$${^{*6}}$$だけではなく、ちょっとした物質の極微小な構造の違いによっても電気的性質が大きく性質が変わる。このような性質を構造敏感$${^{*7}}$$という。普通の日本語の感覚からすると「敏感構造」のような気がするが、構造敏感とは「敏感な構造」という意味ではなく「構造に敏感」という意味である。これはまさしく英語structure sensitiveの直訳である。

 この日本語としての微妙な違和感が玄人っぽさを感じさせる。こんな言葉が自由に操れれば自分が専門家になったような気分になって楽しい。この感覚は、最近、蔓延している「ドラム(日本語としての本来はラム)」「ギター(ター)」「ポップス(ップス)」などの洋楽用語から始まったと推測される単語発音の平坦化と同じ根であろう。

*1 電気のお話その1 - 機械技術屋から見た電気、エネルギー編
*2 概要5-2 半導体
*3 「半導体」-ナノエレクトロニクス イントロダクション
*4 20010124 抗生物質
*5 「半導体」-ナノエレクトロニクス P型・N型半導体
*6 半導体 (semiconductor)
*7 50年をかえりみる;半導体素子研究の周辺

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