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20020430 歩

 子供の漢字練習帳を見ていたらちょっと変なことが書いてあった。

 「止」「少」という漢字の組み合わせで「歩」という漢字が出来ているかのような書き方がしてあった。「少し止まって『歩く』」$${^{*1}}$$と言った風である。「走」と「歩」との対比で作った駄洒落というか、地口である。

 この漢字練習帳には「歩」という漢字の成り立ちがそうであるとは書いていないが、もともとの成り立ちを知らなければ、「少し止まる」が「歩」という漢字の成り立ちだと勘違いしてしまう。様々な知識を片っ端から吸収している時期にこういう間違った若しくは間違いを誘発する情報は与えるべきではない。

 これは大人でも同じだが、大人の場合はその情報が正しいかどうかを判断する自己責任があるので、「知らない方が悪い」「鵜呑みにするのがいけない」となるが、子供の場合はそうはいかない。子供に「知らない方が悪い」というのは大人げない。

 「歩」の「止」は片方の足の形から、「少」はもう一方の足の形から出来た。六書でいえば象形$${^{*2}}$$に分類される漢字である。右足と左足とが組み合わされて出来た。

 単独の「少」という漢字と「歩」の下に付いている「少」はどういう関係にあるか。元々「歩」は「步」と書いた。新字体「歩」は上下で画数を対称にするために「ヽ」を入れたのだろうか。漢字の成り立ちからすれば左右の足を交互に踏み出している様子を描いているのだから、「歩」の上下の画数も対称にした方が判りやすいとなったのだろうか。旧字体よりも新字体$${^{*3}}$$の方が画数が多くなった珍しい例であろう。

 単独の「少」は「小」に「ヽ」を組み合わせて、小さい点の集まりで「少ない」と意味になった。「歩」の下の「少」とは全く成り立ちが違う。

*1 CONNOTE-ハナ通信・No.15-
*2 20000422 象
*3 20010529 斎藤と斉藤

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