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20001206 実数の個数

 昨日の続き$${^{*1}}$$。それでは実数はどうか。実数は自然数と同じ個数なのか。実数というのは分母分子が整数の分数で表せる数とそうでない数の集合である。分母分子が整数の分数で表せない数とは例えば$${\sqrt2}$$とか円周率$${π}$$$${^{*2}}$$等がある。これらを無理数$${^{*3}}$$と呼ぶ。

 この実数に自然数を対応させていく。全ての実数を分数で表すことは出来ないから小数に展開する。小数点以下が延々と続く。割り切れてしまう場合は割り切れた後「$${0}$$」が延々と続く。この小数に自然数を対応させた表を作る。実数全部を表にするのは面倒だから仮に$${0}$$から$${1}$$迄の実数の対応表を作る。$${0}$$から$${1}$$迄の実数と実数全体とは何らかの工夫をしてやれば$${1}$$対$${1}$$で対応させることが出来る。例えば$${f(x)=tan(πx)}$$,$${0≦x<1}$$ とすればよい。従って$${0}$$から$${1}$$迄の実数と自然数との対応表が出来れば実数全体が自然数と対応することが出来ると言える。
 実数の場合、自然数と違って数と数との間にいくらでも数があるので記号を使って表を作ろう。自然数$${n}$$に対応させる$${n}$$番目の実数の小数点以下第$${m}$$位を$${a_{nm}}$$と表す。

「$${0.}$$     $${0}$$     $${0}$$     $${0}$$   ...    $${0}$$    ...  」$${→1}$$
「$${0.}$$  $${a_{21}}$$  $${a_{22}}$$  $${a_{23}}$$  ...  $${a_{2m}}$$  ...  」$${→2}$$
「$${0.}$$  $${a_{31}}$$  $${a_{32}}$$  $${a_{33}}$$  ...  $${a_{3m}}$$  ...  」$${→3}$$



「$${0.}$$  $${a_{n1}}$$  $${a_{n2}}$$  $${a_{n3}}$$  ...  $${a_{nm}}$$  ...  」$${→n}$$


 これで全自然数と全実数との対応表が出来たとしよう。そこで次のような数$${b}$$を考える。

$${b=}$$$${0.}$$  $${b_{11}}$$  $${b_{22}}$$  $${b_{33}}$$  ...  $${b_{nn}}$$  ...

ただし$${b_{nn}}$$は$${a_{nn}}$$が「$${0}$$」の時は「$${1}$$」、「$${0}$$以外」の時は「$${0}$$」とする。

 すると数$${b}$$の小数点第$${n}$$位$${b_{nn}}$$は上の表のどの実数の小数点第$${n}$$位$${a_{nn}}$$と違うので、数$${b}$$は上の対応表に「ない」ことになる。表で対応が出来たとしたのに対応できない数$${b}$$が出てきたということは「実数と自然数とが対応出来る」とした仮定が間違っているのである。
 即ち、実数と自然数とは対応しない。

 自然数も実数も数(すう)の個数は無限個あるが、無限の具合が違うのである。このことはカントールという人$${^{*4}}$$が言い出したのだが、彼がそのことを言い出すまで数学者の誰も気付かなかったのである。

 数は人間が作ったもので、実数や自然数そのものの本質は人間の脳の中だけに存在する物だろう。その中に新しい発見があるというのは何とも不思議な感じがする。思惟のみで存在という言葉が適切かどうかは別として、思惟という行為の中で新しい発見があるというのは何かそこに物があるような言い方で変であるといえば変である。結局、ある考え方の中から新しい考え方が出てきたとする方が妥当なのだろう。
 ただ、初めから何もないところから実体のない物を発見するという言い回しが何か非常に面白い。それがこの文章を書く原動力となっていること自体、精神と物理学的なエネルギーを結びつける現象として捉えることが出来る。そこがまた興味深い。

*1 20001205 数の数
*2 20000108 πの彼方
*3 20000922 整数に近い無理数
*4 Georg Ferdinand Ludwig Philipp Cantor

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