見出し画像

20050101 たった一つの価値

 「世界でたった一つ」という価値観はいつ頃出来たのか。万古$${^{*1}}$$不易の真理のような気がしてしまうが、「たった一つ」が素晴らしいということになったのは近代に入ってからの考え方ではないだろうか。

 厳密に言えば、世の中には同じ物は一つとしてない。どんなに似通ってもどこかが違う。何から何まで全く同じというのは概念の世界だけで、物の世界ではそういったことはあり得ない。これは大昔から皆がそう思っているだろう。

 同じ物がないのだから、「同じ物が沢山ある」方が価値がある。大量生産を行う場合には、同じ形をした部品が大量に製造できないと成り立たない。同じ物はないのだから、実際には「殆ど」同じ物である。形にばらつきがない$${^{*2}}$$ほど大量生産品の部品としては価値がある。世界にたった一つの部品では工業社会において価値が全くない。この様に同じ物に価値が見出されたのは大量生産が可能となった産業革命$${^{*3}}$$以降の話だろう。産業革命によって資本主義が発達し、その恩恵を享受した社会では大量生産された同じ形をした工業製品で身の回りが埋め尽くされるようになった。

 その反発として「たった一つ」の価値が創生された。本来はたった一つが当たり前なので、これに重きを置くというのは価値観の基準が工業化社会にかなり毒されている証拠であろう。

*1 万古焼の発展に多くの努力
*2 JQAホームページ
*3 5 イギリスでの産業革命

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?