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20030607 歴史的仮名遣いと現代仮名遣い

 内田百閒$${^{*1}}$$が、自分の著作を新聞社が勝手に直してしまうので、もう新聞には決して書かない事にしていると随筆$${^{*2}}$$に書いていた。

 勝手に直してしまうのは仮名遣いである。この随筆が発表されたのは昭和三十一年なので、既に現代仮名遣い$${^{*3}}$$は普通に使われだしている頃だろう。内田百閒は歴史的仮名遣い$${^{*4}}$$を信奉してその著作ではそれに従っているのだが、新聞社は現代仮名遣い$${^{*5}}$$に直して掲載しようとするらしい。

 ある時その勝手に直そうとする新聞社から短い文章の寄稿を頼まれたらしい。簡単に断るのは面白くないので、引き受けたようだ。ただし、歴史的仮名遣いと現代仮名遣いとが同時に成り立つようにしたというのだ。こうすれば新聞社で勝手に直されることはなくなる。

 大体ハ行とワ行との活用を使わないように心掛ければできると随筆には書いてある。

 一体どんな文章だつたのだらう。一寸した文を数行書いただけでも歴史的仮名遣ひと現代仮名遣ひとの間に食ひ違ひが出てきてしまふ。漢字を多用すれば仮名遣ひは相対的に減る。ハ行とワ行に加へてかういつた工夫もすれば何とか出来ないこともない。

 更に百閒は歴史的仮名遣いから現代仮名遣いに直すと文章の意味がまるっきり反対になる物を考えてようとしていたらしい。これは相当難しいのではなかろうか。どんな文章を考えていたのか知りたい。

*1 20030514 宮城道雄の事故
*2 驛の歩廊の見える窓 四 假名遣ひ
*3 国語教育コースホームページ 現代かなづかい
*4 Word Word Word Criticism 正字正かな(正統表記)
*5 菊池真一研究室 漢字研究・漢字資料 現代仮名遣い

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