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20000621 赤と紫

 可視光線$${^{*1}}$$の波長より少し長い波長の電磁波を赤外線、少し短い波長の短い電磁波を紫外線という。可視光線のうち波長が長い光は赤く見え、波長が短い光は紫に見える。これから赤い光の外側の領域の光で赤外線、紫色の外側の領域の光ということで紫外線という名前が付いたのだろう。

 しかし赤の外、紫の外ではその光もしくは電磁波の特徴を表すには言葉足らずの様な気がする。「外」という言葉は「内」に対する言葉で、示しているのは一種類の方向しかない。光の場合、「内」というのは可視光線の波長領域を示しているのだが、「外」は外でも赤色の方の外と紫色の方の外があるというのだ。これは言葉の意味として無理があるように思われる。

 英語の場合は赤外線はinfrared、紫外線はultravioletである。infra-は「下方の」という意味の接頭辞だからinfraredは「下の方の赤」、ultra-は「超過した」だからultravioletは「超過した紫」である。日本語のような内と外との関係ではなく、電磁波の名前を波長で並べた時に順番が上か下かで付けられた名前である。この方が波長と名前との関係を理解しやすい。

 ところがinfra-の反対語はsupra-なので言葉の対象性が英語の場合でも崩れている。どちらが先かしらないが、赤外線の発見と紫外線の発見の順番でこのようなことになったのかもしれない。発見の順番で名前の整合性がおかしくなることはある。マイクロ波の波長がミリ波のそれよりも長いのは、最初に10m以下の波長の電磁波をマイクロ波と大雑把に名付けてしまったからである。

 ただし日本語に関しては英語を訳しただけなので、「赤外線」と「紫外線」とでは、熟語としての対称性は整っている。

*1 太陽光線

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