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19991231 大晦日のまじない

 大晦日に便所で「がんばりにゅうどう ほととぎす」と唱えると来年一年間は妖怪に出会わなくなる、ということを以前書いた$${^{*1}}$$。今日はその日である。妖怪がいることを信じていた小学生の頃には毎年これを実行しようとしていたが、毎年大晦日になると色々あって忘れてしまっていた。気付いたときには新年を迎えてしまっているので、その一年は妖怪と出会すのではないかと恐れ、おののいて過ごしていた。

 さて、読者の方から「がんばり入道」ではなく「か」んばり入道だ、という指摘を受けた。漢字では「加牟波理」と書くので「が」んばりではおかしいとのことだ。また水木しげる氏の著書でも「か」んばりとある。
 では「かんばり」というのは何のことであろう。妖怪の名前の成り立ちはある自然現象の名前であったり、既知の現象、物の名前の組み合わせである。従って妖怪の名前の語源は殆どが明解であり、よく分からないのは「しょうけら$${^{*2}}$$」「ぬえ$${^{*3}}$$」「$${^{*4}}$$」ぐらいである。「加牟波理入道」は「入道」の名から分かるように人間の形をした妖怪である。人間が元となっている妖怪でその名前の由来が分からないのは余程のことである。

 その点、がんばり入道なら「便所→頑張る→がんばり入道」と実に滑らかに由来が分かる。角川書店$${^{*5}}$$刊「にっぽん妖怪地図」、学習研究社$${^{*6}}$$刊「BooksEsoteria第24巻 妖怪の本」では「がんばり入道」としている。
 「がんばり入道」の姿は鳥山石燕$${^{*7}}$$の「今昔画図続百鬼」が初出らしい。そこに書かれている説明文を読めばはっきりするかもしれない。
 ところで何故「ほととぎす」なのか。郭公(かっこう)$${^{*8}}$$の字面と中国の便所の神「郭登」が似ていることが由来らしい。カッコウはホトトギス科の鳥でホトトギス$${^{*9}}$$に似ていることから「郭公」を「ほととぎす」と読んだのだろうか。昔のことだからカッコウもホトトギスも明確に区別してなかったのかもしれない。
 「がんばりにゅうどう かっこう」では七五調にならないので「ほととぎす」としたのが最大の理由だろう。

 いずれにしろ濁るか濁らないかで妖怪に会うか会わないかが決まってしまうので、「か」か「が」かは重要な問題といえば重要な問題である。現時点では決着が付いていないので、「か」と「が」の中間の音「か゜」でまじないをしておけば、ごまかせるかもしれない。どうやって発音するかは知らない。鼻濁音$${^{*10}}$$で代用すればいいのだろうか。

*1 19991109 加牟波理入道
*2 百鬼図譜「画図百鬼夜行風之巻」しょうけら
*3 ぬえ - (C) 1998 青年人外協力隊
*4 鬼
*5 角川書店ホームページ
*6 学習研究社
*7 前口上
*8 日本の鳥シリーズ
*9 日本の鳥シリーズ
*10 鼻濁音を知っていますか

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