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20030526 デジタルケーブル

 オーディオ装置に使うデジタルケーブルで音が変わる$${^{*1}}$$のだろうか。「ケーブルで音が変わる」とは、オーディオ製品同士をつなぐ信号線の種類によってスピーカから出てくる音が変わってしまうということである。

 例えばアンプとスピーカとをつなぐ線に極端に細い線を使えば、その電線の電気抵抗によって出てくる音が普通の太さの電線を使った時よりも小さくなる。この時、アンプからスピーカに流れる信号はデジタルではなくアナログと呼ばれる連続的な変化$${^{*2}}$$をする電気信号である。

 デジタルケーブル$${^{*3}}$$とはアナログと違って離散的な変化をするデジタル信号を伝送するケーブルのことで、金属で出来た電線の場合とガラスや樹脂で出来た光ファイバーの場合とがある。電線の場合は電気的な信号、光ファイバーの場合は光の信号が伝送される。信号の状態は、デジタルなので電圧が高いか低いか、光が明るいか暗いかだけの二種類の状態しかない。従って何らかの原因で信号の状態に狂いが生じても高い低いや明るい暗いが識別できれば信号全体としては狂いは発生していないことになる。更に高低、明暗が反転してしまうような狂いが生じた場合でも、そのような狂いが少しであれば勝手に直してしまう$${^{*4}}$$。こういった狂いを修正するためにデジタル信号には伝送しようとする情報とは全く関係ない情報が含まれて$${^{*5}}$$いて、これを使って修復できるようになっている。一方、デジタルでない場合は、狂った部分がそのまま信号として扱われる。機械はその信号が正常かどうか区別が付かないからである。

 だからデジタル信号は非常に劣化しにくい信号なのである。劣化しにくいから伝送する線にどんな品質のものを使っても変わらないと考えるのが普通だ。

 ところがあるオーディオ専門雑誌を読んでいたら、デジタルケーブルでも物によって音質が変わると書いてあった。更に様々なメーカのオーディオケーブルの比較がしてあった。

 いつも思うのだが、こういったオーディオ雑誌での比較テストを文章で表すだけでなくその音を録音したCDを付録にして貰えれば非常に判りやすいと思うのだが、そういう雑誌は見たことがない。微妙すぎて録音するとその違いがはっきりしないのだろうか。

 デジタルケーブルを変えると人の声が際だつとか表現に張りや厚みが出るとか全く具体性に欠ける言葉の羅列による比較である。ケーブルの性能の比較ではなく「ケーブルによって如何に音が変わったか」の表現方法の比較$${^{*6}}$$を読んでいるようである。

 ケーブルの長さは長くても5m程度なので、その距離をデジタル信号が通過する間にケーブルの品質が要因で信号に狂いが生じるとはとても考えられない。しかも人の音声の感じが変わるなどあり得ないだろう。

 ケーブルを流れる信号は電圧の高低か光の明暗である。その信号は「0」「1」の羅列になっているのである$${^{*7}}$$。この並びは音の大小や高低に関係しているが、これに関係のない、上で書いたような修復用の「0」「1」も含まれている。いくらなんでも高い音や人の声の信号部分だけを選択して狂いが生じることはないだろう。

 電気信号は周波数が高くなると電気回路を回りにくくなる$${^{*8}}$$。デジタル信号そのものの周波数はそのデジタル信号に含まれている音の情報とは直接関係がない。何かの影響で信号に狂いが生じれば全体的に音が変わるだろう$${^{*9}}$$。人の声とか低い音などとか、音の高低や大小による変化はないだろう。デジタルケーブルの違いで本当に音が変わるのだろうか$${^{*10}}$$。

 オーディオ雑誌に比較テストの付録CDが付いてこない理由が何となく判ってきた。

*1 アクセサリー使いこなし術/デジタルオーディオケーブル編
*2 第2章 情報の表現 2.5 デジタル信号とアナログ信号
*3 ケーブル&コネクタ図鑑 : デジタル・オーディオ用光ケーブル/コネクタ(光角型/光ミニ)
*4 オーディオの基礎 デジタルオーディオ
*5 藤本健のDigital Audio Laboratory 第2回:迷信だらけのデジタルオーディオ~ 音楽CDリッピングが100%正確でない理由 ~
*6 週刊「製品批評」 AV&ホームシアターケーブル大特集
*7 e-word辞典 デジタル録音の基礎の基礎
*8 20020929 周波数と年齢
*9 ilungo_デジタルケーブル
*10 なぜデジタルメディア「CD」に音質の違いが出るの!? ――検証編

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