見出し画像

20011114 民間伝承薬

 民間の伝承薬というのは現代の科学的な手法によって作られた物ではなく、自然淘汰的に出来上がった薬である。体の調子が悪くなったら薬で治したいという思いは昔からある。様々な食物の中からある草の煮汁が何かの病気に効くということが偶然に判って、それが他の多くの人にも効くという噂が広がればそれが「薬」となっていくのだろう。更に発展して何かと何かを混ぜ合わせればよく効くことを見つけ出し、独占的に治療を施す人も出てくる。その薬が良く効けば製法が語り継がれていくだろうし、あまり効かなければ消滅していく。

 養命酒$${^{*1}}$$や龍角散$${^{*2}}$$などは元々は民間伝承薬であったが秘伝の配合が、よく効くので商売になった例である。

 腹痛の薬で全国的に有名なのは正露丸$${^{*3}}$$だろうか。名古屋近辺では百草丸という腹痛薬も有名である。民間伝承薬は特許制度がない時代に出来上がったものなので、似た名前、成分の薬がよくある。百草丸にも二種類ある。長野県製薬の御岳百草丸$${^{*4}}$$と日野製薬の御嶽山日野百草丸$${^{*5}}$$とである。どちらも瓶の形状までもよく似ている。

 百草丸は製品名であるが、百草丸のようにオウバク$${^{*6}}$$やゲンノショウコ$${^{*7}}$$を主成分とした腹痛薬を一般的に陀羅尼助(だらにすけ)$${^{*8}}$$もしくは陀羅助(だらすけ)$${^{*9}}$$という。陀羅尼助$${^{*10}}$$で有名なのは奈良県の洞川(どろかわ)だ。ここには陀羅尼助を専門に売る店$${^{*11}}$$が14軒もあって、それぞれの店が店独自の箱に入れて売っている。だが、どの店の陀羅尼助も中身は一つの工場で作られている。昔は各店でそれぞれ調合していたが、1981年からこれらの店が共同で大峯山陀羅尼助製薬有限会社$${^{*12}}$$を作り、近代的な設備による製薬を始めたらしい。

 このことを知って実際に洞川まで行ったことがある。道の両側に陀羅尼助屋が本当に並んでいた。

 実家の近くの寺院にも民間伝承薬があった。現在もあるかどうか判らない。黒い色をした膏薬で打ち身や捻挫などに効くとされていた。幼少の頃、この寺の鐘撞き堂から飛び降りて捻挫したことがある。この時、寺の膏薬を塗って貰った。もしかしたらこれがこの寺の膏薬の起源なのかも知れない。

*1 YOMEISHU SEIZO Co.,Ltd. HOMEPAGE
*2 龍角散 沿革
*3 大幸薬品株式会社
*4 御岳百草丸
*5 百草丸|家庭薬ロングセラー物語|日本家庭薬協会
*6 オウバク(黄柏:黄檗)
*7 ゲンノショウコ
*8 陀羅尼助(だらにすけ)とは - 陀羅尼助の読み方 Weblio辞書
*9 陀羅助(だらすけ)とは - 陀羅助の読み方 Weblio辞書
*10 和漢胃腸薬「だらにすけ」
*11 洞川温泉観光協会ホームページ
*12 歴史街道~ロマンへの扉~ 月~金曜日 21時48分~21時54分

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?