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20010716 伊勢神トンネル

 愛知県で幽霊スポットとして有名$${^{*1}}$$な伊勢神(いせがみ)トンネル$${^{*2}}$$へ「昼間」に家族で行って来た。

 伊勢神トンネルは新と旧とがあり、幽霊で有名なのは旧の方である。この伊勢神トンネルが出来たのは明治30年で、長さは308m。幅は3.15m$${^{*3}}$$なので普通の乗用車はすれ違うことが出来ない。トンネルの中を自動車で通過してきた。通過中、妻と息子は寡黙になり、娘は非常に饒舌になっていた。皆、相当怖かったのであろう。

 このトンネルは文化財$${^{*4}}$$にもなっているようだ。全て石造りである。地質が悪く湧き水が多かったために煉瓦ではなく石で作ることになったらしい。更にトンネルのアーチは建設当初は一重であったが、後から補強されて二重になったようだ。

 幽霊スポットになっている理由はトンネル内に照明がないこと、「伊勢神」という名前が何となく「あの世」を連想させるからではないだろうか。照明が取り付けられていた痕跡はあるが、現在は全く機能していない。

 トンネルは大体東西に掘られている。トンネルの両方の入り口には大きく「伊世賀美」と銘が掘られている。地名は「伊勢神」なのに何故トンネルは「伊世賀美」なのか。これは洒落であろう。「伊(この)世(よ)賀(よろこび)美(うつくしく)」と願ったのかもしれない。遊び心のない現代であれば、おそらくこんな銘は付けないだろうし、書くとしても「伊勢神隧道」となってしまうだろう。

 それに「伊世賀美」しか書かなかったというのも凄い。これがトンネルだと言うことは見れば分かるので「伊世賀美」としか書かなかったのか。橋には必ず「○○橋」「△△はし」と書く。誰が見ても「橋」ということが分かるのであるが、必ず書いてある。やはり「洒落」を最優先させた結果なのだろう。「伊世賀美隧道」では一気に風格がなくなる。無粋である。

 よく見ると東側$${^{*5}}$$と西側$${^{*6}}$$では「伊世賀美」の書体が変えてある。東側は楷書に近いが、西側はかなり字が崩してある。この辺も効率一辺倒ではない時代を彷彿とさせる。蝉丸トンネル$${^{*7}}$$もいい名前なのだからこれくらいのことをして欲しい、と思った。

*1 BIGLOBEシーズン 特集 日本全国ミステリーツアー 地域別情報 2
*2 愛知県東加茂郡足助町明川付近
*3 建設省名四国道工事事務所
*4 文化財の保護
*5 東からの様子。上の方の石が少し崩れかけている
*6 右から「伊世賀美」と書いてある
*7 20000106 蝉丸

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