見出し画像

20051108 大気を温めるもの

 大気を直接温めているものは何か。酸素や窒素は赤外線に対して無反応$${^{*1}}$$なので、赤外線では温めることができない。赤外線を吸収することができる大気中0.04%の二酸化炭素だろうか。大気中の二酸化炭素や水蒸気などは赤外線を吸収するので、それらは赤外線で暖まるが、これによって大気全体の温度を大きく上昇させるのだろうか。

 二酸化炭素が赤外線を吸収すると言っても同時に放出もしているはずである。そうでないと辻褄が合わなくなる。赤外線は電磁波であるから、電気と磁気との波である。二酸化炭素の分子は二つの酸素原子と一つの炭素原子で構成$${^{*2}}$$されているので分子内の電気の分布が少し偏っている。そのため電磁波が来るとその波に合わせて回転したりする。一方、電磁波の方は二酸化炭素の回転にエネルギーの一部を取られてしまう。電磁波が過ぎ去った後、残された二酸化炭素は回転し続けるが、もともと電気が偏っている分子が回転すれば、電気が作り出す雰囲気すなわち電界が周期的に変化していることになるから電磁波を出すことになる。電磁波を出せばエネルギーを使うことになるので次第に二酸化炭素分子の回転が止まる。回転が止まれば電磁波の放出も止まる。吸収すれば直ぐに放出してしまうのである。

 もしくは他の分子に回転しながら衝突して、その分子に運動エネルギーを与えて温度を上昇させる。その逆も起こり、衝突によって分子が回転すると電磁波が放出される。物質が熱を持つと電磁波を放出する$${^{*3}}$$というのは、おそらくこういった機構によるものだろう。

 電磁波のエネルギーはその周波数のみに依存$${^{*4}}$$する。周波数というのは一秒間に何回波の山と谷とを繰り返すか、である。回転運動なら一秒間に何回まわるかである。周波数が高ければエネルギーも高い。電磁波を吸収した二酸化炭素分子は他の分子に衝突して温度を上昇させる。もしくは電磁波を放出して回転を止める。こういったことを気体全体で繰り返す内に、吸収する電磁波のエネルギーと放出される電磁波のエネルギーとが釣り合うようになる。一方、分子は電磁波を吸収すれば直ぐ放出してしまう。電磁波の周波数が一定ならばエネルギーは一定なので、分子に何回当てても回転数が増加し続けることはない。一つの分子が吸収する赤外線のエネルギーには上限があるということになる。全く同時に複数の電磁波の塊が二酸化炭素分子に当たれば回転数が通常の数倍になるかも知れない$${^{*5}}$$が、そう言ったことは通常は滅多に起こらないだろう。二酸化炭素分子が赤外線からエネルギーを受け取ってそれを一時的に持ち続ける量には限りがあるので、気体全体が保持するエネルギーもやがて一定になる。

 赤外線からエネルギーを受け取った大気中の二酸化炭素分子は窒素分子や酸素分子に衝突してエネルギーを渡す。窒素分子や酸素分子は赤外線を放出しないので受け取ったエネルギーを持ち続ける。大気の中では二酸化炭素分子から次々とエネルギーを貰うのでエネルギーがどんどん$${^{*6}}$$増える。エネルギーが増えれば温度が上がる$${^{*7}}$$。まさに温室効果$${^{*8}}$$である。大気中の二酸化炭素の量が増えれば、この効果は顕著になるはずだ。これは大変だ。

 本当にそうだろうか。上に述べたように一定量の赤外線照射の下では二酸化炭素分子が保持できるエネルギー量には上限がある。二酸化炭素分子は窒素分子や酸素分子にエネルギーを与えることができるが、逆にエネルギーを受け取ることもある。二酸化炭素がエネルギーを受け取れば赤外線を放出する。結局は大気全体で持つエネルギーは一定になる。

 気体は固体や液体に比べるとざるのようなものだが、赤外線が分厚い大気の層$${^{*9}}$$を通過すれば、殆ど吸収されるかもしれない。ところが大気中には二酸化炭素は0.04%しかない。大気を温めるのには殆ど寄与していないのではないか。

 それでは何が大気を温めるのか。当然、地表である。地表はに陸地は固体、海には液体があって太陽からのエネルギーを吸収している。その量は二酸化炭素の比ではないだろう。地表に接触している大気は地表からの熱伝導によって温められる$${^{*10}}$$。赤外線はあまり関係ない。

*1 20051107 黒体と気体
*2 ●NHK高校講座●学校放送●
*3 1.2黒体放射と実在する物質からの赤外放射
*4 発光を見る ~蛍光とリン光~
*5 ■ 二光子吸収材料の構築のページ(1)
*6 20010622 法華の太鼓
*7 20050730 温度の正体(3)
*8 20050608 地球温暖化(4)
*9 気象庁 | 気温の鉛直分布から見た大気の構造
*10 2.気象・天気のはなし 気温

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?