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20040801 クラインの壺

 クラインの壺が市販$${^{*1}}$$されている。思わず所有したくなる形をしている。特にこの小さいクラインの壺$${^{*2}}$$がいい。食器棚の中にさりげなく置いておきたい。販売しているサイトではこのクラインの壺の作り方$${^{*3}}$$も紹介している。

 このガラス製のクラインの壺はこのサイトで紹介$${^{*4}}$$されていた。

 クラインの壺$${^{*5}}$$は数学者のクライン$${^{*6}}$$が考え出した。片面しかなく、しかも端のない面を図示すると壺みたいな形になるのでそう呼ばれる。英語では「Klein bottle$${^{*7}}$$」なのでクラインの瓶である。

 「片面しかなく、端がない面」というのは何の事やら判らない。球面は端がないけど裏表がある$${^{*8}}$$。メビウスの帯$${^{*9}}$$は裏表がないけど端がある。クラインの壺$${^{*10}}$$は端もなくて裏表もない、つまり片面しかないということになる。三次元の世界では表せない。

 クラインの壺ではその「面」そのものが問題$${^{*11}}$$であって、形そのものは数学的な意味を持たないことになる。となればガラスでクラインの壺を作り、それを容器として使う$${^{*12}}$$意味は何なのだろう。

 クラインの壺$${^{*13}}$$の中に入っている液体はどういう状態にあると言えばいいのか。容器の内側にあるのか外側にあるのか。三次元の世界のガラス容器だから「内側」にある。本来は裏表がないことになっているのでどちらとも言えない。

 ではこの世が四次元であったら、ガラス製のクラインの壺に液体を入れるとどうなるだろうか。三次元の世界で、中に液体を入れるには壺を横にして液体の中に浸しやれば入る$${^{*14}}$$。底の穴に注ぎ込もうとすると中の空気の逃げ場がなくなるので上手く入らないらしい。

 四次元の世界では底の穴から注ぎ込んでも空気はどこからともなく逃げてしまうので問題なく入るのだろう。そして壺の容量を越えるとどこからか判らないがどんどん溢れてくる。そして何の苦労もなく壺の「中」は隅々まで洗うことができるだろう。

 こうやって考えると本物のクラインの壺でも三次元のクラインの壺でもそれほど違いがない。本物のクラインの壺に液体を入れるのを擬似的に体験するには壺の側面を貫通している管の周囲を溶接せずにドーナツ状の穴を設けておけばいい。壺の中を隅々まで洗うことはできないが、穴から液体を注いで「中」に入れることができる。

*1 Acme Klein Bottle
*2 Acme's Little Klein Bottle
*3 making_a_klein_bottle
*4 Asada's Mistake with Klein Bottles
*5 Klein Bottle Cartoons & Limericks
*6 Felix Christian Klein
*7 What is a Klein Bottle?
*8 20000320 球の裏返し
*9 20011024 無限大記号の由来
*10 Klein Bottle -- from MathWorld
*11 topological space | planetmath.org
*12 Classical Klein Bottle
*13 Specs for nice klein bottles.htm
*14 How to Fill your Acme Klein Bottle

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