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20030426 ひげまん

 卑下慢という言葉がある。「ひげまん」と読む。学生時代に知った言葉であるが、自分では殆ど使ったことはないし、聞いたことも目にすることも殆どない。意味は「卑下しながら自慢すること」で、表面的には謙遜しているが、その実は自慢していることである。江戸時代にできた言葉だと聞いた。

 手許の辞書$${^{*1}}$$やweb上の辞書$${^{*2}}$$を引いても「卑下慢」は出てこない。「卑下自慢$${^{*3}}$$」というのはある。「卑下も自慢の内$${^{*4}}$$」を略して出来たのだろう。卑下慢はこれをもう少し略したのだろう。

 仏教には「七慢$${^{*5}}$$」という考え方があるらしい。その中に「卑下慢」も入っているという。「卑慢」がそれのようだ。仏教で言う「卑慢」は相手が自分より数段優れているにも拘わらず、その相手を大したことはないと思う心ということだ。

 ところが前に説明した「卑下慢」とかなり意味が違う。初めの卑下慢は自慢をしたいがために卑下しているのに対して、仏教の卑下慢は優れた相手に対する負け惜しみみたいなものである。

 よく考えてみるとweb上の辞書の意味と私が聞いていた意味も少し違う。辞書の「卑下も自慢の内$${^{*4}}$$」は卑下することは美徳であるということから卑下する自分の姿を自慢していることになっている。その省略形の「卑下自慢$${^{*3}}$$」は単純に卑下しながら自慢することになっている。

 私が理解していた「卑下慢」の意味は、その謙遜している事柄に対してそのことを相手に強く否定され、褒められたり羨ましがられたりするのを期待することである。

●「私など全く及びません」
○「いえ、誠に素晴らしいことです」
●「そんなことはありませんよ。大したことございません」
○「いえいえ、その様なことはございません。ご立派です」
●「ありがとうございます(思った通り褒めてくれた。卑下した甲斐があった)」

 一般的な言葉ではないから、意味が解説する人によって少しずつ食い違っているのだろうか。それにしても「ひげまん」という言葉は使いにくい。「ひげ」と「まん」との組み合わせで、何やらいやらしい事を連想してしまうのである。

*1 JBOOK 商品詳細:書籍:講談社カラー版日本語大辞典第二版
*2 20030418 goo辞書
*3 卑下自慢とは - コトバンク
*4 国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書: 卑下も自慢の内
*5 六甲山鷲林寺 鷲林寺ホームページ(仏教語からきたことば) 鷲林寺ホームページ(仏教語 我慢)

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