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20011230 ブランド志向

 ブランド志向という言い方があって、時には嫌みに使ったりする場合もある。成金$${^{*1}}$$趣味というか、高額な装飾品を分不相応に身にまとうことも指す。

 この用法は「ブランド」という言葉の意味をかなり歪曲した使い方である。これだと高額装飾品ならばブランドと言うことになってしまう。そうではない。ブランドとその商品の値段は関係ない。ブランドを維持するため、値段を高くしても売れる、と言うところから高額になる場合が確かに多い。

 そもそも「ブランド」とはどういう意味か。英語のbrand$${^{*2}}$$が語源である。烙印$${^{*3}}$$のことで、製品に烙印を押して他の物と区別したことから、商標とか銘柄という意味になった。

 ブランドという言葉が一般に使われ出したのはいつ頃からだろうか。1970年代頃からか。それ以前は「メーカー品」という言葉しかなかったような気がする。現在もメーカー品とブランドと両方とも使われる。「メーカー品」は工業製品全般に使われるが、「ブランド」は主に身につける装飾品に用いられる。工業製品は全て製造業者makerが作っているので、どんなに品質の悪い工業製品でも「メーカー品」である。本来は「有名メーカー品」「一流メーカー品」であったのだが、頭の修飾語が略されて「メーカー品」と言われるようになった。

 ブランドも同じで、高くても安くても大抵の製品には商標が付いている。一般に使われている「ブランド」は有名ブランド、一流ブランドの修飾語が略されているだけである。「無印$${^{*4}}$$」というブランドもある。つまりブランドのない工業製品はないのである。ブランドをわざわざ外して売る製品があるが、安く売るための無保証の売りっ放しである。

 メーカー品もブランド、もしくはブランド品という言葉はその製品の品質や性能を代弁している。製品を買う人はそれを知るだけである程度、品質や性能を把握することが出来る。いちいち調べる必要がない。だから有名なブランドであれば買い物が楽になるのである。そのブランドだけで判断して、その物を買っても十分思ったように機能を発揮してくれるのだ。従って少々値段を高くても買おうとするし、売れるのである。

 従って「ブランド志向」「ブランド漬け」は購買者の知恵であって、成金趣味とは違う。

*1 成金(なりきん)の意味や使い方 Weblio辞書
*2 brand. The American Heritage® Dictionary of the English Language: Fourth Edition. 2000.
*3 ハンコ作り・タガネハンコ(烙印)
*4 良品計画

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