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20020711 真空管式カーオーディオ

 真空管を使ったカーステレオ$${^{*1}}$$があるらしい。真空管$${^{*2}}$$とはトランジスタや半導体で作られたダイオードが発明される以前によく使われていた電子部品である。カラス管の中が真空になっているので「真空管」と呼ばれる。英語では「チューブtube$${^{*3}}$$」と言う。最近見たDVD$${^{*4}}$$で、電子技術に関連した場面にもかかわらず、「tube」に対して「管(くだ)」と字幕が出てきた。このような誤訳を誘発するぐらい廃れてしまった技術である真空管が搭載されたカーステレオ$${^{*5}}$$である。

 トランジスタが発明される$${^{*6}}$$以前は真空管しかなかったので、自動車用のラジオ$${^{*7}}$$は真空管式$${^{*8}}$$であった。

 真空管はガラスで出来ているので見るからに壊れ易そうである。真空管は赤く熱したヒータから出てくる電子の流れを制御$${^{*9}}$$することによって機能する。従って必ず真空管にはヒータがある。ヒータは電球と同じだからよく切れる。ヒータが切れると真空管は全く機能しなくなる。トランジスタにはヒータがないので真空管よりも格段に寿命が長い。電子回路の真空管の殆どは小さくてヒータのないトランジスタにとって代わった。

 自動車の室内は、エンジンを回転させて路上を走っているので振動が大きい。そのような中でガラス製の真空管を使うのだから普通に屋内で使うよりも更に寿命が短くなりそうである。もしかしたら自動車の前照灯の殆どは電球が使われているので、振動はそれ程深刻な問題ではないかもしれない。

 電球はもともと切れる物だから「切れたら交換する」というのを前提にしている。だからどんな電気製品でも簡単に電球は交換できるようになっている。かつて真空管もそうだった。トランジスタもプレーナ技術$${^{*10}}$$が発達するまではよく壊れたが、プレーナ技術によって壊れ難くなるとトランジスタの交換という考え方は全くなくなった。これによって真空管では成し得なかった何百万のトランジスタを集積化した電子回路が出現した。

 このカーステレオは運転席から真空管が見えるようになっている。橙色に光るヒータがよく見えるように単なる意匠からそうなっている。もしかしたらこれは真空管が切れたら簡単に交換できるようになっているのかもしれない。真空管の取り替えが嫌なのでトランジスタが発明された$${^{*6}}$$のに、人間の欲望は一筋縄にはいかない。

*1 CAR AUDIO/VISUAL - CQ-TX5500D
*2 真空管の原理
*3 vending machine TUBE:由来はパイプか?
*4 『テルミン』~THEREMIN,AN ELECTRONIC ODYSSEY~
*5 McIntosh - Elegance. Strength. Commitment.
*6 20001001 トランジスタ
*7 Motorola モトローラ・グループ概要
*8 History of Auto Radio/自動車ラジオの歴史
*9 真空管の仕組み
*10 ICの歩み-真空管とトランジスタ

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