VTuberは単なるアバターではなくて創作のエンジンかもしれない話

yuta ishizaka

ここ一年半ぐらい、VTuberをよくみています。

世の中的にもVTuber人気は高まり続けているようで、特に2020年以降の大在宅時代における人気の伸びは凄まじく、直近ではVTuber事務所「にじさんじ」の運営会社ANYCOLORが東証グロース市場に上場し、約2000億円の時価総額がついたことも話題になりましたね。

正直にいって最初は「VTuber?YouTuberの絵になった版かね?」という程度にしか思っていなかったんですが、一年半みてきて、どうやらそういう単純な話ではなさそうだぞ?と感じています。

本記事では、そのあたりについて書いてみたいと思います。

なお、今回は主に自分がよくみているVTuber事務所である「ホロライブ」と、ホロライブに所属するVTuberについて言及していきたいと思います。

クリエイターとファンの共創時代

現在のVTuberの主流は、アバターを用いたストリーマー(生配信者)スタイルです。

ストリーマー界隈では、生配信の中からファンがおもしろいところをピックアップしてつくった切り抜き動画によって広まっていく、という形が一般化してきてます。
クリエイターとファンによる共創ですね。
これはVTuberでも同じです。

このあたりについては、一年前にけんすうさんがとてもわかりやすい記事を書いてました。ぜひ読んでみてください。

VTuberはストリーマーとキャラクターコンテンツの良いところをあわせ持った存在

VTuberのすごいところは、ここにキャラクターコンテンツ特有の「二次創作のしやすさ」を持ち込んだことです。

リアルストリーマー(※記事内ではアバターを使わないスタイルのストリーマーをこう呼びます)の場合、切り抜き動画はたくさんつくられるんですが、それ以外の二次創作、たとえばイラストみたいなものはあまりつくられないですよね。

一方、VTuberは動くイラストで表現された存在なので、二次創作とものすごく相性がいいです。
切り抜き動画はもちろん、イラスト、3Dモデル、アニメーション、コスプレなどの二次創作コンテンツがどんどんつくられます。

リアルストリーマーと比較して、VTuberはいち配信あたりから生まれる二次創作の量と幅がケタ違いです。

  • 本家がコンテンツを創る

  • ファンが二次創作する

  • 二次創作の中から良いコンテンツが生まれる

  • 二次創作によって広まって新しいファンが増える

という仕組みがどんどん回って、どんどん増幅されていきます。

VTuberは二次創作のエンジン

ここまでは広まる仕組みとしてすごく効率がよさそうだなぁというビジネスライクな話なんですが、ここからはちょっと違う角度の話を書きたいと思います。こちらのほうが本筋です。

いまだかつてVTuberほど二次創作が加速する仕組みは存在しなかったのでは?という話です。

そう考える一番の理由は、公式からの供給頻度と量にあります。

これまでの二次創作シーンでとくに盛んだったのは、アニメ・マンガ・ゲームといったメディアで展開されるキャラクターコンテンツに関するものだったと思います。

この中でもっとも早いペースで供給があるのはたぶん週刊マンガの連載じゃないかと思うので、週に1回20ページぶん程度の分量ということになります。

一方で、VTuberは毎日に近い頻度で配信が行われることも珍しくなく、その場合は週に7回、供給があることになります。

供給頻度の観点からみると、これまでの常識を天元突破していそうです。

二次創作は一次創作である公式からインスピレーションを得て創作するものなので、基本的には公式からの供給頻度が多ければ多いほど創作が行われやすい構造にあるはず。

実際のデータでみても、今夏開催予定のコミックマーケットでは、近年の最大ジャンルだったアイドルマスターやTYPE-MOONを超えて、VTuberがサークル数最大のジャンルになっているようです。(「創作・少年」や、「ゲーム(ネット、ソーシャル)」などの、より大きな括りのジャンルを除いた場合の話です)

供給頻度の違いから考えると、日常ではそれ以上にVTuberというジャンルでの二次創作がシェアをとっていることは想像に難くありません。

いままで二次創作を楽しんでいた人だけじゃなくて、VTuberを好きになったことをきっかけにあたらしく二次創作を楽しむようになった人もたくさん生まれたのではなかろうか。そう思えてきます。仮説ですが。

二次創作を始める人が増えたら、創作全体の裾野が広がると思いますし、その視点でもVTuberはすごい発明かもしれません。

VTuber事務所は二次創作を推奨している

運営サイドとしてもVTuberならではの強みを活かしていきたいはずなので、二次創作を積極的に後押しする姿勢が随所にみられます。

いくつか例をあげてみます。

二次創作ガイドライン

いちばん基本的なものとしては、二次創作のガイドラインを公開しています。
二次創作に好意的な姿勢を示しつつ、OK/NGラインを明確に示すことでファンにとっては二次創作がしやすくなっていそうです。

3Dモデルの配布

MMDフォーマットの3Dモデルを無料で配布しています。
公式準拠のハイクオリティなモデルを使用して、3Dモーションアニメなどの二次創作ができます。太っ腹。

イラストコンテスト

pixivさんとhololive English(ホロライブの英語圏メンバーの総称)によるイラストコンテストが開催されていました。こういったスポット的な取り組みも行われているようです。

ファンメイドのremixを集めたプレイリスト

ホロライブはVTuberのアイドル事務所なので、オリジナル楽曲をたくさんリリースしています。このプレイリストでは、それらの楽曲を使ったファンによる二次創作remixを募集、公開しています。
今回これを書くまで存在を知らなかったんですが、みてみたら良い感じのremix作品がたくさんありました。

楽曲インスト音源の配布

公式楽曲のインスト音源を無料で配布しています。
しかも、楽曲が公開されたあと、わりとすぐに追加されています。
「歌ってみた」などの音楽系二次創作を後押ししたい意思を感じます。

ファンクリエイターとの共創が活発

こういった運営サイドの姿勢もあってか、いまVTuber周辺にはプロからアマチュアまでたくさんのクリエイターが参加していて、日々たくさんのクリエイティブが生まれています。

ファンによる創作を公式に取り入れる動きも活発です。
存在そのものがデジタルなので、ファンによって創作されたデジタル作品をストレートに取り入れやすいというのもありそうです。
公式に取り上げられることは嬉しいことだと思うので、こういった動きがさらに創作を加速させていると思います。

いくつか例をあげてみます。

配信サムネイルやTwitterへのファンアートの活用

サムネイルにファンアートを使うことが一般化しています。
「明日は○○の配信をします!」と言ったら、その日のうちにファンが配信内容に沿ったテーマのイラストを書いて、翌日の配信に使われるといったようなスピード感のときもあります。すごい。

また、各タレントがTwitterでファンアートをRTすることもよくあります。創作のモチベーションにもなりそうです。

アバターへのファンアートの活用

ファンアートとして作成されたアバターが公式の配信やMVで使われたこともあります。
たとえばこのMVに登場するちび3Dモデルは、もともとファンアートだそうです。MVだけでなく、生配信でも活用されています。

さらにこのちびモデルは、幕張メッセで行われたイベント「hololive SUPER EXPO 2022」にて、公式着ぐるみとして現界するまでに至りました。

詳しい経緯を知りたい方はこのあたりを読むとよさそうです。
二次創作によって本家がアップデートされる現象が起きていておもしろいですね。

ライブステージへのファンアートの活用

こちらはホロライブ4期生 常闇トワさんのライブでファンアートが活用された例です。
9:13~の箇所で「3Dでファンアートをつくってくださった方がいたので、モチーフを使用していいですかと聞いて、参考にしてつくらせていただいた」という趣旨の発言がされています。
こういったタイプのコラボレーションはVTuberならではと言えるかもしれません。

アルバムジャケットへのファンアートの活用

少し前の事例ですが、ホロライブ0期生 ときのそらさんの発売した音楽アルバムのジャケット用にファンアートを募集する企画が開催されていました。

実際に、初回限定盤Bのジャケットに使用され発売されています。

ファンメイドコンテンツを主役にした配信

ファンメイドのコンテンツを主役に据えた配信をするクリエイターもいます。

たとえば、海外コミュニティプラットフォームRedditにあるホロライブ公式掲示板に投稿されたミーム(ネタ的な動画像や文章を指す言葉)をおもしろおかしく紹介するReddit Shit Post Reviewという週イチ定例企画がありました。
ホロライブ4期生 桐生ココさんの企画でしたが、いまは桐生ココさんは卒業されているため終了しています。他のメンバーがたまにやっています。

その他にも、ホロライブタレントを題材とした二次創作を募る企画を行っていることがたまにあります。
こちらはホロライブ3期生 兎田ぺこらさんの企画です。工作、料理、押絵、ゲームなど様々なフォーマットの作品が集まっていて、思い思いに創作を楽しんでいる様子にほっこりするのでオススメです。

公式二次創作「ホロライブ・オルタナティブ」

VTuberグループ”ホロライブ”
そこに所属する彼女たちの、同じようでいて違う、あるいは、違うようでいて同じ――……そんな、ほんのすこしだけ別の可能性。
これは、もしかしたら存在するかもしれない”とあるセカイを描く”、異世界創造プロジェクトです。
ありえたかもしれない、ありえるかもしれない、そんな可能性が現実になるモノガタリを、皆さんと共に紡いでいけるよう祈っています。

ホロライブ・オルタナティブ公式Webサイト

ホロライブの所属タレントを題材にした公式による二次創作(と言われている)プロジェクトが、「ホロライブ・オルタナティブ」です。
アニメPV、マンガ、世界観アーカイブといったコンテンツが公開されています。
アニメPVに関しては、ホロライブファン?のアニメーターの方がエイプリルフールネタで「ホロライブのアニメPV作る」とTwitterでつぶやいていたところに声をかけたのが制作のきっかけだったらしく、ある意味ファンとの共創でつくった公式コンテンツとも言えそうです。
↓そのあたりが書いてあるYAGOO社長のnote

このプロジェクトのおもしろいところは、公式なんだけど二次創作であるところです。ややこしいですね!
二次創作なので、(一次創作であるところの)タレントが日々の活動でつくりあげているキャラクター性や、タレント同士の関係性等からインスピレーションを受けたと思われる表現がふんだんに盛り込まれていることが特徴です。

アバターを使って活動するクリエイターはどんどん増えていきそう

つまり何が言いたかったかというと、VTuberは単なるアバター版のYouTuberというよりは、よりファンとの共創関係を築きやすい新たな形のクリエイタースタイルであり、(二次創作を中心とした)創作のエンジンでもありそう、ということです。

昔からイラストを使うスタイルのストリーマーは存在していましたが、VTuberはそれをさらに一歩先へ進めたということかもしれません。

いまの時代、ファンと共創していく形で活動するメリットはとても大きいので、VTuberではないけどアバターを持っているクリエイターもドンドン増えているようにみえます。

たとえば、プロゲーミングチームのCrazy Racoonは所属選手・ストリーマー全員にアバターが存在していて、ファンによる二次創作も盛んだったりします。

もしかすると今後は、アバターな自分を持っていることが当たり前になっていき、VTuberとそれ以外の境界線はどんどん曖昧になっていくかもしれませんね。

こういう話、延々としたい

こういう話をするのが好きなたちでして、いろんな人とVTuberをテーマにこんな話ができたら楽しそうだなーと思い、Meetyをつくってみました。
こういう話が好きな方、ぜひ話しましょう!お気軽に!

手前味噌ですが、noteでプロダクトマネージャーをしているので、ついでにnoteの開発について聞いてみたいな〜という方も大歓迎です!!!

おわり。

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yuta ishizaka

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