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ウォーキンガム・徹底解説

私は4年ほど前にイギリスに駐在していた。イギリスといってもロンドンではなく、住まいとしていたのはロンドンから西に1時間ほど行ったバークシャー州の街、ウォーキンガであった。
このウォーキンガムという特に観光資源があるわけでもない街を知っている日本人はほとんどいないだろう。大丈夫、知らなくて当然だ。ロンドン在住の邦人ですらも知っていたのはごく僅かであった。

Googleで検索をかけてみたところで、ウォーキンガムに関する日本語の生活情報など1つも出てはこないし、そもそもウォーキンガムに住む日本人に会ったことがない。
そこで今回は、私が1年間住んで得たウォーキンガムの情報を取り上げ、こののどかな街について少しでもについて知ってもらえればと思うと共に、明日あなたが突然ウォーキンガムに住むことになっても良いように情報提供できればと思う。

ウォーキンガムはこんな街

ウォーキンガム(Wokingham)は、ロンドンの西隣・バークシャー州にある街であり、バークシャー州を構成する6つのディストリクトの1つである。ウォーキンガムの街としての人口は約47,000人(2017年時点)と決して大きな街ではない。中心部から車を10分も走らせると羊が草を喰むのどかな田園風景に出会うことが出来る。

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街の中心地付近

歴史的にマーケットが開かれていた街であり、13世紀にはウォーキンガムにてマーケットを開く権利が与えられていたそうだ。

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かつてはレンガづくりが主な産業であったが、近年ではITなどの業種も主要な産業となっている。
1860年に建てられたという市庁舎も、地場産のレンガを使ったゴシック様式の建物になっており、Grade II*の重要建築物に分類されている。

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なぜウォーキンガムに住んだのか

私が勤務していたオフィスはバークシャー州のとある街にあった。そこに駐在する日本人が住むところといえば、ロイヤルファミリーが休日を過ごすウインザー城でおなじみのウインザーや、英前首相テリーザ・メイのお膝下選挙区であるメイデンヘッドなどのケースがほとんどであった。

一方私は自分のチームに駐在員がいなかったこともあり、ローカルの同僚たちのアドバイスを全面的に取り入れた結果、ウォーキンガムに居を定めることを決めた。私の会社でウォーキンガムに住んだ前例が無かったようで、多くの駐在員の先輩たちから「なんで?!」と言われたものだったが、結果的にはこれが吉と出たと思っている。

ローカル同僚たちのおすすめポイントは概ね以下であった。
・オフィスまでの通勤路が渋滞しない
・治安がよく住みやすい

特にペーパードライバーあがりで自動車通勤に不安を抱えていた私にとっては前者が魅力的だった。後者については後ほど改めて言及しよう。

ロンドンへのアクセス

ウォーキンガムからロンドンへ、電車でアクセスする場合は大きく分けて2通りの行き方が存在する。
いずれのケースにおいても、利用するのはウォーキンガム駅だ。

2013年にリニューアルされた駅舎はきれいで、駅舎内にはカフェ兼売店も存在する。駅舎は早朝・深夜はクローズしているが、その時間帯は脇の入り口からホームにアクセスすることが出来る。(入口の近くに券売機もある)

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ロンドン市内への最も簡単な行き方は、サウスウエスタン(South Western Railway)鉄道でロンドン・ウォータールー(Waterloo)駅まで向かう行き方だ。この行き方であれば乗り換えることなくロンドン市内まで向かうことが出来る。

しかし、より早く行く方法も存在する。一旦逆方向のレディング(Reading)駅に向かい、そこからロンドン・パディントン(Paddington)駅へ向かう行き方だ。
距離的には遠回りなのだが、グレートウエスタン(GWR)鉄道はレディング→パディントンを30分で結んでいるのだ。

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上の地図ではウォータールーを到着地にしているので所要時間が同等に見えるが、レディング経由の場合パディントン駅までなら45分程度で到着できる。(ただし料金が異なるのできっぷの買い方には注意が必要だ。)

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私がウォーキンガムが地理的にどんな感じのところかを説明する時によく使うたとえとして、「ウォーキンガムは与野(埼玉)みたいなところだ」と言う。

サウスウエスタン鉄道は、ウォータールーからレディングまで、くねくねと曲がりながら、いろんな駅に停まりながらえっちらおっちら走っていく。例えるならば京浜東北線だ。そしてその終着点レディングはバークシャー州最大の都市であり、いわば大宮だ。
一方でグレートウエスタンはレディング大宮から、パディントンという新宿まで途中駅をバンバン飛ばして30分で着いてしまう。例えるならば湘南新宿ラインだ。

その考えでいくとウォーキンガムは、ゆっくり1本で都心に出ることも出来るが、敢えて一旦逆方向に出てビュンと行ったほうが早い街、そう与野なのだ
この例えを埼玉出身の駐在仲間に説いたところ「与野に羊はいない」と一蹴されてしまった。共感してもらえず残念な限りだ。

ウォーキンガムのここが良い

ここからはウォーキンガムの良いポイントを挙げていこう

①住みやすい住環境
ウォーキンガムは、イギリス屈指の住みやすい街として知られている。Halifaxというイギリスの銀行が幸福度や教育、住環境など26の項目から調査して毎年ランキング付けしているQuality of Life surveyにおいて、ウォーキンガムは毎年トップ10内をキープしている。

最新の2020年調査においても10位にランクインしており、これはバークシャー州の中での最高位である。
26項目の中のどれかで1位をとっているというわけではないが、逆に広範囲で高い評価を受けているということだろう。

ウォーキンガムは伝統的に比較的高い階級の人が多く住む街のようだ。よって治安が大変良い
確かに、夕方以降街を歩いていても、隣町のブラックネルのマクドナルドの前や、レディングのストリートで見かけるようなガラの悪そうな輩に出くわすことはほぼなく、安心して通りを歩くことが出来る。
(極稀にスーパーマーケット・モリソンズの駐車場の奥にそれらしいのがいる時があるが。)

②医療と教育が充実している
上記のランキングにも関連することであるが、医療と教育が充実していることがウォーキンガムの住みやすさ向上に貢献しているようだ。
イギリスの大手メディア、ガーディアンの記事によるとウォーキンガムは若年死亡率が最も低い都市であるらしい(少し古い記事のようだが)。

つまり、幸福に長生きがしたいのならば今すぐウォーキンガムに引っ越せということである。
この理由に寄与しているのは、医療の充実ももちろんであるが、学校教育の質が高いことも理由の一つに挙げられている。良い教育が良い人材を育て、それが就業率の高さに結びつき、生活の質の向上につながる、という好循環を生んでいるようだ。

パブが多い
急に理由が低俗になった気もするが、ウォーキンガム出身の同僚によるとウォーキンガムは単位面積なのか人口あたりなのかはわからないが、パブの数が最も多い街でもあるらしい。残念ながらソースになる情報は見つけることが出来なかった。しかし、どんな田舎町でも存在するパブが、確かにウォーキンガムにはかなり多い気がする。色々巡ってお気に入りの1軒を探すのも乙だろう。

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ウォーキンガム生活ガイド

ここからは実際に生活するとした時に有用な情報を取り上げよう。

・スーパーには事欠かない
生活する上でスーパーマーケットの存在は非常に重要な要素である。近所にどのスーパーがあるかないかで生活の質に大きな影響を及ぼすのだ。
以下は元イギリス在住のイラストレーターうめだまりこさんによる、イギリスのスーパーの階級表だ。

私もこのランク付けで完全に同意だ。(しいて言うなら、冷凍食品中心のスーパー・ICELANDが格安ゾーンに追加されると完璧だ。)
ウォーキンガムには以下の通りポッシュ(高級)スーパーから格安スーパーまでバランス良く揃っているので、その日の気分で選んで利用することが可能だ。

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以前はMarks&Spencer(M&S)もあったのだが閉店してしまったようで、代わりにALDIが出来たようだ。
この中で最も売り場が大きいのはTescoだろう。あるいは隣町ウィナース(Winnersh)のSainsbury'sは更に大きい。車なら10分程度の距離なので十分に足を伸ばせる距離だ。
さらに、ウォーキンガムから南に車で20分。サンドハースト(Sandhurst)にあるM&SとTescoはこの地域で最大規模だ。M&Sのプライベートブランドのお菓子類などはWaitroseのものと並んでクオリティも高くパッケージも良いのでお土産に適している。なので、日本へのお土産などを探すならば足を伸ばすとよいだろう。

・外食するなら
ときには外食もしたくなるだろう。先に述べたとおりパブも数多くあるので、パブ飯を楽しむのも良い。それ以外のレストランも中心地に良い店がある。
Giggling Squidもなかなか本格的なタイ料理を食べさせてくれるし、人気チェーン店であるポルトガルのチキン料理のNando'sもあるので一度は訪れて見るとよいだろう。私は残念ながら行けなかったのだが、スペイン料理のSanpaは同僚のイチオシだったので試してみてほしい。

持ち帰り系でいくと、駅前の中華料理のChina Gardenはコスパが良いのでよく利用していた。フィッシュアンドチップスだと、少し街から離れたところにあるWai WAI Fish And Chipsはいつも繁盛していて、なかなかの味だ。

・日本食を探すなら
日本の食材に関しては、醤油や豆腐、出前一丁のようなラーメン程度であれば、そのあたりのスーパーで手に入れることが可能だ。
それ以上のものであれば、一番の品揃えを求めるのであればロンドンまで出て、在英日本人の強い味方、Japan Centre(ジャパセン)や、日本人の多く住むEaling Commonの駅近くにあるNaturalNatural(ナチュナチュ)まで行くのが確実ではある。
(なお、イーリングコモンの駅の近くには土日無料の駐車場があったので、私はよくイーリングまで車で行き、そこから地下鉄を使って市内に出ていた。)

だが、もう少し近くで探したい場合、レディングにある中国食材スーパーSeeWoo Readingに行ってみると良い。あくまで中華食材メインであるが、一部日本食品も取り扱っているので、思わぬ品に出会えることがある。

そしてもう一つ。伝統的なマーケットの街であるウォーキンガムの市庁舎の近くではマーケットが開催されている。

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https://www.wokingham-tc.gov.uk/markets/ より

毎週土曜日にこの市場で日本の方が弁当を販売していた。手軽に日本の味を楽しむなら試してみるとよいだろう。(2017年の話なので、今はもういらっしゃらないかもしれない点はご容赦いただきたい)

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・日本のコミュニティを探すなら

ロンドン市内と比較すると、バークシャー州に在住する日本人は多くなく、つながりを作ることは少し難しい。
が、バークシャー州にも日本人および日本に興味のある人達のコミュニティが存在する。
Berkshire Japanese Societyというコミュニティが月に1回、レディング付近で定期的なミートアップイベントを行っている。
レディング大学に留学している学生や、企業の駐在員・家族など色々なバックグラウンドの方が集まっているので、顔を出してみると交流が広がるだろう。
(現在はコロナの影響もあってイベントは行っていないようだが、状況が改善すればまた再開されるだろう。)

おわりに

今回は、私がかつて住んでいたウォーキンガムの良いところと生活情報を取り上げてみた。
観光地ではないので旅行で訪れることはまずないし、もちろんマグネットなどあるはずもない、この長閑な街について少しでも知っていただければ、そして今後現れるかもしれない、この街に住むことを検討している人の役に立てば大変幸いだ。


このニッチな記事を最後までご覧いただきありがとうございました。
もしウォーキンガム周辺の生活情報など知りたい方がおられましたら、私が答えられる範囲でお答えできればと思いますので、お気軽にコメントをください。

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