断崖の要塞・ダノター城【スコットランド紀行Day2】
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2日目。ベッドから起き上がると早速街を目指す。
今日はスコットランド第3の都市アバディーン、そしてその南の街ストーンヘイブンを旅する。
早速大人気なく2階建てバスの最前列に陣取ると、アバディーン市内を目指したのであった。
アバディーンはこんな街
アバディーン(Aberdeen)はスコットランド東北部に位置する、北海に面した人口約19万人の街であり、スコットランド第3の都市である。中世にはこの地に街が建設されており主に漁業で栄えていたが、1970年代に北海油田が発見されるとその基地としても発展を遂げている。
空港から30分程度でバスは市内中心地にあるアバディーン駅に到着した。
明け方降っていた通り雨の影響か、到着した私を虹が出迎えてくれた。
なんて幸先の良いスタートだろう。これからの旅に期待が持てる幕開けだ。
しかし観光前にまずは腹ごしらえだ。メインストリートにあるカフェで朝食をとることにした。
雰囲気のいいカフェでいただくのはもちろんスコティッシュブレックファストだ。
やはりこの国に来たならば朝食はこうでなくては。
活力を与えられ、いよいよ観光を開始する。
オールド・アバディーン
アバディーンの街は、「オールドアバディーン」と「ニューアバディーン」の2つの地区に分かれる。
まずは中心地からバスで北へ10分、オールドアバディーンへと向かう。市街中心部とはうって変わって閑静な街が広がっている。
中でも一番の見所はアバディーン大学(University of Aberdeen)だ。
アバディーン大学は1495年に起源を持つ、英語圏で5番目に長い歴史を持ち、5人のノーベル賞受賞者を輩出した名門大学である。特にここオールド・アバディーンに位置するキングス・カレッジ (King's College)が最古の歴史を持つ。
校舎は1506年に完成しており、街のシンボルともいえる歴史ある建造物となっている。
この像は私が勝手に「The Laziness(怠惰)」と名付けたが、実はただのサボり学生ではなく、5世紀を超えるこの大学の歴史に名を残す秀才の像かもしれない。
その他、のどかなシートンパークなどを散策して、中心部に戻る。
アバディーンの近くでは花崗岩が算出され、多くの建物に利用されていることから、花崗岩の町(Granite City)ともしばしば呼ばれるそうだ。他の街と比べて白味を帯びた建物たちが特徴的だ。
正午を過ぎ、アバディーンから足を伸ばしてストーンヘイブンに向かうことにする。
駅で買ったパニーニで簡単に昼食を摂る。このパンプキンカフェはイングランドの駅でもよく見かけるカフェなので、イギリス版駅ナカカフェのようだ。
のどかな車窓を眺めながら電車に揺られること20分。
電車はストーンヘイブンに到着する。
ストーンヘイブン
ストーンヘイブン(Stonehaven)の駅に降り立つと、そこは郊外の住宅地と言った様相だった。人口約1万人強ののどかな街だ。
海岸まで歩みをすすめると、そこからはフットパス(歩行者専用の小径)を往く。目指すはダノター城だ。
農地を横目に海岸沿いの道を歩くこと約40分。
徐々に海岸線に立つ建物の姿が近づいてくる。
断崖の要塞
ダノター城(Dunnottar Castle)は北海に突き出した岬に位置する13世紀に建設された要塞である。その守りの堅さから17世紀の清教徒革命においてはスコットランド王室の三種の宝器(宝剣、王冠、王笏)が持ち込まれ、イングランド軍から守り抜くという重要な役割を果たしている。
本土と城をつなぐのは僅かな細い道だけであり、城の守りの堅さが伺える。
18世紀のジャコバイト蜂起の結果、城は廃城となり、現在は建物の跡が残るのみである。
しかし、廃墟となってなお北海を見下ろすように建つその姿は在りし日の栄華の名残を感じさせるようで美しい。
2012年公開のディズニー映画「メリダとおそろしの森」の舞台のモデルともなっているそうだ。
ダノター城の雄姿に満足し、来た道を戻って再びストーンヘイブンを目指す。
実は元々ダノター城へは翌日車で訪れることを計画しており、ストーンヘイブンの街には行く予定がなかった。しかしながら、前日偶然にも見かけた1つの情報が、イギリス時代のとある約束の記憶を思い起こさせ、急遽予定を変更して電車で向かうことにさせたのであった。
街へ戻り、海岸近くのとある飲食店へと足を運ぶ。
この一見どこにでもあるフィッシュアンドチップスの店こそ、
イギリスのアレな食べ物・幻の4番目発祥の店なのである。
イギリスのアレな食べ物・その4
本記事を書くことを決めていたため、先日投稿した上記の記事では取り上げなかったのだが、本来マーマイトやハギスと並んで取り上げるにふさわしいアレな食べ物、それが揚げマーズバー(Deep Fried Mars Bar)である。
揚げマーズバーとはその名の通り、マーズバー(スニッカーズのようなヌガー入りチョコバー)に衣をつけて揚げた食べ物である。
以前の記事でも取り上げた、イギリス人が評価するイギリス料理・スイーツ編において、唯一CRAP(ウ○コ)認定され、スイーツカースト最底辺にただ一つ鎮座まします強者だ。
1992年にこの店(当時はザ・ヘイブンと言う名前だったらしい)にて、とある学生が友人との賭けで持ち込んだマーズバーを店で揚げたことが発祥らしい。
前日にたまたま揚げマーズバー発祥の店がストーンヘイブンにあるという情報を仕入れ、予定通り翌日にダノター城を訪れたのでは、スケジュール的にこの店に来ることが出来ないため、急遽予定を変更したというのが事の顛末である。
なぜそこまでしてこの店を訪れたか。それは2年前の約束を果たすためであった。
イギリスから帰任する直前、自分で企画した自分の送別会の中で、ウナギのゼリー寄せを食べた話をしたところ、友人の一人に「揚げマーズバーは食べた?まだなら食べてみて。」と言われたのである。
そんなことを言われたら食べないわけには行かない。しかし、ロンドン市内で揚げマーズバーを売っている店を見つけることが出来ず、無念の帰国となったのであった。
あれから2年、ついに約束は果たされる。
早速店内へ。
店には起源を示す看板が誇らしげに掲げられている。
本来この店はフィッシュ・アンド・チップスの店であり、豊富なチョイスから選択することが出来る。
しかし、私がほしいのはただ一つ、揚げマーズバーである。
注文して待つことしばし。
ついに揚げマーズバーが姿を現す。
※下のマーズバーは比較用
この店はテイクアウト専門なので、イートインスペースはない。
外にていただくことにする。
揚げマーズバーのお供はウイスキーと並ぶスコットランド人の命の水、アイアンブルー(IRN BRU)だ。
まずは口内を清めるためにアイアンブルーを一口。
健康に好影響を与える成分を何一つ含んでいなさそうな鮮やかなオレンジ色の液体は甘く、そして後にはドクターペッパーを思い出させるような複雑な味わいが広がる。
色といい味といい、日本ならチェリオが売り出しそうな飲み物だ。
ここスコットランドにおいてアイアンブルーの人気は根強く、その売上はコカコーラやペプシをも凌ぐそうだ。
そしていよいよ揚げマーズバーを口に運ぶ。
甘い。
それはそうだ。
だが、なかなかどうして悪くない味だ。
私はヌガー入りのチョコというものがあまり好きではない。あのニチャァとして歯にくっつく食感があまり得意ではないのだ。
しかし、揚げたことによってニチャ感が薄れ、衣はサクッと、中は全体的にトロリとした舌触りになっている。
この揚げマーズバーと言う食べ物、単にフライヤーにチョコレートを放り込めばいいというわけではないらしい。
揚げる前のマーズの温度が高いとチョコレートが油に溶けていってしまうので、冷やしておく必要がある一方で、冷やしすぎると温度差によって爆発してしまうということで、繊細な温度管理を必要とするそうだ。
そもそも何故そこまでしてまで揚げるんだ、と思ってしまいそうにもなるが、思えばバナナや饅頭、果てはアイスまで天ぷらにしてしまう我々日本人が、一体どうしてこの食べ物をゲテモノと笑えようか。
遊び心の勝利だと、互いに健闘を称え合うべきだろう。
結論:食感がクセになりそう
とにかく、これでビンゴ2枚抜きである。
幸先の良いスタートだ。
こうして2年越しの約束を果たし、憑き物が落ちた心持ちでアバディーンへと戻る。
街を散策することしばし、夕食の時間だ。
街なかのハンバーガーショップへと足を運んだ。
いただくのはアンガス牛のハンバーガーだ。
日本でも有名なアンガス牛、正確にはアバディーン・アンガスという品種であり、アバディーンおよび南隣のアンガス州が原産なのである。
原産地で食べる味はまた格別な気がした。
本日のマグネット
本日のマグネットがこちら。
アバディーンは花崗岩で造られた町並みと港が、
ストーンヘイブンは断崖に建つダノター城の雄姿が描かれている。
ストーンヘイブンに関しては3Dのものが見つけられず、やむなくタイル状のマグネットとなった。
食後空港に戻ると、レンタカーをピックアップしホテルへ。
ようやく酒が飲めるということで、就寝前にビールを一杯いただくことにした。
呑むのはクラフトビール界の雄、Punk IPAを生み出したブリュードッグ(BREWDOG)のアメリカンペールエールだ。
ブリュードッグの拠点はアバディーンの郊外、エロン(Ellon)の街に位置する。
アバディーンシャーはお膝元となるわけで、飲まずに街を離れるわけには行かないだろう。
いよいよ明日からはスコットランド大移動を開始する。
期待で胸を、ビールで腹を膨らませ、早々に床に就くことにした。
Day3に続く。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回は私の一番好きな蒸留所へと向かいます。
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